ガーディアンズがT・マッケンジーをDFAに
現地2025年4月21日、驚きでもあり、ある意味致し方ないと思えるニュースが入ってきました。
2024年にALセントラルを制し、今季は連覇を狙っているクリーブランド・ガーディアンズが、かつてのトップ・プロスペクトであったトリストン・マッケンジー(Triston McKenzie)をDFAとしました。
DFA後
メジャー・ロスターから外れたトリストン・マッケンジーは1週間以内にトレードもしくはウェーバーにかけられて次にどこで投げるかの結論が出ます。ウェーバーにかけられた場合は48時間以内です。
2025年1月時点のMLSが3.168のトリストン・マッケンジーは調停のステータス。ゆえに2025年のサラリーは最低年俸ではなく、交渉の結果、$1.95Mです。
もしもトレードあるいはウェーバーで獲得したクラブは、そのサラリーの日割り分を引き継ぎますが、開幕してまだ1ヶ月に満たないので、それほど額面を下げることはありません。
そして獲得したクラブはFA権取得まであと2シーズンは支配下に置くことが出来ます。
トリストン・マッケンジーとは
1997年8月2日生まれの27才。2015年アマチュアドラフトのインディアンスの1巡目指名(全体42位)。高卒での1巡目指名です。
2017年からトップ・プロスペクト・ランキングに名を連ねるようになり、MLBパイプラインの評価でPre-2017で57位、Pre-2018で24位、Pre-2019で41位にランクイン。しかし、Pre-2020ではトップ・ランク100からは姿を消しました。
というのも怪我が多く、2018年は広背筋と胸筋を傷めてダブルAで16試合で7勝4敗、ERA 2.68をマークしたのみで、2019シーズンは実践登板がなかったのです。
非常にスキニー
トリストン・マッケンジーは身長が196cmもありながら、体重は公式では74kgとなっていますが、本当に70kg台もあるのか?というくらいスキニーな体型。ボール自体の評価は高かったものの、プロ入り前からスカウトは筋力的な点を懸念してはおりました。このままの体型でビッグリーグ・レベルでパフォーマンスを維持できるのか?と。
ドラフトに踏み切ったのはやはり投球の将来性が買われたのですが、そのうち太るだろうとの楽観視もあったと思います。しかし、太りませんでした。
実際、懸念通り、マイナーでも怪我が多かったわけです。
約2年の実戦ブランクでメジャー・デビュー
実戦登板がダブルAでの2018年8月30日のゲームが最後となっていたトリストン・マッケンジーは突如、メジャーにコールアップされることに。そして現地2020年8月22日のタイガース戦でメジャー・デビュー・・・という嘘のようなデビューを飾ったのです。
背景として、2020年はコロナ・パンデミックでマイナーはキャンセル。そしてMLBも7月終盤の開幕となったのですが、開幕後もCOVID-19 プロトコルという感染防止対策が実行されました。そんな中、インディアンスの先発ローテーションを担っていたマイク・クレビンジャーとザック・プリサックが同プロトコル違反により、ディモート(降格)に。
ローテーションの2人がいきなり消えたわけですから、台所も苦しくなったインディアンスは怪我も癒えてマイナーの施設でトレーニングをしていたトリストン・マッケンジーに白羽の矢を立て、メジャーのマウンドに上げたのでした。
そしてそのデビュー戦で6イニング、80球、BB 1、SO 10という想定外の素晴らしい投球を披露したのでした。まさに衝撃のデビュー戦。ファストボールはMAXでMax97mphを記録。
2020年は8試合中、6試合に先発し、33.1イニングで2勝1敗、ERA 3.24。
2021年にはローテーションを任され、25試合中、24試合に先発し、120.0 イニングで5勝9敗、ERA 4.95をマーク。現地2021年8月15日にはタイガースを相手に8回2アウトまでパーフェクトという投球を見せたこともありました。
素晴らしかった2022年
そしてトリストン・マッケンジーが最も輝いたのが2022シーズン。31試合中、30試合に先発し、191.1 イニングを投げ、11勝11敗、ERA 2.96をマーク。
スキニーな分、4シームのアベレージ・ベロシティーは92.5mph(約150キロ)と数字的にはそれほど強いボールではありませんでしたが、角度があることとカーブ、スライダー、チェンジアップとのコンビネーションで平均的な投手よりもかなり高い確率で空振りを奪い続けました。この時のイニング・イートぶりを見ても、シェーン・ビーバーの次は彼か?というくらいかなりの確率でその将来を約束されたような状態でした。
2024年は別人に
ところが、2023年になり入団当初のスカウトの懸念が大きな形で顕在化。右肘のUCLを傷めたのです。同年はたった4試合のみの登板。
さらに2024年はメジャーのマウンドに復帰したものの、以前とはまるで別人。4シームのアベレージ・ベロシティーは91.1mphにまで降下。威力がまるでなくなったのです。
またBB%も悪化。MLBのBB%のアベレージの8.5%なのに対し、怪我に泣いた2023年は17.8%!2024年は14.4%。 速度低下はHR%にも影響し、2024年のそれは5.6%。
2025年も改善せず
さらに今季の開幕後も改善しておらず、4試合、5.2イニングのリリーフでERAは11.12、BB%は23.3%、HR %は3.3%。
手術回避が招いた低迷の長期化
2023年にUCLの故障が判明したトリストン・マッケンジーはその後、2度もIL入りとなり、低迷が長期化しています。今回、DFAとなったのはもうマイナー・オプションがなかったためで、メジャー・ロスターから外すしかありませんでした。
トリストン・マッケンジーは何人かの医療関係者による手術の勧めにも抵抗し、相当悩んだ末に手術を回避したのは、長期離脱を気にしたからなのですが、肝心のパフォーマンスが回復せず、今でも肘の問題が続いています。これが自信の方にも影響してしまいました。負傷前のコマンドと球速の回復に相当な苦戦を強いられてしまいました。
手術に向かうか?
このDFAにより、マッケンジーが手術に向かうかどうかはまだ決まっていません。
借りにマッケンジーを獲得するチームがあるとすれば、再生にコストを投じることを意味します。例えば、ガーディアンズがシェーン・ビーバーと2年契約(オプトアウト付き)で再契約したように。
ここに来て、それを承諾するクラブが出てくるかどうかはなかなか厳しい状況ではあります。今からトミー・ジョン手術をするとなれば、2026年の大半も失うことになるからです。FAまでの間はキープし、FA後も1-2年はキープする・・・というクラブが出てくればいいのですが。そこまで太っ腹なクラブがあるかどうか。
その意味でもヘルシーな時の彼の実績を信じるクラブが出てくればいいのですが・・・。
どうなるでしょうか!?
CLEはザック・ケントを昇格させる
ガーディアンズはトリストン・マッケンジーの枠にトリプルAからザック・ケント(Zak Kent)を昇格させました。
ザック・ケントは27歳の右腕で、2019年のレンジャーズの9巡目指名でプロ入り。2024年3月のトレードでガーディアンズが獲得。ザック・ケントは肘の故障のために2024年シーズンの大半を欠場。2024年夏にガーディアンズは一旦DFAとし、すぐに新たなマイナー契約で再契約(怪我をした選手をそのままウェーバーにかけることはできない)。
2025年はトリプルAで7.2イニングを投げて失点2でERAは2.35。
もともとは2022年から24年までレンジャーズのトップ30プロスペクトにランクされている投手で力はあります。
トリストン・マッケンジーがどうなるか、その動向が気になります。
お読みいただき、ありがとうございました。
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