2022 WS Game 1 ( PHI 6-5 HOU/F-10)
現地2022年10月28日、いよいよフィリーズVSアストロズのワールドシリーズが始まりました。レギュラー・シーズンで106勝を上げたアストロズがホーム・フィールド・アドバンテージとなり、ヒューストンでの開幕です。
ワールドシリーズ初顔合わせとなった両クラブの対戦は見所が盛りだくさんな訳ですが、大きなところで言えば、1年を通して確固たる実力を示してきたアストロズに対し、ポストシーズンに入って素晴らしい野球を展開し、現時点での実力が最高度に達しているフィリーズという図式。
魔法ではない、実力だ!
フィリーズはシーズン途中から暫定監督に就任したロブ・トムソンの指揮力が時期的にもちょうど浸透し切ったところ。そこにブライス・ハーパーら中心選手の好調さと若手野手の躍動がうまくミックス。そして攻撃陣がチームを牽引し、先発を安心させ、弱いと言われていたブルペン陣を育て、最適に機能している状態です。
平たくいえば、ずっと強かったチームと現時点で最高の強さを発揮しているチームとの対戦。アストロズ側の目線から言えば、「魔法を解いてやろうじゃないか!」というところでしょうが、今のフィリーズの実力は本物。それを証明するシリーズとも言えます。
この興味深い対戦は序盤に波乱の展開となりました。
アストロズ、5-0でリード
ジャスティン・バーランダーとアーロン・ノラの先発で始まったGame1は2回から動きました。
アーロン・ノラはザック・ウィーラーがNLCS Game5に先発した関係でGame1に繰り上がりました。今ポストシーズンはカージナルスとのワイルドカード・シリーズで7回途中無失点、ブレーブスとのNLDS Game2で6回1失点と好投していたものの、パドレスとのNLCSではGame2で5回途中、6失点とやや心配な内容の投球を見せていました。
ワールドシリーズの出来は如何?というところでしたが、NLCSの時のような投球となりました。
カイル・タッカーが先制ソロHR
2回裏、アーロン・ノラは先頭のカイル・タッカーに投げたチェンジアップがど真ん中に入り、これをRFスタンドに放り込まれ、0-1と先制されます。
さらにユリ・グリエル、チャズ・マコーミックには厳しいコースに投じたものの、うまく打たれ、2アウト1、3塁のピンチに。ここで、当たりの出てきている捕手のマーティン・マルドナードにアウトコースの4シームをうまく打たれ、CF前タイムリー。これでもう1点が入り、アストロズが2-0とリード。
カイル・タッカーが2打席連続の3ランHR
3回裏、ノラは先頭のジェレミー・ペーニャに二塁打を許し、またもピンチに。アウトを1つ挟んでLSU時代のチームメイト、アレックス・ブレグマンには四球。1アウト、ランナー1、2塁となり、ここで前の打席でHRを打たれているカイル・タッカーを迎えます。タッカーには厳しいコースを衝き、慎重な投球を見せていたのですが、フルカウント後の7球目のシンカーが前の打席よりやや内側に入り、これを右中間のアストロズのブルペンに放り込まれてしまいます。スタンドが大熱狂となる3ランHRとなり、アストロズが序盤2回で5−0とリード。
あらら!とは思いましたが、あまり気にならなかったのが不思議なところではありました。
バーランダーも5回、5失点
5点のリードをもらったバーランダーは3回までは奪三振4のパーフェクト投球。ところが、4回表に別人になってしまいます。
4回表、先頭のカイル・シュワーバーをCFフライに打ち取った後、リース・ホスキンスにCFへの鋭いシングルを許し、この日初安打を許します。リアルミュートをPライナーに打ち取り、2アウトとするも、ブライス・ハーパーにはRF前に運ばれ、2アウトで1、3塁とピンチを招きます。
ここでニック・カステヤーノスにLFにうまく運ばれ、ホスキンスが生還し、1失点(1-5)。
さらにアレク・ボームにはLF線に2塁打を許し、ハーパーとカステヤーノスが還り、フィリーズが2点を追加し、3-5と2点差に追い上げます。つづく、ブライソン・ソトットには四球を出すも、その後のジーン・セグラは2Bポップフライに打ち取り、なんとか3失点で切り抜けます。
このイニングで打たれた安打はすべてスライダー系。それらが甘いところに入りました。
5回表、バーランダーは先頭のブランドン・マーシュにLFへ二塁打を打たれ、またしてもピンチに。カイル・シュワーバーには四球。リース・ホスキンスはSSポップフライに打ち取るも、JT・リアルミュートには右中間へあわやHRかというフェンス直撃の2塁打を打たれ、マーシュとシュワーバーが生還。フィリーズが中盤で5-5と追いつき、序盤のリードをキャンセル。これでフィリーズがかなり有利になりました。ピンチは続いていたのですが、ハーパー、カステヤーノスを打ち取ったのはさすがでした。
バーランダーは5イニングを投げ、被安打6、失点5、BB2、SO5という投球。被安打と失点は4回と5回の2イニングで出たものです。
両チームとも強力なブルペンが機能
フィリーズはノラが5回1アウトで降板した後、ロブ・トムソンはゲームを落ち着かせるべく、ここでホセ・アルバラードを投入。アルバラードは6回1アウトまで1.0イニングを投げ、無失点。6回1アウトからはザック・エフリンが登板し、7回2アウトまで1.1イニングを投げ、ここも無失点。
そして7回2アウトからはなんとレンジャー・スアレスを起用。NLCSのGame5の時のようにワールドシリーズでも後ろで出てきました。リリーフはこの1試合だけかもしれませんがどうするのでしょうね?スアレスは7回2アウトから8回1アウトまで0.2イニングで降板させました。こちらも無失点。
8回1アウトからはセランソニー・ドミンゲスが登板。ドミンゲスは9回裏も投げぬき、1.2イニングで無失点。
一方のアストロズは6回からは2番手でボビー・アブレイユが登板。彼が良かったです。フィリーズの追い上げムードを一度鎮火させました。7回2アウトまで1.2イニングを投げて無失点。フィリーズは7回表に2アウト満塁のチャンスを作ったのですが、ここで元同僚のヘクター・ネリスがニック・カステヤーノスをスプリットで三振を奪い、無失点。ネリスは打者1人だけで降板しました。
8回はラファエル・モンテロが1イニングを三者凡退に、9回表はライアン・プレスリーが予定通りに登板し、こちらも三者凡退に。
ゲームは延長戦に突入。
リアルミュートが勝ち越しソロHR
5-5のタイスコアで迎えた延長10回表、アストロズのマウンドにはルイス・ガルシアが上がりました。ルイス・ガルシアはALCSでは登板機会がなく、マリナーズとのALDS Game3で延長18回を戦った死闘で、延長14回から5イニングを完璧に抑えて以来の登板。
かなりの信頼度を誇る投手を起用し、マラソン・ゲームにも備えた形となりましたが、先頭打者で決まりました。
アウトコース一択!
ルイス・ガルシアは先頭のリアルミュートに対し、カット・ボール、4シームで外側の枠の出し入れで勝負。フルカウント後の6球目は決して悪いボールではなかったのですが、これをリアルミュートが踏み込んで対応。打球はRFスタンドにライナーで入るソロHRとなり、フィリーズが延長10回表に6-5と勝ち越しに成功しました。
このイニングからアストロズの捕手は元レッドソックスのクリスチャン・バスケスに交代。バスケスはレッドソックス時代からリードに?がつくことが多かったのですが、アストロズに移籍してからはALウェストの広い球場でプレーする機会が増えたせいか、リードも良くなったように見えていました。
しかし、この打席は打者のリアルミュートからすると対策は超がつくほど簡単で、アウトコース一択で良かったのです。しかもカット、4シームで球速差もさほどないことから、4シームのタイミングで待っていればよく、普段プル・ヒッターのリアルミュートが踏み込んでくるほど、外側に的を絞っていました。これはバスケスの配球ミスかと思いました。
その後はブライス・ハーパーにもシングルが出て、フィリーズが押せ押せとなったところで、2アウトからライン・スタネックにスイッチ。スタネックはブライソン・ストットに四球を出すも、ジーン・セグラを打ち取り、なんとか1失点で切り抜けました。
ロバートソンが最後を締める
延長10回裏、フィリーズはデービッド・ロバートソンを投入。元NYY、CWSのクローザーですから、ここで逃げ切りを図りたいところ。ロバートソンは変化球に切れがあり、NYY時代を彷彿とさせる投球を見せ、ヨルダン・アルバレスから三振を奪い、1アウト。
ところがつづく勝負強いアレックス・ブレグマンにLFフェンス直撃の2塁打を打たれ、同点のピンチに。ここでバッターはこの日、2HRのカイル・タッカー。最大の正念場を迎えました。しかし、ロバートソンは実に強心臓で、タッカーにもガンガン攻めて行き、最後は得意のナックルカーブで三振を奪い、2アウト。
あと1人というところで、ロバートソンはユリ・グリエルに四球を与えます。ここからまるで有効期限が切れてしまったようにボールが抜け始め、ちょっと心配になる状況に。グリエルはサヨナラのランナーです。
2アウト、1、2塁でアレドミス・ディアス。ここでロバートソンはワイルド・ピッチを投じ、ランナーがそれぞれ進塁し、2、3塁という状況。ヒット1本でサヨナラです。
抜け始めたナックルカーブはディアスの肘に当たってしまいましたが、これは避けなかったということで主審が好判断を下し、ボールに。ディアスは3-1とボール先行カウントだったので、フルカウントまで待てば良かったのですが、ボールのスライダーに手を出し、3Bゴロに。
ロバートソンがなんとか10回裏をしのぎきり、フィリーズが6-5でGame1に勝利しました。フィリーズは選手も素晴らしい活躍を見せましたが、やはりベンチワークがすごいです。ロブ・トムソンが今までNO.2で蓄積してきたノウハウが如何なく発揮されていますね。
【YOUTUBE】Phillies vs. Astros World Series Game 1 Highlights (10/28/22) | MLB Highlights
バーランダー、またもWSでの初勝利お預け
ジャスティン・バーランダーはDS、LCSでの勝利はあるものの、実はワールドシリーズでは未勝利が続いております。
- 2006 WS G1 vs STL : 敗戦投手
- 2006 WS G5 vs STL : 敗戦投手
- 2012 WS G1 vs SFG: 敗戦投手
- 2017 WS G2 vs LAD: 7-6でHOUは勝ったものの、ノーディシジョン。
- 2017 WS G6 vs LAD: 敗戦投手
- 2019 WS G2 vs WSH: 敗戦投手
- 2019 WS G6 vs WSH: 敗戦投手
- 2022 WS G1 vs PHI: 5-6でサヨナラ負けでノーディシジョン。
今度こそ!と臨んだ8戦目でしたが、またしても勝利投手とならず。展開がもつれればあと1戦投げる機会があると思いますので、またそれまでお預けということに。
Game2は、ザック・ウィーラーとフランバー・バルデスです。これも楽しみな顔合わせです。展開がまったく読めません。
お読みいいただき、ありがとうございました。
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