スーパー2についての解説
【追記】
日本時間2022年2月18日、CBAの交渉でスーパー2がよく出てくるようになったので、記載が不明確なところがあったことなども踏まえてリライトいたしました。よろしくお願いします。
MLBプレーヤーにとって大事な資格・権利はMLS(Major League Service Time)によって計算されます。MLSの1年はアクティブ・ロースター(25名から26名に変更になった)に172日間登録されていることで、アクティブ・ロスターに入りながらIL(負傷者リスト)に入っている選手も含めます。
そのMLS(メジャーリーグサービス)タイムに基づき、FA(フリーエージェント)は6年、年俸調停(arbitration)は3年を超えて権利が発生してきます。
スーパー2とは?
上記のようにサービスタイム(MLS)が3年(3.000)であれば、調停を申し立てる権利を得るのですが、ある一定の条件を満たせば、選手はサービスタイムが2年目でも調停権を取得できることが出来ます。この条項を”スーパー2”といいます。
その条件とは・・・
- MLSタイムが2年以上3年未満の選手の中で、サービスタイムの数字で上位22%にいること
- スーパー2資格が適用されるか否かの分岐点はカットオフと呼ばれますが、そのカットオフは、それぞれのシーズン終了後に設定されます。
- 1つの目安は2年130日、つまりMLSで「2.130」です。
- 2024: 2.132
- 2023: 2.118
- 2022: 2.128
- 2021: 2.116
- 2020: 2.125
- 2019: 2.115
- 2018: 2.134
- 2017: 2.123
- 2016: 2.131
- 2015: 2.130
- 2014: 2.133
- 2013: 2.122
- 2012: 2.140
- 2011: 2.146
- 2010: 2.122
- 2009: 2.139
スーパー2のメリット
注目すべきは、スーパー2カットオフが選手の収入のポテンシャルに大きな影響を与える可能性があることだ。調停資格はMLS:3.000-5.000で計3回あるわけですが、スーパー2だとプラスもう1度で計4度ということになるのです。
2021年終了後のゲレロ・Jrのケース
この制度の最も大きな恩恵を受けた一人がブルージェイズのヴラディーミル・ゲレロ・Jr.で2021年終了後にスーパー2資格を得て、下記のように増えて行きました。
【ゲレロ・Jr.の調停でのサラリーの推移】
- 1 年/$7.9M (2022)
- 2022年3月22日に (調停を避けてサイン)
- 1 年/$14.5M (2023)
- 2023年1月13日に(調停を避けてサイン)
- 1 年/$19.9M (2024)
- $19.9M-$18.05Mのレンジでの調停に勝利
- 1 年/$28.5M (2025)
- 2025年1月9日に(調停を避けてサイン)
2011デクスター・ファウラーの実例
カウントがしやすい例として、デクスター・ファウラーのケースを。
2008年9月にデビューしたデクスター・ファウラーは、2008年に13試合、2009年に135試合、2010年に132試合、2011年に125試合に出場。
これだけを見ると、アクティブ・ロスターに3年1ヶ月いたように見えはしますが、その間にマイナー・オプションなどもあり、2011年終了時点で、MLS在籍2年168日でシーズンを終えました。1年=172日なので、わずかに足りなかったのです。
ただ、メジャー在籍2年以上3年未満の選手の中ではトップクラスの在籍日数を記録。このため、スーパー2適用の対象となりました。

よって、デクスター・ファウラーは2015年シーズン後にFAになるまでに4度の調停資格を経ることんなりました。
2012デビッド・プライスの実例
デービッド・プライスの例はちょっと特殊です。
プロ入り後すぐに長期契約

デービッド・プライスは2007年のアマチュア・ドラフトの全体1位。そして、ドラフトから2ヶ月後の2007年8月15日にレイズとすぐに長期契約にサインしました。この契約にはサイニング・ボーナスも入っていました。
- 6 年/$8.5M (2007-12)
もしデビューに数年かかったとして、ちょうど調停資格を得ている最中もこの契約はカバーしている点がまずポイントです。
そして賢いデービッド・プライスはこの契約に、「調停資格を得たなら、いつでも上記契約を無効にし、調停申請できる」という文言もつけていました。
そして、デービッド・プライスは2008年9月14日メジャーデビュー。
順調にキャリアを重ね、2009年-2010年-2011年と経過。デービッド・プライスの場合、これらのシーズンでアクティブ・ロスターを外していた時期があり、2011年終了時でMLSは2.164でした。この時点でプライスはスーパー2の資格を得ました。
そして、2011年10月に上記の文言を実行。オプトアウトして、調停によりサラリー交渉をできるようにしたのです。
2012年のサラリーをスーパー2で交渉
そして2012年のサラリーはスーパー2を使い、調停ステータスになったため、調停を避けて$4.35Mに(2012年1月にサイン)。
これがプライスの調停資格1度目となります。
2013年 レイズと1年10Mドル超え
2012シーズン、デービッド・プライスはア・リーグのサイ・ヤング賞を受賞。そして2013年1月2日に2013シーズンのサラリーをレイズと以下の金額でサインしました。
- 1年/$10.1125M(2013)。
調停資格の選手がサイ・ヤング賞を受賞し、サラリーはどうなるのか、大注目でしたが、クラブ側が年俸調停を避けるために、手を打った形となりました。
調停を行うとすると、前年年俸の8割以下には出来ず、実質は前年以上の年俸で、クラブ側、選手側双方で金額を提示し、どちらかで決まるという制度なのです。
選手は当然自分の希望額を提示することになります。
実績のある選手との調停は避ける傾向
特にプライスのように前年サイ・ヤング賞といういい結果を出した選手との調停になった場合は、要は第三者が間に入っているわけですから、選手がよほどの理不尽な要求額を提示しない限りは、心情的にも選手有利の結論になってしまう傾向があり、クラブ側としては、負けるリスクが高いので、避けたがるということです。
2倍で手を打った
今回の場合は、調停でクラブ側の予算を大きく上回るような現状の3倍や4倍の金額で決定するよりも、2倍強で手を打った方が妥当だという考えでしょう。
デービッド・プライスの調停ログ
整理すると、以下のようになります。
- 2012: スーパー2適用(調停1度目)【2011年終了時点でMLSは2.164】
- 2013: 調停2度め 【2012年終了時点でMLSは3.164】
- 2014:調停3度め 【2013年終了時点でMLSは4.164】
- 2015: 調停4度め【2014年終了時点でMLSは5.164】
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント
非常にわかりやすい解説です!
ありがとうございます!