フィリーズのGMロール探しが決着
前GMのマット・クレンタックを10月に降格させ、GMロール探しを継続していたフィラデルフィア・フィリーズですが、新任者を決定。マーリンズとレッドソックスをワールドシリーズ・チャンプに導き、タイガースをワールドシリーズ出場に導いたデーブ・ドンブロウスキー氏(Dave Dombowski)に任せることに決めました。
このフロントオフィスの人事は現地2020年12月11日(金)にオフィシャルとなりました。
契約は4年でベースボールOP社長
フィリーズとデーブ・ドンブロウスキー氏との契約は4年/$20M (2021-24)。現時点ではオプションがあるかどうかは判明していませんが、おそらくないと思われます。相場としてはやや高めかと。ナショナルズのベースボールOP社長兼GMのマイク・リッゾが2年$8M(2019-20)ですから、彼よりは1年当たり$1Mほど高いです。
ポジションはGMではなく、プレジデント ・オブ・ ベースボール・オペレーションズ。編成に特化したGMよりも権限と責任範囲が広い立場。言うなれば、ドンブロウスキー流にやれるということです。
球団拡大のグループにいたドンブロウスキー氏
現地2019年9月8日にシーズン終了を待たずにレッドソックスを解雇となったデーブ・ドンブロウスキー氏ですが、その後は何をやっていたかというと、球団拡大の動きがある中、テネシー州ナッシュビルにビッグリーグを誘致しようというグループにおりました。そこで新球団のGMロールでというシナリオがあったようです。球団拡大はナッシュビルの他にポートランドなども候補として上がってはおります。
奥様の賛同も得て、ナッシュビルで自宅を建設しようかというところまでの本気度合いだったようです。
しかし、気持ちが変わりました。ここでもCOVID-19(武漢ウィルス)の影響が出ていて、球団拡大の話もやや遠のいた感が出たようです。そこを急襲したのが、フィリーズのオーナーであるジョン・ミドルトン氏。フィリーズの新ベースボール・オペレーションの社長として就任を依頼されたという経緯があったようです。
勝つことに集中する評判
マーリンズを1997年に、レッドソックスを2018年にワールドシリーズ・チャンプに導き、タイガースを2006年と2009年にワールドシリーズ出場に導いたデーブ・ドンブロウスキー。勝ちに集中し、特に資金を思い切って投入することは知られた手法です。ただ、その後は2019年から2020年とレッドソックスが苦しんだように贅沢税の超過、あるいはサラリー削減という大幅なコスト削減を余儀なくされるという事態を招いています。
言ってみれば、プロスペクトの移籍も含めた未来をも投入して、ここぞというシーズンにワールドシリーズ・チャンプにつく。そんな手腕です。
スモール・バジェットでどこまでやるか
フィリーズは本来、決して資金力のないクラブではありませんが、特殊だった2020シーズンを終えて非常に財務的に苦しいのは間違いないところ。
これはデーブ・ドンブロウスキー氏が就任しても変わらない事実。その中で今までの手法とは違うやり方でどこまで選手をキープし、戦力を整えていくいのかは注目です。
フィリーズのカルチャーではどうも分析部門に問題があったようですから、まずはここから着手していきそうです。
再び、リアルミュート再契約へ動く
今オフFAとなった正捕手のJ.T.リアルミュートを手放す覚悟が見えたフィリーズ。
デーブ・ドンブロウスキー氏が就任したことでリアルミュートの確保は最優先事項となりました。リアルミュートは$200M以上の契約を模索しているようですから、 どうやって資金をやりくりするのかは見ものではあります。
デーブ・ドンブロウスキー氏のGMキャリア
ざっとドンブロウスキー氏のGM、あるいはベースボール・オペレーションとしての略歴を記しておきます。
- エクスポスGM(1988−1991)
- マーリンズGM (1991-2001) ※球団スタートは1993
- 1997 WSチャンプ
- タイガース ベースボール・Ops社長、GM(2001-2015) ※GM就任は2002から。2001年にはもうタイガースのフロントオフィスの一員に。
- ポストシーズン出場5度、ALペナント(WS出場)2度
- レッドソックス ベースボール・Ops社長(2015-2019)
- 2018 WSチャンプ
エクスポスでは1989年から3年間就任。ナ・リーグ東地区4位、3位、6位でした。その後、1993年にフロリダ・マーリンズがスタートしましたが、その前の立ち上げ段階の1991年からGMに就任。2001年まで担当し、1997年にワールドシリーズを制覇。
タイガースでは2002年、ランディー・スミスGM(Randy Smith )がシーズン開始直後の4月22日に解雇されたのを引き継ぐ形でGMに就任。以降2015年まで14シーズンにわたってGM職に就いておりました。その間、2006年と2009年にワールドシリーズ出場を果たすもいずれも敗退。ただ、2011年から2014年まで4年連続でア・リーグ中地区のペナントを獲るなどの見事な実績もあります。
そしてレッドソックスでは2015年から2019年までベースボール・オペレーションの社長に。2008年WSチャンプです。
ドンブロウスキー氏が引いた後
上述した通り、未来まで投入して勝ちに行く手法を実施した結果、ペンペン草も生えないというくらいに厳しい財務状態に陥り、引いては順位も落ちるということに。
- マーリンズ ドンブコウスキー氏退任の2002〜ジーターがCEOに就任する前の2017シーズンまで:
- 2003年にラリー・バインフェストGMでWSチャンプ
- 最下位4度、最高2位
- タイガース 退任後の2016〜2020: 地区最下位が3度
- レッドソックス 2019年オフ〜2020オフ:2019年は贅沢税で苦しみ、プロスペクトが枯渇、2020年に最下位に。
代表的なディール
デーブ・ドンブロウスキー氏の代表的なディールを記しておきたいと思います。
【エキスポス時代】
- 1998年5月、ランディー・ジョンソンをマリナーズへトレード
【マーリンズ時代】
- 1993年6月、マーリンズがゲイリー・シェフィールドをパドレスから獲得
- 1998年5月、マーリンズ時代、マイク・ピアッツァをドジャースから獲得。前年獲得したゲイリー・シェフィールドをドジャースへトレード。ピアッツァは5月14日に獲得後、5月22日にメッツへトレード
【タイガース時代】
- 2007年12月、ミゲル・カブレラをマーリンズから獲得。
- 2009年12月、3チームトレードでDバックスからマックス・シャーザーを獲得
- 2014年7月、3チームトレードで、デービッド・プライスをレイズから獲得。
- これでタイガースはマックス・シャーザー、ジャスティン・バーランダーとともにサイ・ヤング賞トリオが完成。
- 2014年12月、レッドソックスからトレードでヨエニス・セスペデスを獲得。レッドソックスにはリック・ポーセロが動く。
- 2015年7月、ヨエニス・セスペデスがメッツへ
【レッドソックス時代】
- 2016年12月、トレードでホワイトソックスからクリス・セールを獲得。
- 同時にキューバの至宝と言われたNO.1プロスペクトのヨアン・モンカダ、そして100mph右腕のマイケル・コペックを失う。
- 2018年2月、J.D.マルチネスと5 年/$110M (2018-22)でサイン。
- 2019年3月、クリス・セールと5年$145M(2020-2024)で延長契約
このきらびやかなディールの履歴が示すように今までは資金力がついてまわってきましたが、予算が限られる中、どう動くのか注目ですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント
ところどころ数字が間違ってますよ
ご指摘ありがとうございます。
マーリンズへの参入とGM就任という表現の差、またタイガースへの参入とGM就任の年度の差などを
クラブにジョインした年とGMに就任した年度がわかりにくくなっていたので修正しました。