MLB2019MVP
現地2019年11月14日、全米野球記者協会(BBWAA)の投票によるMLBアウォードのクライマックスであるMVPが発表されました。ア・リーグはエンゼルスのマイク・トラウト(Mike Trout )が3度めの受賞。ナ・リーグはドジャースのコディー・ベリンジャー(Cody Bellinger )が初受賞となりました。
Congratulations!
投票方法
MVPの場合は30人の記者が投票するところまでは他と変わりありませんが、ROY、MOYが3位まで、サイ・ヤング賞が5位まで記載であったのに対し、MVPは10位までの記載です。ポイントは1位には14ポイント、2位には9ポイント、3位には8ポイントが与えられ、以下4位から10位までは7、6、5、4、3、2、1というふうに割り振られます。
ではア・リーグから見ていきたいと思います。
AL MVPにマイク・トラウト
ファイナリスト
事前に発表になったファイナリストは以下の3名です。
- アレックス・ブレグマン(Alex Bregman )HOU
- マイク・トラウト(Mike Trout )LAA
- マーカス・セミエン(Marcus Semien)OAK
Name | Av. | OBP | SLG | OPS | HR | RBI | Hit | WAR |
ブレグマン | .296 | .423 | .592 | 1.015 | 41 | 112 | 164 | 8.4 |
トラウト | .291 | .438 | .645 | 1.083 | 45 | 104 | 137 | 8.3 |
セミエン | .285 | .369 | .522 | .892 | 33 | 92 | 187 | 8.1 |
トラウトがブレグマンとの接戦を制す
ファイナリストの状況から見て、ブレグマンとトラウトの一騎打ちとなることは容易に想像できました。ワールドシリーズ開催中、あるいは終了直後はアレックス・ブレグマン一本かという空気さえ漂っていました。しかし、いざ蓋を開けてみると大接戦の末、エンゼルスのマイク・トラウトが受賞ということになりました。
サイン盗み問題も影響したか
ブレグマンのMVPの空気に変化が生じたのはやはり、現地11月12日に公表されたアストロズのサイン盗み問題が出てからではないでしょうか。その疑惑にブレグマンの名前が出ているわけではありませんが、20ポイントの僅差というのはその影響が影を及ぼしたかもわかりません。
トラウトは9月上旬でサイドラインに
マイク・トラウトが最後のゲームに出たのは9月7日。右足の神経の長引く痛みを圧して出場し続けましたが、とうとう限界となりシーズン・エンディングの手術を余儀なくされました。よって、1ヶ月少ない稼働が少ないトラウトは安打数、打点というゲーム出場の多さに比例する数字がそこでストップ。
その意味でも本来ならブレグマンが圧倒的に有利にも思えました。ハロー効果もありますが、ワールドシリーズにも出場し、シーズンフル稼働も素晴らしい点です。数字は上記の通り、ブレグマンとトラウトはさほど変わらない点が多かったとは言え、ブレグマンがMVPという空気は確かにあったゆえに、この微妙な空気感の影響は受けたと見ていいのではないでしょうか。
トラウトは3度めのMVP
マイク・トラウトは2014、2016に次いで3度めのMVPとなりました。ちなみに6シーズンで3度の受賞ですからその凄さたるや巨人のごとき業績です。ご覧の通り、短期間での3度のMVP受賞者は歴史に名だたる面々ばかり。
【3度のMVP受賞者】
- ジミー・フォックス(1932-33,1938/ 7 Seasons)
- ジョー・ディマジオ(1939,1941,1947/ 9 Seasons)
- ヨギ・ベラ (1951,1954-55/ 5 Seasons)
- ミッキー・マントル(1956-57, 1962/ 7 Seasons)
- アレックス・ロドリゲス (2003, 2005, 2007/ 5 Seasons)
選手生命の旬に時期に集中してということもあるとは思います。しかし、旬であっても誰が何度もMVPを獲れるほど結果を出せるでしょうか。トラウトはすごいとしか言いようがありませんね。
トラウトの2012年からのMVP順位が圧巻
マイク・トラウトですが、2011年にデビューし、2012年にROYを受賞。それ以降のシーズンはずっとMVP投票に名を連ねております。
- 2012: 2位
- 2013:2位
- 2014:1位
- 2015:2位
- 2016:1位
- 2017:4位
- 2018:2位
- 2019:1位
AL 投票結果
ア・リーグの投票の状況です。セミエンも健闘しましたが、1位、2位の票が入りませんでした。
Name | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 略 | P |
1. トラウト(LAA) | 17 | 13 | 0 | 0 | 0 | — | 355 |
2.ブレグマン(HOU) | 13 | 17 | 0 | 0 | 0 | — | 335 |
3.セミエン (OAK) | 0 | 0 | 22 | 6 | 0 | — | 228 |
(以下スコアのみ)
- ルメイヒュー(NYY): 178
- ボガーツ(BOS): 147
- チャップマン(OAK): 89
- スプリンガー(HOU):69
- ベッツ(BOS):67
- クルーズ(MIN):62
- コール(HOU):61
- バーランダー(HOU):56
- デバース(BOS):40
- ポランコ(MIN):20
- メドウズ(TBR):15
- リンドーア(CLE):13
- サンタナ(CLE):9
- トーレス(NYY):8
- ロサリオ(MIN):6
- アブレイユ(CWS):5
- ケプラー(MIN):2
- J.D.マルチネス(BOS):1
- モンカダ(CWS):1
- モートン(TBR):1
- オルソン(OAK):1
- ソレア(KCR):1
ヤンキースのD.J. ルメイヒューへの評価票がかなり入ったのは喜ばしいところです。レッドソックスのボガーツはいい評価をもらっていますね。ラファエル・デバースにも評価票ともいうべき40ポイントが入りました。そして毎年気になる1票枠。J.D.マルチネスに1票入れるのであれば、打率キングのホワイトソックスのティム・アンダーソンにも1票くらいあってもしかるべきもだろうとは思います。こればかりは申し合わせでの投票ではないので仕方ないですが、「どうして?」といのがあるのが面白いところですね。
ではナ・リーグの方も見てみたいと思います。
NL MVPにコディー・ベリンジャー
ナ・リーグは評価の難しいところではありましたが、後半戦にややペースが落ちたものの年間を通じて結果を出し続けたコディー・ベリンジャーが制しました。おめでとうございます!
ファイナリスト
ファイナリストはご覧の3人でした。
- コディー・ベリンジャー(Cody Bellinger)LAD
- アンソニー・レンドン(Anthony Rendon )WSH
- クリスチャン・イェリッチ(Christian Yelich)MIL
Name | Av. | OBP | SLG | OPS | HR | RBI | Hit | WAR |
ベリンジャー | .305 | .406 | .629 | 1.035 | 47 | 115 | 170 | 9.0 |
レンドン | .319 | .412 | .598 | 1.010 | 34 | 126 | 174 | 6.3 |
イェリッチ | .329 | .429 | .671 | 1.100 | 44 | 97 | 161 | 7.1 |
コディー・ベリンジャーが余裕で勝利
クリスチャン・イェリッチは9月10日が最後のゲームに。アンソニー・レンドンは勝負強さがRBIに出ているもののWARとOPSが相対的にやや足りず。HR、WAR、OPSのバランスからベリンジャーに決定したというような見方が出来るかと思います。
ドジャース史上12度目のMVPプレーヤー
コディー・ベリンジャーはドジャース史上12度目のMVP受賞となりました。
- ロイ・キャンパネラ:1951, 1953, 1955
- ドルフ・カミリ:1941
- ジャッキー・ロビンソン:1949
- ドン・ニューカム:1956
- モーリー・ウィルス:1962
- サンディー・コーファックス: 1963
- スティーブ・ガービー:1974
- カーク・ギブソン:1988
- クレイトン・カーショウ: 2014
なお、カーク・ギブソンがMVPを獲った1988年はドジャースが最後にワールドシリーズチャンプを獲った年でもあります。
ROYとMVP
ベリンジャーは2017年のROY受賞者。たった1年でMVPまでたどり着きました。なおROY受賞者がMVPを獲ったケースは過去18例。直近ではクリス・ブライアントが2015ROY受賞後、翌年の2016年にMVPを獲得しています。
なおROYとMVPの同年受賞は1975年のフレッド・リン(BOS)と2001年のイチロー選手の2人しかおりません。
NL 投票結果
ナ・リーグの投票結果を見てみたいと思います(外部リンク)。
ハロー効果の幻惑に歯止めをかけた記者が多かったと分析しますが、それにしてももっと思い切ってレンドンに入れてもよかったんじゃないかと思います。
Name | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 略 | P |
1. ベリンジャー(LAD) | 19 | 10 | 0 | 0 | 1 | — | 362 |
2.イェリッチ(MIL) | 10 | 18 | 1 | 1 | 0 | — | 317 |
3.レンドン (WSH) | 1 | 1 | 24 | 3 | 1 | — | 242 |
(以下スコアのみ)
- マルテ(ARI):198
- アクーニャ(ATL): 155
- アレナド(COL):120
- アロンソ(NYM):102
- フリーマン(ATL):90
- ソト(WSH):45
- デグロム(NYM):44
- ドナルドソン(ATL):27
- ストーリー(COL):26
- フラハーティ(STL):9
- リアルミュート(PHI): 8
- グランダール(MIL):4
- マンシー(LAD):4
- ストラスバーグ(WSH):4
- スアレス(CIN):4
- リュウ(LAD):3
- ゴールドシュミット(STL):2
- ウォン(STL):2
- ピラー(SFG):1
- シャーザー(WSH):1
良かったと思ったのはDバックスのケーテル・マルテにかなりの票が集まったところです。
アロンソには1-4位までの上位票がなかったものの、計29人の記者はなんらかの順位で投票。評価の現れととらえたいと思います。思い切って1位に入れる記者が1人くらいいてもよかったとは思いますが、みなさん厳しいですね。
シャーザーに1票を入れたのはミルウォーキー・ジャーナル・センティネルのTodd Rosiak。この投票は素晴らしいと思います。なおケビン・ピラーに1票を投じたのは地元サンフランシスコ・クロニクルの記者の方でした。
MVPの投票は選手のインパクトとともにシーズンを通した数字の蓄積という両面を評価しないといけないので難しいですね。いつか投票してみたいものです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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