メッツ、1巡目注目右腕との契約に失敗
現地2021年8月2日、2021年ドラフトで1巡目指名されたヴァンダービルト大のクマール・ロッカー( Kumar Rocker)とメッツとの契約が破談となったことが明らかになりました。
クマール・ロッカーと言えば
クマール・ロッカー( Kumar Rocker)と言えば、2021年ドラフトの大注目の右腕でした。名前の表記ですが、「クマー」と記載するケースの方が多いかもしれません。ただ、当サイトではNCAAの実況が「クマール」と最後の「r」を入れていたので、「クマール」とさせていただいております。姓のRockerの「R」と重なっているので、リンキングが起こって「クマール」と聞こえているだけかもしれないのですが。また浸透具合によって、変えるかもしれませんが、当分はクマールで書かせていただこうかと思います。
その名はフレッシュマン時代の2019年からつぶやかれ始め、実際、この年はルーキーながら12勝5敗を上げ、ヴァンダービルトのカレッジ・ワールドシリーズ優勝に貢献。6月にはノーヒットノーランを記録しています。
COVID-19で中断となった2020年は3試合で2勝1敗。
アメリカの大学の学年の呼び方
Freshman/ Sophomore / Junior / Senior(1年生/2年生/3年生/4年生)
そして、2020年の冬頃からすでに、2021年の全体1位候補として大きな噂となっていた投手。今ドラフトは Junior(3年)終了で指名されました。
4年制大学のドラフト資格
Players at four-year colleges and universities are eligible three years after first enrolling in such an institution, or after their 21st birthdays (whichever occurs first).
3年終了時か、21才の誕生日を迎えるかどちらか早い方でOK
上記したルーキーイヤーがとりわけ素晴らしかったので、注目されていた投手でもあります。Max 99mph、そしてヴァンダービルトで鍛えられた投手らしい所作。誰が見ても注目の投手でした。
メッツが肘への懸念を示す
クマール・ロッカーは2021年ドラフトで全体10位でメッツから指名を受けました。
当初は全体1位の筆頭でしたが、ドラフト・イヤーにグンと評価を上げたジャック・ライラー(レンジャーズから全体2位)とは違い、やや評価を落としたのでした。
その評価を落とした要因でもあるのが、今季のピッチングの不調。特に球速の低下が見られ、出れば抑えると思われた2019シーズンと違い、マウンドでの安心感がなくなってしまったという結果に見舞われました。
2021年ドラフト・サイニング・プール
アメリカのドラフトは合意した場合、サイニング・ボーナス(契約金)をもらいますが、その枠(笹イニング・スロット)が決められています。なぜ決めているのかというと、飛び抜けた金額でサインしようとするクラブが現れれば、機会の不平等が起きるからです。
2021年のサイニング枠は下記の通りで、だいたいこの枠よりも、低い額で契約します。
【1st Round サイニング・スロット】
1) Pirates: $8,415,300
2) Rangers: $7,789,900
3) Tigers: $7,221,200
4) Red Sox: $6,664,000
5) Orioles: $6,180,700
6) D-backs: $5,742,900
7) Royals: $5,432,400
8) Rockies: $5,176,900
9) Angels: $4,949,100
10) Mets: $4,739,900
上記はすべてを記載していません。一部だけです。メッツとロッカーは約$4.7Mで契約できるはずでした。
しかし、上記のようにメッツは肘の懸念を示しました。球速低下の要因はエルボー・イシューを抱えているから、そしてメカニック的に将来エルボー・イシューがつきまとうというフォームの指摘もあったようです。
メッツはどうしたかというと、金額は明らかになっていませんが、上限であるスロットの$4.7Mを遥かに下回る金額を提示。
これに怒ったロッカー側はメッツとの契約を拒否。
まだ3年生なので、もう1年ヴァンダービルトに残るという手もあったものの、その選択肢は取りやめ。実際、戻りにくいと思います。
メッツとの契約が破談した今、NPBも視野に入れて契約を探しているというところです。
ブレイディー・エイクンのパターン
MLB通の方ならよくご存じの2014年ドラフト。全体1位で指名された左腕のブレイディー・エイクン(Brady Aiken)は、アストロズからエルボー・イシューを指摘され、かなり低い契約金を提示されたことから破談となったことがありました。今回のロッカーもこのパターンです。
ブレイディー・エイクンは翌2015年ドラフトでインディアンスから1巡目指名。しかし、2015年にトミー・ジョン手術に。今はインディアンス傘下ですが、マイナーでの登板は2019年以降ありません。
負担になった2021カレンダー
クマール・ロッカーのエージェントはスコット・ボラス。ボラスは独立した医療機関でロッカーの肩、肘はMRIも撮り、問題ないと主張。メッツのクレームに対抗していたわけですが、今ドラフトの契約の期限は8月1日になっていたので、その期限を迎えてしまい、破談という流れになりました。
これはメッツももっと交渉のしようがあったのですが、いかんせんネックになったのは2021年のスケジュール。
今ドラフトは初めてオールスターウィークに開催。6月のカレッジの大会が終わってからということで、良い面しかないように思われたのでしたが、大変だったのはフロントでした。
というのも、7月30日期限のトレード・デッドラインと重複していたからです。これはフロントは当初からMLB側にこれは駄目だと申し入れをしていたようです。
既存選手の入れ替わりに加え、新人選手の契約も絡むわけですから、考えてみれば当然です。事務処理や編成のプランのキャパを超えてしまったということでしょう。
メッツはロッカーに対して十分なケアが出来ずに、期限を迎えてしまった。
様々な要素が絡み合ったロッカーの破談でした。
ボラス・コーポレーションのロッカーはそれこそNPB側のルートも模索しているようですが、カーター・スチュアートのようにFAまで、あるいは本人はずっとNPBがいいと言っているようですが、そこまでいる覚悟があるか?はわかりません。
翌ドラフトまでのつなぎ・・・ということなら、NPB側も受けないでしょう。ましてや肘を壊してしまったら、どうなるのかわかりませんので。
ロッカーの次の決断は様子見したいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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