逆鱗のポイントはCollusion「共謀」
現地2019年11月6日、定例の記者会見に臨んだブレーブスのGMアレックス・アンソポロス( Alex Anthopoulos)が記者にポロッと漏らした発言がとある方面を大いに刺激してしまいました。
まず何を言ったのかまとめてみたいと思います。
アンソポロスGMの発言
アンソポロスGMはおそらくワールドシリーズ開催中に行われた見られる記者たちとの定例会見で、次の発言をした模様。それが回り回って、選手会側に伝わり、事務局長が大激怒という事態になっています。
“Every day you get more information. And we’ve had time to connect with 27 of the clubs — obviously the Astros and (Nationals) being in the World Series, they were tied up — but we had a chance to get a sense of what the other clubs are going to look to do in free agency, who might be available in trades.”
「毎日、多くの情報が入っているよ。それに27のクラブとはコンタクトしていて、まあ明らかにアストロズとナショナルズは今ワールドシリーズ中で彼らは縛られてはいるんだけれど、 それでも他のクラブがこのFA市場で誰を狙おうとしているのかという感覚をつかむチャンスはあったよ。」
トニー・クラーク(選手会側)がピリピリ
これにするどく反応したのがMLBPA(Major League Baseball Players Association:選手会)の エグゼグティブ・ダイレクター(executive director-事務局長でいいと思います。)のトニー・クラーク氏。
このようなコメントを出しました。
“The statements made by Braves GM Alex Anthopoulos call into the question the integrity of the entire free-agent system. The clear description of Club coordination is egregious, and we have launched an immediate investigation looking into the matter.”
「ブレーブスのアレックス・アンソポロスGMが言ったことは、フリーエージェントシステム全体の完全性について疑問を呈さざるを得ないものだ。クラブ間の調整に関して名言したことは言語道断で、私たちはこの問題に関して即座に調査を開始した。」と。
「共謀」を嫌う
トニー・クラーク・エグゼクティブ・ダイレクターは言葉を慎重に選んでいます。発言の中で”Club coordination”「クラブ間の調整」という言葉を使っていますが、正しくは” collusion”「共謀」です。「共謀」だとニュアンスがきつくなるので、あえて”Club coordination”という表現を使っています。
上のクラークさんの発言を平たく書くと「アンソポロスさんの言っていることは『共謀』以外の何ものでもないでしょ。そんなことをやったらFAなんて意味ないよ。」そういうことかと思います。
ではどうしてそこまで神経質になるのか?ということに関しては次のような根拠があります。
CBA違反
クラーク氏が根拠にしているのはこれです。2017–2021 BASIC AGREEMENT TABLE OF CONTENTS。
E. Individual Nature of Rights
(1) The utilization or non-utilization of rights under Article XIX(A)(2) and Article XX is an individual matter to be determined solely by each Player and each Club for his or its own benefit.
Players shall not act in concert with other Players and Clubs shall not act in concert with other Clubs.
E. 個人の権利の性質
「19条A-2と20条※のもとの権利の利用または不利用は、各プレーヤーと各クラブが自身の利益のために単独で決定する個人的な事項である。
選手は他の選手と協調して行動してはならず、クラブも他のクラブと協調して行動してはならない」
※19条: Assignment of Player Contracts / 20条: Reserve System
まさに赤文字の部分が根拠です。単独で!!
別の意見も
これを受けて7日(木)に前マーリンズ社長のデービッド・サムソンは「アンソポロスが共謀の罪を犯したとは思わない。」とコメントしています。
さらに「もはや過去のシーズンにいい成績を残してきたプレーヤーにお金を払いたくない時代なんだ。今や過去ではなく、これからよい実績を残してくれる若い選手たちにお金を払いたいと思っているんだ。これは共謀とは呼ばない。むしろスマートビジネスと呼んでいいものだ」と。
これはこれで極論かと思いますが、時代の傾向をストレートに言い表していると思います。
アンソポロスGM側が反省コメント
トニー・クラーク選手会事務局長の発言を受け、ブレーブスのアンソポロスGMはすぐにコメントを発表。決してFA制度を軽く見た発言じゃない、誤解を招くような発言で申し訳ないという趣旨の反省に満ちた文章になっています。
コールドなFA市場
最近のオフシーズンでは、FAの目玉選手が取り合いになることは少なく、じっくり様子見される傾向にあります。 ホットどころかコールド市場です。たとえば、ブライスハーパーは、春季トレーニングが開始されるまでフィリーズと契約しませんでした。様子見がつづくなか、ダラス・カイケルとクレイグ・キンブレルの二人は夏になろうかという時期での契約となりました。
選手会側としては最近とみにひどくなってくるこの傾向をなんとしてでも歯止めをかけたい意向もあるのでしょう。
次の改定へ
FAの相場、FA資格取得の時期には改善の余地がかなり残されています。ベテランが排除され、FA前の若手が酷使され、FA前に怪我の心配も出てくるありさまです。
次のCBA改定前にはこの問題は解決してもらいたいところですね。
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