つい先日スタート→買収額550Mドルの価値に
現地2022年1月6日のニュースです。MLBのニュースでもおなじみの”The Athletic (https://theathletic.com/)”。
我々MLBファンにとっては、MLBニュースの独占記事を多数掲載してくれている大きなメディアですね。前日のデビン・ウィリアムズの壁パンチの後悔記事も”The Athletic”のインタビューもそうですし、独占記事としては、やはり2019年に出た「サイン・スティーリング」のスクープですね。
つい先日、コミッショナーを批判してMLBネットワークから退場を言い渡された名物記者、ケン・ローゼンタールさんが大いに活躍されているメディアでもあります。
その”The Athletic”が現地2022年1月6日、”The New York Times Co.”(以下、ニューヨーク・タイムズ)に買収されることが明らかになりました。
買収額は550Mドル
その買収額は$550Mドル、日本円で約637億円(JPY115.89/USDで換算)。大変な価値となりました。
この背景には1つは新聞の衰退、つまりは印刷による広告ビジネスの衰退が挙げられます。ニューヨーク・タイムズの論調はここでは置いておくとして(筆者は好きではありません)、ビジネスとして手をこまねいていたわけではなく、これまでの伝統的な政治主導のニュース配信から、ライフスタイルの提言、料理のレシピやあるいはゲーム分野まで範囲を広げ、刺さる読者を模索してきました。
かつてはボストン・グローブ紙も
筆者も今回知ったのですが、ニューヨーク・タイムズはかつて1993年にボストン・グローブ紙を$1.1Bで買収したことがありました。また、2005年にはAbout.com(現在はDotdash.com)を$410Mで買収。
今回の”The Athletic”の買収は、ボストン・グローブ紙の買収に次ぐ大きなディールです。
ちなみに、双方ともすでに手放しており、手放した時点では買収額を下回っていたので、買収としてはうまく行かなかったということですね。
サブスクリプション・ビジネス
そして今はなんと言ってもサブスクリプションですね。月額あるいは年額で収益を得ようというビジネスです。サブスクリプションで身近なところで行けば、MLB.TVや、Amazon Primeがそうですね。
そこで白羽の矢が立ったのが、”The Athletic”です。
上記のようなスポーツの独占記事を配信し、サブスクリプション・フィーを支払わなければ記事を最後まで読むことができない仕組みになっています。
840Mアカウントから1000Mアカウントへ
ニューヨーク・タイムズはビジネスの柱としてサブスクリプション・フィーを得ることに執心。昨年のコロナ・パンデミックやトランプ元大統領の選挙などの報道で、直近の四半期では840万もの加入者を獲得しているとのこと。
そしてアメリカ企業らしい株主にアピールする方式ですが、2025年までに1,000万の加入者を目指しています。
”The Athletic”は2016年から
ケン・ローゼンタールさんを筆頭に有名なMLB記者が揃って寄稿することになったのが、”The Athletic”ですね。こういうのが出来るよというアナウンスがあったのはつい先日のことに思えます。2016年のことです。
”The Athletic”はサンフランシスコをベースに、アメリカの国内スポーツを中心に網羅。MLBだけでなく、NBA、NFL、NHLの4大スポーツだけでなく、MLS(サッカー)、カレッジのフットボール、ベースボール、バスケット・ボールをはじめ、オリンピックも含めて200以上のクラブを網羅。非常に手広いです。
ウェブサイトに寄稿する編集者は約400名在籍しているとも言われております。
”The Athletic”のサブスクライバーは、120万人とも言われています。この加入者を加算すれば、ニューヨーク・タイムズの目指す1000万アカウントまであと僅か。
”The Athletic”自体も今後まだ加入者が増えるでしょうから、この買収は手っ取り早く力技でサブスクライバーを獲得したことになります。
思えば、”The Athletic”はたった5年弱で$550Mもの価値を叩き出したということに。スタートアップから価値向上までの期間の早いこと。驚かされますね。この一直線の価値向上もアメリカらしくて豪快です。
今後
この四半期で買収の手続きを終えるようで、まったくもって買収完了の手続きの素早さにも舌を巻くしかありませんが、”The Athletic”はニューヨーク・タイムズの子会社になる予定です。
今後の運営はこれまで通り、独自に進めていくとのこと。
スタートアップしたばかりの新興のスポーツメディアがまさかの伝統企業の傘下に入るとはちょっと皮肉な感じもします。かつて”The Athletic”の創業者の一人のアレックス・マザー氏は、創業間もない2017年に、大手メディアをひっくり返すという気概で立ち上げたと言っていましたが、まさかの傘下ですね。”The Athletic”にとっても今回の買収額は予想を超えたものだったかもしれません。
サブスクリプション・ビジネスのもたらす価値は大きいですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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