324試合から194試合へ処分軽減
現地2022年12月22日、MLBは、トレバー・バウアーの出場停止処分が独立した立場の仲裁人のマーティン・F・シャインマン(Martin F. Scheinman)氏によって324試合から194試合に短縮されることになり、バウアーは即座に復職したと発表しました。
これにより、トレバー・バウアーは、2021年7月2日からリストリクティッド・リストに入っていましたが、すぐに野球に復帰することができます。ただし!2023年にドジャー・スタジアムのマウンドに立っているかどうかは現時点ではまだ決まっていません。
日数の計算も含めてちょっと複雑ですので、整理しましょう。
バウアーがサスペンションとなった理由
トレバー・バウアーが性犯罪を理由に出場停止処分を受けたことはご承知の通りです。
2021年4月から5月にかけて、サンディエゴの女性が彼に乱暴な性行為を強要されたと訴え、その夏の終わりに彼に対して一時的接近禁止令を要求。ここでMLBが調査に入り、バウアーはリストリクティッド・リスト入りとなります。そして、他の2人の女性(いずれもオハイオ州出身)も、ワシントン・ポスト紙の取材に応じ、ほぼ同様の被害を主張。
これに対し、バウアーは、いかなる性行為も合意の上であったと主張し、不正行為を強く否定。ロサンゼルス高等裁判所の判事も接近禁止命令を却下。また、2022年2月にはロサンゼルス地方検事局が、バウアーを刑事事件として追及しないことを発表しています。
よってバウアーは法的には刑事事件として起訴されることはなかったものの、目の前に大きく立ちはだかったのが、MLBと選手会が2015年8月に共同で合意した家庭内暴力対策(Major League Baseball’s Joint Domestic Violence, Sexual Assault and Child Abuse Policy)、通称MLBのDVポリシーでした。
この規定には、MLBコミッショナー(ロブ・マンフレッド氏)は「正当な理由」で選手を処罰する権限を持ち、その決定には法執行機関が要求する有罪/合理的疑いを超える基準を満たす必要はないとあります。つまり、法的に有罪ではなかったとしても、コミッショナー権限で厳しい処分を下すことが出来るというものです。
これにより、MLBはバウアーをDVポリシー違反として、他の選手が下されたものをはるかに超える長いサスペンション(出場停止処分)に値すると判断。2022年4月29日に324試合のサスペンションを科したのでした。
The official statement by MLB on Trevor Bauer’s suspension reduced to 194 games, reinstating him pic.twitter.com/sQs81yHpSn
— Bob Nightengale (@BNightengale) December 23, 2022
サスペンションを軽減した人物
処分軽減を決めたのは、マーティン・シャインマンという人で、MLBとMLB選手会の両方から依頼された独立した仲裁人。シャインマン氏は、MLBの代表と選手会の代表からなる3人のパネルの長を務め、MLBの調査結果を検討。関係者にもインタビューを行っています。インタビューのほとんどは、ビデオ会議で行われ、詳細は公表されていないものの、22日のワシントン・ポストの記事では、少なくとも2人の告発者が証言し、20人以上の証人が呼ばれたということでした。また、同記事によると、主に上述のサンディエゴの女性、オハイオ州の2人の女性の計3人を中心に展開されたとのことで、特にサンディエゴの女性は、3回にわたって証言したという情報も。
仲裁人が決めたこと
また、仲裁人はバウアーの出場停止を324試合から194試合へ、130試合分短縮させた訳ですが、それでもバウアーはDVポリシー下で過去最長の出場停止に値すると判断しました(これまでの最高はフルシーズンの162試合)。
当初の出場停止処分 | 出場停止処分の軽減 | |
処分決定日 | 2022年4月29日 | 2022年12月22日 |
処分 | 324試合 | 194試合 |
処分期間 | 2022年4月29〜 2024年4月28日 | 2021年7月2〜 2022年 |
Game カウント | -2022/4/28まで:18G -2022/4/29から : 144G -2023フル: 162G -2024: 最初の18G | -2021/7/2〜 : 81G -2022開幕〜4/28まで : 18G -2022/4/29から : 144G |
2022年4月29日にバウアーのサスペンションはスタートしましたが、今回の194試合のサスペンションであるなら、2023シーズンの最初の50試合(2023年5月23日)までがその期間となります。
しかし、調停人の判断で、アドミニストレーティブ・リーブ(Administrave Leave=上記表の緑字)が始まった2021年7月2日から訴求することとなりました。その計算で行けば、81試合+18試合+144試合で、バウアーは計243試合に欠場しているのですが、期間的にはバウアーはサスペンションが即座に解除され、復職となりました。
ただし、DVポリシー違反は重いため、2022年の最初の50試合分のサラリーを減額するということで144試合+50試合の計194試合の処分となったのでした。ちょっと複雑です。
ドジャースの決断
さて、トレバー・バウアーは即座に復職ということになりましたが、ドジャースは”Major League Rule 2C”に基づき、復職から14日以内にバウアーを40manロースターに入れるかどうかを決めなければなりません。その期限が2023年1月6日。
ただ、ドジャーズのクラブハウスは、バウアーにとって不利なようです。多くの選手が関係を断つことを希望しているという情報も。
バウアーが開幕からマウンドに立つのはドジャースの判断次第ということに。
バウアーのサラリーとLADの贅沢税
3年/$102M(2021-23)でドジャースと契約したバウアーは、2023年は$32Mのサラリーの予定でした。ところが、50試合分の約9.46Mの減額ということで、$22.5Mのサラリーとなります。
$102M、3年のAAVは$34Mですから、それから$9.46Mを差し引くと、$24.54Mが2023年のバウアーの贅沢税上のサラリーとなります。
リリースしたとしてもドジャースはこの分は払うことになります。
なお、ドジャースの現時点の40manの贅沢税上のサラリー総額は、$232.8M。バウアーの分を入れたとしてもです。$233Mの基準値を下回っています。もし基準値を超えたら、3年連続ゆえ、ペナルティーがきつくなります。これから補強はどうするのかは注目したいです。
バウアーが最後にMLBのマウンドに上がったのは2021年6月28日。2021年は17試合に登板、107.2イニングでERA 2.59、137 SO。COVID-19で短縮となった2020年シーズンは、NLのサイ・ヤング賞を受賞。現在はフェニックス地区の施設でトレーニングを続けており、定期的に投げている動画をアップしています。
追記:LADはバウアーをDFAに
2023年1月6日、ドジャースが”Major League Rule 2C”に基づき、復職となったトレバー・バウアーを40manロースターに入れるかどうかを決める期限が来ました。そして結論はDFA。
これにより、ドジャースは上述の通り、バウアーの2023年分のサラリー、$22.5Mを払うことになります($32Mのサラリーが、50試合分の約9.46Mの減額)。
DFAなので、バウアーはトレードの手続きを経ます。声がけがなければ、FAとなりますが、トレードの声かけがあるかどうかは微妙。もしも、FAとなればバウアーを獲得したクラブは2023年の最低年俸である$0.72Mを支払うだけで良いことに。
今後の動向に注目です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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