早期開催に逆の世論
現地2020年4月9日のニュースになりますが、ニュージャージー州にあるシートンホール大学のシャーキーインスティテュートというところが実施した世論調査によると、回答者の72%が新型コロナウイルスの治療法(COVID-19)が開発されるまでスポーツゲームに参加しないことが判明しました。
シートンホール大学のOB
なおちょっと横道に逸れますが、シートンホール大学の出身者はMLBに多数おります。その筆頭ともいうべき選手はHOF(Hall of Famer:野球殿堂)にもなった元アストロズのクレイグ・ビジオ(Craig Biggio )です。あとは元ヤンキースの捕手のリック・セローネ(1975-1992)、パイレーツ等でリリーバーとして活躍したジェイソン・グリーリ(Jason Grilli/2000-2017)もそうです。マイナーも合わせて総勢158人もプロに送り出しています。しかし10年もサバイブできる選手はわずか数人という、ここでもMLBの生存競争の厳しさがよく表れています。
また、この大学はスポーツビジネスにおいても先行する大学のようです。
調査の内訳
肝心の調査はこのように行われています。
- サンプル数:762人で、そのうち下記から回答。
- 348人が固定電話から
- 414人が携帯電話から
- サンプルとなった人たちの居住地域は全米
ただし、地域は不明。世論調査の誤差は+/- 3.6%です。
質問&回答結果
「新型コロナウィルスのワクチン(治療法)が開発される前に(プロスポーツの)リーグがプレーを再開したらどうするか?」を尋ねたところ、
回答の結果は以下の通りです。
- 新型コロナウイルスのワクチン(治療法)が開発されるまではプロ・スポーツイベントが再開されても参加しない:72%
- social distancing practices (社会的距離)がきちんと制定され、実行されれば見に行く:12%
- パンデミック以前と同じように参加する:13%
直訳っぽい言葉ではありますが、まず1の「参加しない」の意味はここでは野球場、フォットボール場、アリーナなどには見に行かないという意味でよいと思います。
2の社会的距離とはぎゅうぎゅうとした環境ではなく、ある程度人との距離を保てる余裕をもった距離が保てるかどうか。
3は、もう「再開されたらすぐ見に行くさ!」というもっとも大事にしないといけない層でもありますね。
ワクチン完成までは見に行きたくない
ワクチンの開発までは参加したくない、つまり見に行きたくないという回答はMLB関係者にとってはかなりショックだったかもしれません。医療的な解説は私はできませんが、アビガンという薬もまだ治療法として確立されたものではなく、ワクチンの完成はまだ見えておりません。
それに現地2020年4月11日時点ではアメリカ本土の感染者のピークがまだ読めない状況です。ニューヨーク州はピークアウト、つまりグラフの頂点が下がったという報道も目にしましたが、それの真偽についてはまだ静観の姿勢を取らざるを得ないです。
要はワクチンどころか、対象の例のウィルスの実態がどこまでつかめているのか、定かではないゆえにワクチンの完成を待つということは、2020年のMLBはないことを意味するのではないでしょうか?
アリゾナ30、カクタスVSグレープフルーツ案
2020シーズン開催に向け、いろいろな案が出てきています。その中でも有力な2つの案に注目が集まっています。アリゾナに30クラブが集結する案とカクタス、グレープフルーツリーグに分かれて双方からの勝ち抜きがワールドシリーズを行う案です。
これらには選手も反応。選手も早くゲームをしたいということに変わりはないようでピート・アロンソ(メッツ)もアリゾナに30クラブが集まる案に興味を示しています。彼の場合はとにかく早く再開したいという意思です。
一方で選手の中には再開に消極的で、上記の世論調査の大半の人と同じ考えでワクチンが出来るまではNOという人もいるでしょう。
社会が落ち着かなければ再開は不可能と言えるでしょう。「社会が落ち着く」という定義に関しても感染者、死亡者数の統計、医療体制など様々な要因を考慮せざるを得ず、プロスポーツ界は医療権威の意見を参考に動く必要があり、MLBはそのような姿勢を採っております。
希望のアンケート
この世論の反応は2020シーズンについてかなり絶望的な回答でしたが、ただこのような質問と回答がありました。これはMLBにとっては希望です。
If sports are played without fans will you be more interested, less interested or have the same interest in watching a broadcast of the game?
「無観客で行われることになった場合、興味はありますか?ありませんか?またそれが放送されることになった場合に同じくらいに興味はありますか?」
変な和訳になりましたが、
- 無観客試合となった場合、観客ありより興味があるかどうか?
- 無観客であってもそれが放送されれば関心があるか?どうか?
この2点を聞いています。結果は
- More interested (無観客はむしろそそる): 7%
- Less interested (無観客にそそられない): 16%
- Same interest (観客ありと同じくらい放送に興味あり): 76%
- Don’t know/No opinion (よくわからない): 2%
無観客なら社会情勢次第で
これは何を意味するのか?つまり、早期に開催するならまずは無観客という選択がベターであるということです。
早期と言っても強引に早くやれということではなく、社会全体の感染、医療体制などが一段落がついたということが権威から判断されれば、観客を入れて行うパターンよりも早くに開催できる可能性が高いということです。
日数が経過するごとにこの選択の優先度が高まりそうに思います。
東京五輪の延期も賛成
また横道にそれますが、この世論調査では東京五輪の延期についても聞いています。「東京五輪の2021年への延期の決断について、結論を出すのが早すぎたと思うか?」それについて、早すぎたが 6%、早すぎるというほどでもないが16%、いや決して早すぎたということはないが76%、わからないが2%。
7割以上が今回の東京五輪の延期の決断に賛同を示してくれています。
なお、あくまで感染の状況が収まり、いろいろな立場の人たちがまずは生存できること、そして引いては安全に生活できるような環境になることが最優先であることは言うまでもありません。
お読みいただき、ありがとうございました。
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