マイナーへアウトライト
現地2021年6月7日(月)、フィラデルフィア・フィリーズはユーティリティー・プレーヤーのスコット・キンガリー(Scott Kingery)をマイナーへアウトライトとしました。
フィリーズからのアナウンスによれば、スコット・キンガリーはすでにウェーバーをクリアー、つまりウェーバーにかけたものの、他のクラブからの獲得のオファーがなかったため、そのままトリプルAリーハイ・バレー(Lehigh Valley)アイアン・ピッグス所属となりました。
アウトライトとは「40manから外れること」
このマイナーへアウトライトしたというのは、非常に厳しい決断を意味し、40manロスターから外れることを意味します。つまり、メジャー契約ではなくなり、メジャーの試合に出られなくなることを意味します。
これがまだ”OPTIONED”であれば、アクティブ・ロスターからは外れるけれども、40manロスターには残っていることを意味し、試合に出る前提の処分ではありますが、今回の決断はフィリーズはスコット・キンガリーを当分試合に使わないと決断したという意味合いと考えていいでしょう。
DFAとの違い
DFAも40manロスターから外すことを意味しますが、もうクラブから出すことを前提とした考え方で、トレードやFA、マイナーへという結論があります。たとえウェーバーをクリアーし、マイナーへ残ることになったとしても、「まあ、うちにいてもいいよ」くらいの考え方。
一方、アウトライトは、まだ支配下に置くのが前提の考え方で、今回の場合を平たく言うなら、「とにかくマイナーでバット振って来い」というくらいのもの。
ただ、日本で一軍、二軍を往復するのとは違って、40manに残るかどうかは選手にとっては死活問題で、そこに大きな壁が一枚隔たっているというもの。
2018年、デビュー前に延長契約
スコット・キンガリーが一躍有名になったのは、デビュー前の2018年3月に6年(2018-23)/$24Mの延長契約を結んだことによります。
契約の中身
この延長契約の中身はご覧の通りです。
- $1.5M サイニング・ボーナス
- 支払い
- 2018:$0.75M、 2019:$1.25M、2020: :$1.5M、2021:$4M、2022:$6M、2023: $8M
- クラブオプション:
- $13M(2024) +$1Mバイアウト
- $14M(2025)
- $15M(2026)
契約当時のGMはマット・クレンタック氏。
スコット・キンガリーのキャリア
スコット・キンガリーは1994年4月29日生まれの27才(現地2021年6月8日時点)。アリゾナ大出身で、2015年アマチュア・ドラフトでフィリーズから2巡目(全体48位)で指名されプロ入り。
2018年にデビュー
延長契約を行った2018年にメジャー・デビュー。
1年目は147試合に出場し、452-102、打率.226、OBP .267、SLG .338、HR 8、二塁打 23、RBI 35、盗塁 10。
2年目の2019シーズンは126試合に出場し、458-118、打率.258、OBP .315、SLG .474、HR 19、二塁打34、RBI 55、盗塁15。ここまではよかったのです。
2020年から急降下
しかし、変則シーズンとなった2020年は36試合で、打率.159、OBP .228、SLG .283。
2021年はここまで15試合で19-1、打率が.053。
脳震盪などの影響も
ただ、2020シーズンはCOVID-19による離脱、2021シーズンは脳震盪による離脱など体調が優れないこともこの成績に影響を与えているとは思います。
OPS+の悪さ
ただ、これらの影響により通常100が一つの基準であるOPS+のキャリア通算が75に。
なお、2018年以降で、打席数1000以上を経験している198名のバッターのうち、このOPS+の悪さはマーティン・マルドナード、エルビス・アンドラス、オーランド・アルシア、ビリー・ハミルトンに次いでワースト5位の数字です。
ドンブロウスキははっきりしている
今季からフィリーズのベースボール・オペレーションの社長に就任したデーブ・ドンブロウスキは、非常にはっきりしていて、キンガリーは「守備型の選手」であり、もっとバットを鍛えて欲しいということも話しています。
キンガリーの道
キンガリーはこれからもう一度マイナーからビッグリーグへ這い上がる選択しかなくなりました。ウェーバーでクレームオフされなかったというのは、デビュー前の契約が重たいということを意味しています。つまり、成果と報酬のバランスが悪いという判断です。
まずは体調を整えてから、持っている力を発揮してくれればと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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