佐々木朗希投手、最有力候補だったLADへ
現地2025年1月17日、ポスティング期限の1月23日を前に佐々木朗希投手が所属先を決定。パドレス、ブルージェイズが猛追したものの、結果的に以前から噂されていた最有力候補のロサンゼルス・ドジャースに決まりました。
これは現時点ではオフィシャルではなく、23日までに詳細が出るとされています。
LAD、いくら注ぎ込んだ?
23歳の佐々木朗希投手のMLB入団のプロセスは山本由伸投手らとはまた違うことは下記の記事にもしたためております。要はインターナショナル・サイニング・ボーナス・プール(ISBP)の対象であり、中米のミドル・ティーン、ハイ・ティーンの選手たちとの契約と同じ。
さらにはインターナショナルFAの解禁日にサインとなった桐朋高校の森井祥太朗投手とも同じ枠です。佐々木投手の場合はプロ経験があるので、手続きは違うのですが、入る枠は同じでマイナー契約。
要は、ISBPの枠内での契約になるということ。
各クラブのISBP
各クラブの2025年のISBPの一覧はこちら。
- $7,555,500: アスレチックス、ブルワーズ、マリナーズ、マーリンズ、レイズ、レッズ、タイガース、ツインズ
- $6,908,600: Dバックス、ガーディアンズ、オリオールズ、パイレーツ、ロッキーズ、ロイヤルズ
- $6,261,600: エンゼルス、ブルージェイズ、ブレーブス、カブス、メッツ、ナショナルズ、パドレス、フィリーズ、レンジャーズ、レッドソックス、ホワイトソックス、ヤンキース
- $5,646,200: アストロズ、カージナルス
- $5,146,200: ドジャース、ジャイアンツ
ドジャースは贅沢税超過などがあって減額され、$5,146,200。これに加えてトレードで60%まで枠を増やすことが出来、MAXで約$8.2Mまで増やせます。
- ドジャースの制度上のMAXのISBP枠
- $5,146,200 + 追加の60%($3,087.720) = $8,233.920=約$8.2M
ほぼ全枠+アルファ
現時点での情報ではドジャースは佐々木朗希投手に、$6.5Mのサイニング・ボーナスを提示すると言われていますが、そうであれば枠の全額+増額でのディールということに。
最終的な額はこちらに追記します。
増額のトレード
1つわかっているのはドジャースは10代のプロスペクト達との口約束のいくつかを失効させたということ。スカウトは解禁日前に動いていますから、そうなります。ここはその選手たちには非常に気の毒なので、他のクラブでチャンスを貰えれば良いのですが・・・。
そしてドジャースは1つISBPの増額のディールを決めています。22歳の右投げ右打ちのOFで2023年のドジャースの4巡目指名のディラン・キャンベル(Dylan Campbell)をフィリーズにトレード。フィリーズからは$0.75Mあるいは$1Mのプールを獲得してます。額は定かではありません。
- $5,146,200 +$1M or $0.75Mで $6.15M or $5.89M
いずれにせよ、もう枠内の全額での投資ということになりそうです。
もし彼が25歳になるまで待っていたら、山本投手とのディールに匹敵するくらいの額になったと思われます。
パドレス、及ばず!
パドレス、ブルージェイズ、ドジャースがファイナリストと言われた段階で、筆者はパドレスに決まるのでは?などと勝手に予想していました。なによりダルビッシュ有投手の存在がありましたから。
WBCでの投手陣のまとまりを見ても、ダルビッシュ有投手に人を惹きつける力があるのは明白ですし、佐々木朗希投手の今後の課題についても相談に乗ってもらえると思ったからです。メンター的存在ですね。
ドジャースの良さ
ただ、ドジャースはタイラー・グラスノーが佐々木朗希投手に電話し、ドジャースのメリットなども説いたと言いますし、同郷の大谷選手やあるいは山本由伸投手からもなんらか言葉があったことも容易に想像できます。
決め手はそれこそエージェントのジョエル・ウルフ氏が明かさなければわかりませんが、ドジャースはそれこそ野茂投手時代からの実績がありますし、なによりムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンら人材の宝庫であり、勝率.500近辺の80敗を喫したのは2005年が最後という恐ろしいほどの強さを継続。そういうのは資金だけでなくていいカルチャーがないと出来ないことです。色々な人が関わる中でそれがキープ出来ているのはいつも誰かが良い考えを持ち、良い行動をしているということ。今は大谷選手がそのリーダー的存在なのでしょう。足首の怪我を押してポストシーズンを戦ったフレディー・フリーマンもそうです。良いカルチャーに身をおけることは何よりありがたいことです。
TOR、増額も及ばず
なお、ブルージェイズは$6,261,600のIBBPを持ちながら、なんと増額も実施。
TORの増額トレード
ガーディアンズからOFのマイルズ・ストロー(Myles Straw)をトレードで獲得。代わりにガーディアンズから$2MのISBP枠を獲得し、佐々木朗希投手のディールに備えました。しかし、ディール成立ならず。ブルージェイズは過去2シーズンだけで、大谷選手、フアン・ソト、コービン・バーンズそして粉回の佐々木朗希投手とFAの注目選手とのディールに立て続けに敗れております。
トロントに行けば、ニューヨークなどと比べてマスコミ対策は楽になったというメリットもあったのですがね。
ドジャースのメリット
ドジャースは佐々木朗希投手を獲得したことで戦力面だけでなく、金銭面でも大きなメリットがあります。
まず2025年にメジャーロスターに入っても向こう3年はリーグミニマムで良く、その後の3年間も調停ステータスでサラリーを抑えることが出来ます。この6年は大きいです。
大谷選手、ムーキー・ベッツ、フレディー・フリーマン、山本由伸投手、ブレイク・スネルと破格のマルチイヤー・ディールで獲得した選手が多いドジャースは親会社のグッゲンハイム投資グループが卒倒するほど稼いでいるので資金繰りの心配はないという堅牢な財務体質を誇りますが、それでも贅沢税は大幅超過を継続中。2025年もすでに予測では$360Mのペイロールを計上。
大谷選手をはじめ複数の選手が繰り延べ払いを実施してなんとか下げようと努力しているところです。ゆえに佐々木朗希投手のこのサラリーは贅沢税上のペイロールをセーブする上でも非常に大きいのです。
契約延長で上書き!・・・の抜け道なし
たまにメジャー未達、あるいはメジャーに到達するもまだまだ調停のステータスまで行っていない選手の契約延長が行われます。
今回の佐々木朗希投手のディールで思ったのは一旦はISBPの金額でサインしておいて、その直後に上記リンクのような延長契約で上書きすれば、それこそ山本由伸投手のような額にはならずとも多少なりとも増額できるのでは?ということでした。
しかし、MLBのルールでは、ドジャースと佐々木投手がボーナスプールの制限を回避するために契約延長に関して何らかの合意に達することは禁止されているのです。
両者の契約延長がいつになるかは公式には決まっていないのですが、今すぐに非公式な長期契約を結ぶことはできないのです。よってISBPあるいは+60%の増額がMAXということに代わりはなく、向こう3年はリーグミニマムのサラリーです。
ドジャースのローテーション
現時点でもドジャースのローテーションの凄さが見てとれます。
ウォーカー・ビューラーは出ていき、ジャック・フラハーティーはまだ未契約ですが、すでに大谷選手、山本投手、タイラー・グラスノー、ブレイク・スネル、トニー・ゴンソリン、そしてダスティン・メイらの名前が。ダスティン・メイは怪我の回復具合が微妙ですが、カウントしておいても良さそうです。ここに佐々木朗希投手が加わります。さらにランドン・ナック、ボビー・ミラーも。
クレイトン・カーショウの再契約も近いでしょう。ここに手術などで2025年は離脱しているギャビン・ストーン、エメット・シーハン、カイル・ハート、リバー・ライアンが翌年には加わります。
佐々木投手の耐久性の課題
とは言え、佐々木朗希投手はNPBでの4シーズンの登板イニングは平均で100イニングを下回りました。2024年は18試合に登板して111イニングを投げたものの、斜角筋断裂と肩の疲労という2つの怪我を経験。
まだまだメジャーのフルシーズンでの登板は難しい状況です。これに対してドジャースは100-150イニングをなんとかクリアーしてもらうべく、これから調整させていくようです。
ドジャースはタイラー・グラスノーもフルシーズンで稼働したことがなく、134イニングを超えたシーズンがありません。山本投手も初年度は腱板損傷により18試合の登板にとどまり、ブレイク・スネルも130イニングを超えたことが2度しかありません。大谷選手、トニー・ゴンソリン、ダスティン・メイは大きな手術からの回復のために2024シーズンの登板はありませんでした。
もし、安定的なローテーションの数が足りなくなっても、2024年方式で複数の投手でカバーしていくしかなさそうです。
なお、千葉ロッテへのリリース・フィーは20%にとどまるため、正式な金額がわかればここも更新します。仮に$6Mの契約なら20%だと$1.2M。円換算で1.87億円ほどになります。
お読みいただき、ありがとうございました。
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