ケイバート・ルイーズ、精巣挫傷
現地2022年9月9日、ナショナルズのデーブ・マルチネス監督は記者団とのセッションで、前日のゲームでファウルチップが股間を直撃し途中退場したケイバート・ルイーズの症状について”testicular contusion(精巣挫傷)”と診断されたことを明かしました。
デーブ・マルチネス監督は、残り試合から考えてケイバート・ルイーズの今季中の復帰は難しいであろうことも明かしました。
ケイバート・ルイーズの怪我が起こったシーン
ケイバート・ルイーズが怪我をしたのは現地2022年9月8日、ブッシュ・スタジアムで行われたカージナルス戦。アダム・ウェインライトとジョサイア・グレイが先発し、ヤディアー・モリーナが2HRを放ったゲームです。
なお、このゲームはナショナルズがコツコツと追加点を上げ、11-6のスコアで勝利しました。
問題のシーンが起こったのは2回裏。ヤディアー・モリーナがLF2階席に大きな2ランHRを放った直後でした。
打席にはこの9月に初めてメジャーに上がった28才のルーキーOF、ベン・デルージオ(Ben DeLuzio)が入りました。一旦、打席に入ったものの、モリーナのHRに対し、カーテンコールを求める観客の拍手が鳴り響き、デルージオは打席を外しました。
そして、その初球。
アウトコースへのスライダーにタイミングが合わなかったデルージオは打ち損じてファウルチップに。それがケイバート・ルイーズの股間を直撃しました。
VTRからでもわかる音。つまり、かなり強いボールが股間を直撃しました。
上記のVTRはファウルチップのシーンだけですが、その後、ケイバート・ルイーズはホームプレート周辺を歩きながら、マスクをグランドに叩きつけるなどしてなんとか痛さを紛らわせておりました。こんな時に出てくるトレーナーは手の施しようがないので、持っているタオルを見ると、切なくなりますね。
その間、数分。5分もかかっておりません。
股間直撃後もプレーを続行!!
ケイバート・ルイーズはプレーを続行しました。
衆目が見ている中もあったのかもしれませんが、さすがにちょっと無理をしすぎたのではないかと思います。
しかも、ケイバート・ルイーズは股間直撃後の4回表に先頭打者として打席に立ち、CF前に抜けようかという鋭い当たりまで放っております。ただ、この打球はアダム・ウェインライトが好捕し、投手ゴロという結果に。
さらに、5回裏2アウトから回ってきた第3打席では、CF前シングルまで放っております。
しかし、ケイバート・ルイーズは6回裏の守備にはつきませんでした。ライリー・アダムス(Riley Adams)にスイッチ。6回表の攻撃は打席が回ってきませんでしたので、5回裏の守備でもう交代が決まっていたのかもしれません。
股間直撃後のプレーが影響したのかどうかまでわかりませんが、医師の診断は上述の通り、「精巣挫傷」。挫傷というのは、表面に傷はないけれども内部組織が損傷している状態です。
現時点では手術については語られておりませんが、そうなるかもしれません。
ミッチ・ハニガーもプレーを続行→手術へ
睾丸への怪我で思い出すのはマリナーズのミッチ・ハニガー。2019年6月6日にバーランダーの投球を自打球で股間に当て、睾丸破裂(testicle rupture:テスティカル・ラプチャー)という衝撃的な大怪我を負いました。ハニガーもその打席は最後まで立っております。
急所直撃も脳震盪くらいデリケートに
ちょっと変な話ですが、割と真面目です。
男のやせ我慢なのか、股間に当たった後は大丈夫とたかをくくってプレーを続けるケースが多いと思います。そのまま退くのは「理由」がかっこ悪いというのもあるのでしょう。ただ、どうやら症状の悪化には時間差があるようです。
おそらく本人の自覚症状から言って大丈夫とも思ってしまうのでしょう。ところが診断すると大怪我に発展するケースが少なくとも直近のメジャー・レベルで2つ起こりました。大きなニュースとなったのは少なくとも2つ。目だなないケースはもっとあるのでしょう。
大昔から急所と呼んでいる箇所なのに、扱いが雑に思います。当たった直後は強制的に退場させるなど、CBAにも謳った方が良いかもしれませんし、脳震盪のようにデリケートに扱った方が良いと思います。お金の話ばかりしているから、こういうケースがなおざりにされるのです。今回のケースでトレーナーの動きを見ても、処置のプロセスが確立されているとは思えないので、医療と連携してそれを確立した方が良いと思います。
自身だけでなく、チームメイトで似たような経験をしている読者も多いと思いますが、とんでもなく大きく腫れ上がるんですよね。びっくりするくらい!!
ケイバート・ルイーズとは?
今回、怪我をしたケイバート・ルイーズについて記しておきます。
Keibert Ruizと書くので、「カイバート」と読むのかと思いましたが、実況は皆「ケイバート」と発音しております。1998年7月20日生まれの24才。ベネズエラ出身で、右投げスイッチ・ヒッティング。
マイナーで3割連発
2014年7月20日にインターナショナルFAとしてドジャースとサイン。翌2015年夏からルーキー・レベルのDSLドジャースでプロキャリアをスタートさせ、16歳にして.300/.340/.387をマーク。
2016年もルーキー・レベルでプレー。56試合で.374/.412/.527をマーク。
2017年はクラスAとクラスA+でプレー。101試合で.316/.361/.452をマーク。
2018年、19歳でダブルAのタルサ・ドリラーズに昇格。しかも、フルシーズンを過ごています。101試合で.268/.328/.401、14ダブル、12HR。
2018年のフューチャーズゲームではワールドチームに選出。シーズン終了後はAFL(アリゾナフォールリーグ)にも参加。
ドジャースの次代の正捕手候補と言われる
2018年オフ、ドジャースは正捕手のヤスマニ・グランダールの残留を強く求めませんでした。おそらく1番の理由はポストシーズンで大苦戦だったため。グランダールの打率はNLDSでは.077、NLCSでは.182、WSでは.200。
そしてもう一つの理由が、ケイバート・ルイーズがごく近い将来に正捕手になると想定したからです。その2年ほどをなんとかできれば長期契約の選手に縛られずに済むと判断したため。
それくらいドジャースから将来を嘱望されていた逸材であったということですね。
2019年はダブルAタルサとトリプルAオクラホマシティを行き来し、両レベルを併せて85試合で打率.261、6本塁打、34RBIをマーク。ただ、トリプルA昇格直後に怪我をし、8月初日でシーズンエンドとなり、9月のコールアップの機会を逃しました。この怪我が無ければ、20才で昇格していたかもしれません。
2020年に21才でデビュー
2020年8月16日、ウィル・スミスのIL入りに伴い、ケイバート・ルイーズはメジャーデビュー。
メジャー初打席で、エンゼルスのフリオ・テヘランからHRを放っています。ただ、2020年は2試合、8打席のみ。シーズンのほとんどをトレーニング・ファシリティーで過ごしました。
2021年はトリプルAオクラホマシティで、51試合に出場。打率.311をマーク。
シャーザーとのトレードでナッツへ
そして2021年のトレードデッドラインでドジャースがナショナルズからマックス・シャーザーとトレイ・ターナーを獲得した交換要員でナショナルズへ移籍。現在に至ります。現地2022年9月8日にバッテリーを組んだジョサイア・グレイとは、このトレードで一緒に移籍して来た仲間です。
今季はおそらくシーズン終了となるケイバート・ルイーズは、112 試合で、.251/.313/.360、二塁打が22、HRが7、RBIが36、盗塁が6。若手捕手なのにこの打撃成績はやはりドジャースが見込んでいた逸材であることを物語っています。
守備の方はCS%が28%で、リーグ平均の24%を上回っております。CS数20は、NL2位で1位のリアルミュートの27の次です。なお、盗塁を許した数はNL3位の51。1位はパドレスのオースティン・ノラで53。これは投手の責任もあります。
KEIBERT RUIZ WALK-OFF PICKOFF pic.twitter.com/upY0AdapnF
— Washington Nationals (@Nationals) June 5, 2022
とにかく、無事に回復することを祈るばかりです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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