強烈なインパクト
現地2021年4月27日にアナウンスされた情報です。アメリカ、独立リーグのパイオニア・リーグが2021年のシーズン開幕を前にルールを変更。これが強烈なインパクトを放っています。その目玉となるルール改正が延長戦となった場合にホームラン・ダービーを実施するというもの。
筆者はこの第一報を目にした時、「サッカーのPKか!」と突っ込んでしまいましたが、いやいやこれが結構いいインパクトをはらんでいます。賛否は別として興味津々の方も多いのではないでしょうか。
パイオニア・リーグが実施するルール変更
ではまずその改正点を見て行きます。
【1】延長戦はノックアウト方式(HRダービー)
もっともインパクトのあるのがこれです。文字通り、ゲームが9回を終えて同点で、決着がつかない場合、延長戦は戦わず、ノックアウト方式を採用するというもの。そのノックアウト方式の具体的な実施例がホームラン・ダービーのサドンデスだということ。
5球中HRの多い方が勝ち
どういうふうに実施するかというと・・・
- 各チーム打者を一人ずつ指名
- 5ピッチを投じてHRが多い方が勝ち
- 一人目で決着がつかない場合、二人目が登場。以下同様
やろうとしていることはほぼPKですよね。こちらは細かいルールとして、たとえばゲームに出ている選手が打者として登場しないといけないとか、ピッチャーと本塁の距離、ボール・ストライクの選択のカウントなどは明らかになっていませんが、おそらく最も面白いと思われる基準で採択していくと思われます。独立リーグですから、人気を出さないとけませんからね。しかもオールスターのHRダービーがある程度ベースになっていることでしょうから、細かいルールもそれなりにすんなり入ってくるとは思います。
パイオニア・リーグがこの制度の導入を決めた理由は投手の疲弊を防ぐためです。
なお、オールスターのHRダービーとはルールが違いますが、イメージとして2019年の動画を貼っておきます。
【2】DPH (Designated Pinch Hitter)
2番目です。DH(Designated Hitter)ならぬ、DPH(Designated Pinch Hitter)の採用。これはラインナップで出場している選手に代打を送ったとして、通常であれば出場していた選手は代打によりベンチへ下がるということになりますが、この制度ではまたゲームに戻ることが出来ます。つまり、ゲームから下げずに代打を送れるという制度。
ルールとしては
- DPHとして出られる選手はゲームに出場していない選手。
- DPHで代打に出た選手はそれきりでゲームには入れない。
- 各チーム、1ゲームにつき1度だけ使うことができる。
例えば、レッドソックスでJ.D.マルチネスがゲーム休養日だったとします。そしてハンター・レンフローが当たっていなかったとして、コーラはDPHとしてレンフローに代わり、JDを代打に送ることができる。ただし、その打席が終わればJDはもう出られず。しかし、レンフローはまた出場できる。
【3】DPR (Designated Pinch Runner)
こちらもDPHと同じで、ゲームのラインナップに出ている選手に代走を送る場合、通常は代走を送られた選手はそれでお役御免となりますが、この制度だとまたゲームに出場できるというもの。
ルールとしては
- DPRでとして出られる選手はゲームに出場していない選手。
- DPRで代走に出た選手はそれきりでゲームには入れない。
- 各チーム、1ゲームにつき1度だけ使うことができる。
たとえば、ブレーブスで言えば、テレンス・ゴアが仮に26名のロスターでベンチにいたとします。そして仮に、捕手のトラビス・ダーノーが足を怪我していながらも、1点を取れば勝ち越しという場面でヒットで出塁したとします。捕手なので下げたくないが、足の怪我でスピードが気になる。そんなときに、スニッカー監督は、テレンス・ゴアをDPRとして起用することが可能。そして結果が出たとして、ゴアはもうゲームに出場することが出来ないものの、ダーノーはまたマスクをかぶることができる。そんな制度です。
追記:実例
2021シーズンでの実例です。
現地2021年9月8日に行われたホークスVSラプターズのゲーム。
6回裏、ラプターズは先頭打者で捕手のカイル・カウフマン(Kyle Kaufman)が四球で出塁。ここで、DPRとしてクリストファー・キャンベル(Christopher Campbell )がゲームイン。この代走が決まり、見事にホームインしています。そして、直後の7回表の守備では、再び、カイル・カウフマンがマスクをかぶることになりました。これはスコアボードを見ただけではわかりません。普通にPRと書かれてあるだけですから。表記はDPRと変えてもらいたいところですね。
【4】チェック・スイングのアピール
4番目はチェック・スイングのアピールは打者も可能になったということ。チェック・スイングはハーフ・スイングのことですね。通常であれば、投手か捕手のみが「振ったよ!」と塁審にアピールすることが出来ますが、打者は振ってないよね!と塁審や主審に確認することが可能となりました。
あとは、パイオニア・リーグ独自の制度というか、審判の数が今までは2人のみだったものが、今季から3人になるというのがありますが、これはリーグ独自のものなのでスルーします。
MLBがくすぶられる制度ばかり
ご覧いただいておわかりのように結構、かゆいところに手が届くというか、野球でこんなことができればなというのが確立されています。
延長が見たい場合も
これは完全に部外者目線ですが、ポストシーズンは延長ありでやってもらいたいですね。2018年のワールドシリーズのレッドソックス@ドジャース戦の延長18回など、やはり通常の形で最後を見たいと思います。また、レギュラーシーズンであってもたとえばドジャースとパドレスのゲームは決着がつくまで見たいというのもあります。
確かに選手は大変なのは事実ですが。
タイブレークが評判よろしくない
そしてここがポイントでもあるのですが、延長戦で、ランナーがオートマティックで2塁につくタイブレークがあまり評判の良いものではありません。
実際、投手が結構つらいですね。これで負けたら、記録としてオートマティックランナーのホームインは自責点はつきませんが、そもそもランナーをスコアリング・ポジションに背負っているという心理的な圧は2点目、3点目を呼びやすい面もあると思います。
今回のパイオニア・リーグのルール・チェンジはこの辺のなんとなくもやもやしたものをクリアーにしたという点もあり、一概に侮れないルールチェンジかと思います。
パイオニア・リーグとは
さて、パイオニア・リーグですが、以前はショートシーズンAでもありました。しかし、マイナーの改革により、独立リーグとして2021年からスタート。2020年11月にMLBと業務提携を結び、今回のルールチェンジも将来のMLBへの導入も見据えたテストの意味合いもあります。
また、パイオニア・リーグは2021年5月22日に開幕。9月初旬まで96試合を戦います。計8チームがあり、所属チームはロッキー山脈に沿うように、モンタナ州、コロラド州、ユタ州、アイダホ州に点在しています。時差のタイムゾーンは、マウンテン・タイムゾーン(山岳部時間)で、サマータイム中はニューヨークなどのある東部時間より2時間遅く、ロスのある太平洋時間より1時間早いです。
MLBは別にアトランティック・リーグにおいてもルール・チェンジのテストを実施中。なお、2020年のコロナ禍でタイムスケジュールが大きく変わったことは否めないところですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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