2年目復帰を見越したオプションありの1年契約
現地2025年3月8日、デトロイト・タイガースがまたしても動きました。しかも今度はトミー・ジョン手術のりはびちで今季の登板が限りなく少ないことが見込まれるホセ・ウルキディー(José Urquidy)とのメジャー契約です。これには驚かされました。タイガースは結構、渋いという印象があったのですが、ベストシナリオとして2026年の先発ローテーション参加を見込んだ契約となります。
契約内容
タイガースとホセ・ウルキディーの契約内容はご覧の通り。
- 1年/$1M (2025)+ 2026 クラブオプション
- 2025:$1M
- 2026:$4M クラブオプション
- 2026年のクラブオプションのサラリーは2025年に以下の試合数に先発するとアップ(MAX $3Mプラス)
- $0.15M / 4、 7 先発ごとに ($0.3M)
- $0.3M /10, 13, 16, 19 先発ごとに ($1.2M)
- $0.5M / 22, 25, 28 先発ごとに ($1.5M )
ウルキディーの手術は2024年6月
上述のように1年目は$1Mで、2024年に$3.75Mであったウルキディーのサラリーは大きく下がりました。これはホセ・ウルキディーが2024年6月5日にトミー・ジョン手術を実施したためで、余裕をもった復帰は1年6ヶ月であることから、2025年はほぼ当てに出来ず、2026年の復帰を待ち望んでいるという意思表示でもあります。
ただ、経過が良ければ2025年の9月には復帰できるかもしれません。
ロスター調整
ロスターがフルなタイガースですが、ホセ・ウルキディーは加入後そのまま60Days ILに移行。そして同じタイミングで2024年4月にインターナル・ブレイス手術を行った27歳の右腕、ソーヤー・ギプソン=ロング(Sawyer Gipson-Long)も60Day ILへと移りました。
元アストロズ=AJ・ヒンチ監督とも旧知
ホセ・ウルキディーは2019年にアストロズでメジャー・デビューし、2024年までアストロズに在籍。また現タイガース監督のAJ・ヒンチは2015年から2019年までアストロズで監督を務め、例のサイン・スティール問題が発覚したのが、2019年オフのことでした。
当然のことながら二人は旧知の仲であり、2019年にデビューしたホセ・ウルキディーのことも当然知っています。その前からも。おそらく、ヒンチの中ではかなり評価の高い投手なのでしょう。
ホセ・ウルキディーの特徴
ホセ・ウルキディーは1995年5月1日生まれの30歳(2025年の開幕後)。メキシコ出身の右腕。
打てそうで打てない!
その特徴は一言で言うと、打てそうで打てない投手。ノーマルな右腕で4シームの平均ベロシティーは94mphほど。MLBではそれほど速いと呼べる速度帯ではありません。
ところが、かなり厄介な投手で、2021年には20先発で8勝3敗、ERA 3.62、2022年には29試合中28試合に先発し、13勝8敗、ERA 3.94をマーク。2023年は肘の故障もあり、16試合中10試合の先発でERA 5.29と荒れましたが、そうでない限りはERAを3点台に抑えることができる投手。このあたりもヒンチが買っているポイントだと思います。
4シーム以外の球種は94mphほどのシンカー、86mphほどのチェンジアップ、80mphほどのスウィーパー、70mph後半のカーブ。いわゆる横で揺さぶるタイプではあるのですが、チェンジアップとカーブが良いのでホームプレートの前後でも打者を翻弄することが出来ます。ただ、このタイプも強い4シームがあればこそなのですが、2023年は肘を傷めて球速がダウンしたことでERAが悪化したというところです。
WSではめっぽう強い!
ウルキディーを語る上ではポストシーズンの話題を避けることは出来ません。
まずデビュー・イヤーの2019年はALDS,ALCSでショート・イニングでの先発をこなしましたが、ここは無難に切り抜け、すごかったのがナショナルズとのワールドシリーズ。2試合に登板してそのうち1試合が先発で、計5.2イニングでERA 0.00。
2020年はALワイルドカード、ALDS、ALCSに登板。ALDSではやや荒れましたが、レイズとのALCSでは7イニング自責点2で好投。
2021年のポストシーズンレッドソックスとのALCSでは早い回に打ち込まれて荒れましたが、ブレーブスとのワールドシリーズではGm2の先発で5回2失点、Gm5のリリーフで1回無失点とやはり結果を出しました。
2022年はフィリーズとのワールドシリーズにだけ登板。Gm3のリリーフで3イニングをピシャリと封じました。
2023年は不調ながら、ALDS、ALCSに登板。3試合、10イニングでERA 5.40でした。
とにかくワールドシリーズでは無類の強さを発揮し、計4試合に登板(先発2試合)して3勝0敗、防御率1.54! メキシコ出身投手として初めてワールドシリーズで複数勝利を挙げた投手となりました。
コマンドが良い
ウルキディは先発とリリーフの両方をこなし、いずれも安定した実績を残しています。ゲーム終盤まで投げてコントロールを維持する力は、彼の特徴でもあります。
TJ手術は2度目
ウルキディーは実は今回のトミー・ジョン手術はキャリア2度目。1度目はデビュー前の2017年で、手術前の2016年は、クラスAとクラスA+の2つのレベルで計125.1イニングを投げ、ERAは2.94。
術後の2018年はクラスA-とクラスA+の2つのレベルで57.1 IPでERA 2.98でした。
とにかく、与えられた仕事を高品質でこなす・・・そんなイメージのある投手です。
タイガースのローテーション
現在、リハビリ中ということでウルキディーは2025年の開幕ローテーションの構想からは当然外れています。
現時点のタイガースのローテーションは、ご覧の様相です。
- タリク・スクーバル:LHP (2024 ALサイ・ヤング賞)
- ジャック・フラハーティ
- リース・オルソン
- ジャクソン・ジョーブ
- ケイシー・マイズ
6人ローテーションで残り1枠を彼らで争っている状況。
- ケイダー・モンテロ
- マット・マニング
- 前田投手
上記3人の中でスプリング・トレーニングでもっとも良い結果を出しているのが前田投手。ケイダー・モンテロとマット・マニングはまだチューンナップ中というところです。
タイガース、非常に高レベルなローテーション争いとなっています。秋には誰かがへばってきますから、ここでホセ・ウルキディーが最後の1ヶ月の救世主になるというシナリオもあります。
なお、ホセ・ウルキディーがリハビリの状態がよくなかった場合、1年目終了でオプション拒否というワーストのシナリオもありますが、しっかりと仕事をするウルキディーのことですから、リハビリもしっかりとこなし、きっと復活してくるでしょう。なにか、「気合の入った投手!」そんなイメージのあるホセ・ウルキディーです。
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント