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【MLB2025FA】”ファイヤー・ボーラー”佐々木朗希投手のポスティング・プロセスについて

一躍、FA市場の再注目に!!

 千葉ロッテマリーンズが佐々木朗希投手のMLBへのポスティングを容認したことが判明して以来、佐々木朗希投手はMLBの2024-25のFA市場を大きく賑わせています。MLBで大きな関心を寄せられております。

 そんな佐々木朗希投手のMLB挑戦のプロセスですが、これまでのNPB有名選手のポスティングとは違う面があるので、まとめてみました。

一般的なNPB選手のMLB挑戦への契約プロセス

 まずは一般的な例としてNPBの選手がMLBに挑戦する際のプロセスを整理しておきたいと思います。こちらは山本投手のポスティングの際に記載した記事の引用です。

NPB選手のFA権の要件は2つ。

 NPBの選手もMLBの選手のサービスタイム(MLS)と同じように1シーズンを1年と換算する計算があります。NPBの場合は年間145日の一軍登録を1年とし、それに満たない一軍定着前のシーズンが複数あれば合算して累計でカウントされます。そのNPB版のサービスタイムの計算で以下のシーズンを過ごした場合、フリーエージェント権利を有することとなります。FA権利は国内FA権と海外FA権に分かれており、国内が8シーズン、海外が9シーズンとなります。流出を防ぐためにやはり海外の方が長めに設定されております。

  • 国内FA権:8シーズン
  • 海外FA権:9シーズン

9シーズン未満の選手の場合は?

 では9シーズン未満の選手はどうなるのか?というのが次の説明です。

フィルター1:ポスティング

 海外FAの資格を得る前にMLBでのプレーを希望する選手は、「ポスティング・プロセス」という制度を利用しなければなりません。

 日本の球団は11月1日から12月5日の間に選手をポスティングすることができ、それが受領・承認されればMLBのクラブはその選手と交渉することが出来ます。その期間は45日間のウィンドウ。

 選手との契約が決まったMLBのクラブは、日本の所属球団にリリース・フィーを支払うことになります

(リリース・フィー)

  1. $25M未満で合意した場合→20%
  2. $25,000,001〜$50Mで契約した場合
    • 最初の$25Mに対して →20%
    • 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
  3. $50,000,001以上の契約
    • 最初の$25Mに対して →20%
    • 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
    • $50Mを超える部分に対して→15%
  4. 契約にSupplemental Fee(余剰の料金)がある場合、サイニング・ボーナス(契約金)あるいは、Vesting Option(〜を達成すれば$〜)がある場合はそれぞれ15%。
  5. マイナー契約の場合は、契約金の25% + 40manロースターに登録された場合の追加料金が加算されます。

フィルター2:ISBPの考慮

 MLBが外国人選手と契約する場合はフリーエージェントか、日本人選手の場合はFA条件に満たない場合はポスティングシステムを通さなければなりません。

 さらに、NPBの9年未満の選手でポスティングを利用してMLBに挑戦する場合は特例があり、以下の条件をクリアーしていれば、ISBPを考慮しなくて良いということになります。

  1. 年齢は25才以上
  2. 外国のリーグ(=NPB)で少なくとも6シーズン経過

 ISBPとは”International Signing Bonus Pool” (インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール)のことで、海外選手と契約する場合の各クラブの契約金の総額のことです。かつて契約金を釣り上げることで根こそぎいい選手を持っていく場合があったので、公平を期するように各クラブの契約金に上限がかけられている・・・というイメージです。

 年齢、シーズン数が満たない場合、ポスティング+インターナショナル・サイニング・ボーナス・プールいうことになります。

インターナショナル・サイニングの例

 ISBPを理解するために、実際の契約例を過去記事から引用します。と言ってもこれはまだ契約金のトップの範疇のお話であることはご承知ください。

 こちらは2022年1月15日の記事で、同日にインターナショナル・サイニング・ピリオドが解禁日となりました。その初日にレッドソックスは次世代のデバースにあたるような選手達と契約したのですが、その額は3人で計$3.95M。2022年にレッドソックスがこのインターナショナル・プロスペクトとサインするのに割当てられている枠は約$5M。初日にその79%ほどを使ったという話。

 現地2022年1月15日、インターナショナル・サイニング・ピリオドが解禁となりました。この期間は2022年12月15日までオープンとなります。

 その初日、レッドソックスは3名のプロスペクトとサインしました

  • SS フレイリ・エンカーナシオン(Freili Encarnacion/16才): $1.2M / 右投右打/DOM
  • SS フレイミ・デリオン(Fraymi De Leon/17才): $1.1 M /右投げスイッチ/VEN
  • C ヨハンフラン・ガルシア(Johanfran Garcia/17才): $0.65M/ 右投右打/ DOM

 レッドソックスは2022年1月15日から12月15日までのインターナショナル・サイニングの期間に計32名とサイン。$5Mの枠で32名で、このうちトップ2名が$1M超え。ゆえに過半数の選手が$10Kでの契約で最低は$5Kでした。こういう世界です。ただ、契約している選手の年齢は16歳などが大半です。

 ちなみに吉田選手は2022年12月にサインしたのでこの枠の1人ですが、彼はISBPの考慮なしだったので$0です。

佐々木朗希投手のケース

 では佐々木朗希投手のケースを見てみます。

FAではない⇛ポスティング

 まず佐々木朗希投手はご承知の通り、国内FAも海外FAも満たしていません。NPBでのMLSに当たる換算まで調べていないのですが、キャリア4シーズンです。ゆえにポスティングとなるのもご承知の通り。

 改めて見ると、三振の数が驚異ですね!まさにファイヤー・ボーラー。

YearGWLIPHRBBSOERA
2021113263.1516682.27
20222094129.17231732.02
20231574911171351.78
2024181051112321292.35
Total642915394.215885052.10
佐々木朗希投手のNPBでのキャリア(主要成績)

ISBP考慮あり!!

 次に佐々木朗希投手を獲得したクラブのISBPの考慮ですが、これは該当します。

  1. 25才以上か?⇛2001年11月3日(23才)= 未達
  2. 外国のリーグ(NPB)で少なくとも6シーズン経過⇛未達

山本由伸投手のケースとの違い

 契約の形態としては山本投手とは大きく違うことは上述でもおわかりいただけると思います。山本投手はポスティングではありましたが、ISBPの考慮はなし。

  • 山本投手は25才以上か?⇛1998年8月17日(25才)= YES
  • 外国のリーグ(NPB)で少なくとも6シーズン経過⇛YES

 ゆえに12年/$325M (2024-35)もの超巨額契約でサインすることが出来ました。そしてオリックスへのリリース・フィーは$50.625M

佐々木朗希投手:マイナー契約

 佐々木朗希投手はそれこそ、ドミニカ共和国やベネズエラなどからミドル・ティーンでサインして入ってくる選手たちと同じ。こういう選手達はインターナショナルFAとしてマイナー契約でサインということになり、佐々木朗希投手も同じです。

 そして佐々木朗希投手はいわばサイニング・ボーナス(契約金)のみという話です。山本投手は向こう12年間の契約でしたが、そこが大きく違うところでもあります。

かなりおとなしい契約に

 佐々木朗希投手の契約はこれまでのNPBの有名選手のポスティングとは違い、かなり少ない額になります。さらに以下の2条件も額を少なくする要素です。

  1. ポスティング期間が2024年のインターナショナル・サイニング期間に該当
    (インターナショナル・サイニングの時期は2024年1月15日から2024年12月15日まで)
  2. 大半のクラブはISBPを消費

2024年のISBP残り

 もう2024年のインターナショナル・サイニングも終盤なので、かなりのクラブが枠を消費しています。ドジャースが$2.5Mほど残しているというなかなかのツワモノぶりを発揮しています。

 $1M以上を残しているのはわずか4クラブ。

  • ドジャース: $2,502,500
  • オリオールズ: $2,147,300
  • ヤンキース: $1,487,200
  • ジャイアンツ: $1,247,500
  • レッドソックス: $990,000
  • ロッキーズ: $857,800
  • ホワイトソックス: $740,000
  • カージナルス: $672,200
  • タイガース: $620,000
  • Dバックス: $559,300
  • ロイヤルズ: $462,300
  • マーリンズ: $337,500
  • メッツ: $314,000
  • アストロズ: $287,500
  • カブス: $237,200
  • エンゼルス:Angels: $212,200
  • ガーディアンズ: $114,300
  • ナショナルズ: $112,500
  • ブルワーズ: $110,500
  • パイレーツ: $89,800
  • フィリーズ: $42,200
  • レッズ: $35,000
  • アスレチックス: $33,000
  • マリナーズ: $19,500
  • ツインズ: $17,500
  • ブルージェイズ: $12,200
  • パドレス: $2,200
  • レイズ: $0
  • ブレーブス: $0
  • レンジャーズ: $0

ISBPはトレードでもディールされる

 QOを拒否して他クラブとサインした場合、獲得したクラブはISBPの$1Mの枠を失うなどのペナルティーがあります。

 ドジャースは大谷選手を獲得したことで、もちろんその枠を失ってはいるのですが、ISBPはトレードで枠を獲得することが出来るのです。誰かと引き換えにISBPの枠をもらうというふうに。ドジャースの残額がこの段階でも依然高いのはそのため。ちなみに枠をトレードで獲得出来るのは元々割り当てられた額の75%までと決まっています。際限なく増やせる訳ではありません。

ロッテへのリリース・フィー

 千葉ロッテが受け取るリリース・フィーは「マイナー契約の場合は、契約金の25% + 40manロースターに登録された場合の追加料金が加算されます」に該当するので、もしも仮にドジャースが残額の全てをこれに当てたとするなら、以下の金額。

  • $2.5M x 25% =$0.625M

 また、仮に開幕からメジャー・ロスターになった場合は、2025年のリーグ・ミニマムの$0.76M もリリースフィーの考慮の対象となりますが、シーズン途中でメジャー・ロスターに上がってもその日割り分しか該当しません。

 たまにメジャー未経験で契約延長を提示されるケースもありますが、サインしたその年にマイナーのまま上書きすることはないでしょう。よって、リリース・フィーの増額はそれほど見込めないかと思います。

 佐々木朗希投手の契約、どうなるでしょうね?

 お読みいただき、ありがとうございました。

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