BOS、実績あるリリーバーを獲得
現地2022年12月2日、ボストン・レッドソックスがブルペン補強で右腕を獲得しました。
ドジャースからFAとなっていたベテラン・リリーバーのクリス・マーティン(Chris Martin )と2年で合意しています。現時点ではフィジカルチェックの結果待ちです。
The Red Sox and reliever Chris Martin have reportedly agreed to a 2-year deal.
— MLB Network (@MLBNetwork) December 2, 2022
Martin posted a 1.46 ERA over 26 appearances for the Dodgers last season after being acquired at the Trade Deadline. pic.twitter.com/ezRj7K5B6x
レッドソックスはすでに今オフ、メッツからFAとなっていた左腕のジョーリー・ロドリゲスと1 年/$2M (2023) + 2024 $4.25Mクラブ・オプション($0.5Mバイアウト)でサイン。
課題とされていたゲーム後半を少しずつではありますが、補強に着手しております。
契約内容
レッドソックスとクリス・マーティンの契約内容は以下の通り。
- 2年/$17.5M (2023-24)
AAV(Annual Average Value)で$8.75Mです。オプションなどはない模様です。ひょっとしたらパフォーマンス・ボーナスが入るかもしれませんが、現時点ではこの内容となっています。
前契約
クリス・マーティンは2022年の開幕当初はカブスに在籍。その時の契約が1年/$2.5M(2022)。これに登板試合数とロスター加入日数に応じたパフォーマンス・ボーナスがついていました。
そして2022年のトレード・デッドラインでドジャースに移籍。この時、残りの$0.920Mもカブスが負担しています。後述しますが、ドジャースは言ってみれば負担なしに素晴らしいリリーバーを手に入れたのでした。もっともドジャースは27才のユーティリティのザック・マッキンストリーを交換要員で出しております。
ちなみに、2020-2021年はブレーブスと2年でサインしていて、2年/$14Mでした。ということは今回のレッドソックスとの契約は実力で、もとの価値以上のものに戻したということにもなりますね。
クリス・マーティンの2022年の成績
その実力で勝ち取った2022年の成績ですが、ご覧の通りの素晴らしい内容。
Club | Game | IP | ERA | BB | HR | SO | BB9 | SO9 | HR9 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
CHC | 34 | 31.1 | 4.31 | 4 | 5 | 40 | 1.1 | 11.5 | 1.4 |
LAD | 26 | 24.2 | 1.46 | 1 | 1 | 34 | 0.4 | 12.4 | 0.4 |
Total | 60 | 56.0 | 3.05 | 5 | 6 | 74 | 0.8 | 11.9 | 1.0 |
なんと言っても素晴らしいのはBB(四球)の少なさ。さすがNPBで鍛えられた面がありますね。セットアッパーとして厳しい場面で登板すれば、厳しいコースをついて四球、あるいはプレッシャーに圧し潰されて四球というのは結構多いはずなのですが、もう度胸が座っているというかこのコントロールは見事という他ないです。
フェンウェイでの登板を考えたときに、HR増は想定しないといけませんが、2022年のレッドソックス投手陣がフェンウェイでグリーンモンスター超えのHRを許しているほとんどが失投。100mohの強いボールを投げるのなら、多少のコントロールミスでも長打は防げるケースが多いですが、mid-90mphでコントロールミスがあれば、メジャーのバッターは簡単にスタンドへ放り込みます。
その意味でいいリリーバーを確保出来たと言っていいでしょう。
クリス・マーティンのこれまで
クリス・マーティンは1986年6月2日生まれの36才。シーズン途中で37才になります。今回の契約は37才-38才での契約です。
入団拒否からマイナー契約まで
高校卒の2004年にタイガースから18巡目で指名されるもこれを拒否。テキサス州にあるマクレナン・コミュニティ大学に進学。こちらは短大ということになるようです。翌2005年のアマチュアドラフトで21巡目でコロラド・ロッキーズから指名を受けるも、マーティンはやはり拒否しました。
その後なのですが、クリス・マーティンは右肩を痛め、野球選手としての希望が絶たれかけました。その間、ホームセンターのロウズ(Lowe’s)や物流のUPS、さらに大型家電量販店のテキサス・アプライアンスなどで棚卸し経験。203cmの身長のおかげで一番上の棚に手が届いて重宝されたようです。なかなかのエピソードですね。
3年ほどそのような生活が続いた後、ようやく肩が治り始め、地元の男子リーグでプレーを再開することに。
ロッキーズからドラフト指名されてから5年後の2010年、彼は独立リーグ(AA相当)のグランドプレーリー・エアホッグスのトライアウトに参加。90mph前半のファストボールを投げ、監督のピート・インカビリアに印象を与えて契約に至りました。この年、クリス・マーティンは13試合で4先発し、 4勝0敗、ERA 1.96と好成績をおさめます。 36.2 IPで36SO 、9 BBでした。
レッドソックスのマイナーで実績を積む
この投球でボストン レッド ソックスの興味を引き、マイナー契約。2011年3月11日のことです。2011年は、クラスAのグリーンビル・ドライブ(7試合で4勝0敗、防御率2.17、WHIP.76)、クラスA+のセーラム・レッドソックス(13試合で2勝1敗、4セーブ、防御率0.92、WHIP 0.89)、AAのポートランド・シードッグス(3試合で1勝15敗)で登板。ポートランドでは苦戦したものの、このシーズンのトータル ERAは2.55、WHIPは0.946と非常に良い成績を残しました。
2012年はAAのポートランドで過ごし、76.1 IPで3勝6敗、ERA 4.48、18 BBをマーク。秋にはアリゾナ・フォール・リーグに参加。AFLでは7試合に登板して1勝0敗、ERA 3.38の好成績をおさめます。
2013年はAAのポートランド(21IPで2勝、3セーブ、9H、0 RUN)、AAAのポータケット(30試合、3勝、3セーブ、ERA 3.18)に所属。この年のWHIPは1.06。2013-2014年の冬にはドミニカ・ウィンター・リーグにも参加。レオネス・デル・エスコギドで8試合に登板し、8.0 IPで被安打3、失点1、BB0、8SOで6セーブをマーク。同年のドミニカ・ウィンター・リーグで5位のセーブ数をマーク。
ロッキーズでメジャー・デビュー
2013年12月にレッドソックスが、INFのジョナサン・へレーラを獲得したトレードでロッキーズに移籍。
2014年はロッキーズのAAAのコロラド・スプリングス・スカイソックスで開幕を迎え、7.2 IPで0勝1敗、3セーブ、ERA 8.22とよくないスタートを切りましたが、それでもチャド・ベティスが降格したことに伴い、ビッグリーグにコールアップ。
2014年4月26日のロサンゼルス・ドジャース戦がメジャーデビューとなりました。2-5とドジャースがリードした状況の7回裏のマウンドに登板。トミー・ケインリー(当時ローキーズ)からのリレーでした。マーティンはエイドリアン・ゴンザレスにシングルヒットを許すも、マット・ケンプをライナーにしとめてフォースアウト。アンドレ・イーシアには四球を出しましたが、ジャスティン・ターナーをダブルプレーに仕留めて無失点で切り抜けたデビュー戦となりました。
2014年は4月26日から6月20日までビッグリーグで過ごし、16試合で15.2 IPを投げてERA 6.89。その他の期間はまたAAAで過ごしています。
2015年1月5日、ロッキーズは彼をDFAとし、同年1月13日にニューヨーク・ヤンキースに契約を買われることになりました。
日ハムで大谷選手とチームメイトに
2015シーズンはビッグリーグで24試合、20.2IPで ERAは5.66。2015年11月にヤンキースをリリースされ、FAとなったクリス・マーティンに転機が訪れます。北海道日本ハムファイターズとサイン。
日本ハムでは2016-2017年の2シーズン在籍。ここで大谷選手と出会った訳ですね。2016年は52試合でERAは1.67、2017年は41試合でERAが1.16。この素晴らしいパフォーマンスを引っ提げてメジャーに凱旋。ちょうど大谷選手のメジャー挑戦と同じ時期ですね。
メジャー復帰
クリス・マーティンはレンジャーズと2年/$4M (2018-19)でサイン。2017年12月のことです。2018年、テキサス州アーリントンで育ったので、故郷のチームへの入団となりました。2018年はレンジャーズで46試合に登板。1勝5敗、 ERA 4.54。
ブレーブスでポストシーズンを体験
2019年はレンジャーズで38試合に登板して0勝2敗、3.08、4セーブ。38.0イニングでK/BBが13.0という驚異的な成績を残しました。2019年のトレード・デッドラインでコルビー・アラードとのトレードでブレーブス荷移籍。ブレーブスでは20試合に登板し、1勝1敗、ERA 4.08。このシーズン、クリス・マーティンは初めてポストシーズンに出場したものの、10月3日のNLDS Game1のウォーミングアップ中に負傷。ルーク・ジャクソンと交代することになったため、実際に登板することはありませんでした。
短縮シーズンとなった2020年は19試合に登板して1勝1敗1セーブ、ERA1.00と活躍。ポストシーズンでは計8試合に登板。10月18日のNLCS Game7で、7回2アウトからコディ・ベリンジャーにソロホームランを浴びたのはクリス・マーティンです。この投球で3-3のタイスコアの均衡が敗れ、ブレーブスは敗退しました。
2021年は46試合に登板。2勝4敗1セーブ、ERA3.95。ポストシーズンでは5試合に登板し、ブレーブスのワールドシリーズ・チャンプの一員ととして活躍。
シーズン終了後にFAとなったクリス・マーティンは2022年3月にシカゴ・カブスと1年契約サイン。カブスでは31試合に登板し1勝0敗、ERA 4.31。7月30日にOFのザック・マッキンストリーとトレードでロサンゼルス・ドジャースへ移籍。上述のような素晴らしい成績を残したのでした。
クリス・マーティンには大いに期待したいと思います。体型がそうかもしれませんが、マット・バーンズと投げ方がよく似ています。
お読みいただき、ありがとうございました。
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