双方合意へ
現地2024年4月6日、スティーブン・ストラスバーグの引退が決まったとの報道がありました。かつて、2023年9月に引退会見の予定まで組まれていたものの、キャンセルになった経緯があり、少し様相を見守っていたのですが、現地2024年4月7日、スティーブン・ストラスバーグ本人から公式の引退コメントが寄せられたことから、今回は双方合意で正式に引退ということになりました。
ナッツに感謝のコメント
”The Athletic”でMLBライターとして活躍するブリット・ギロリ(Britt Ghiroli)さんが投稿したストラスバーグの引退コメントです。
Statement from Stephen Strasburg on retiring: https://t.co/Vr5ecoXitl pic.twitter.com/zAgpQ8VqEk
— Britt Ghiroli (@Britt_Ghiroli) April 7, 2024
印象的なのは下記のコメントではないかと思います。
“I realized after repeated attempts to return to pitching, injuries no longer allow me to perform at a Major League level”
「マウンドに復帰しようと繰り返し努力してきたが、怪我はもはやメジャーリーグ・レベルで投げることを許さなかった。」
ここまでの経緯
正式引退までの経緯は以下の記事にまとめてあります。簡単に言えば、契約残をめぐる争いによって頓挫した引退が2024年4月7日に正式に決まったということでもあります。
流れで行くと、
- 2023年8月に引退に向けて動く
- GMリッゾと残り期間満額の条件で合意
- 2023年9月に引退会見を予定
- オーナーが残り期間の支払い条件変更を打診
- 引退会見取りやめ
- 非公式に双方で話しI合い
- オフの間もアクティブ・ロスター扱い
- 双方合意=全額支払い(=もともと繰延払いありだったが、割合が変化したと見られている)
- 2024年4月7日、正式に引退
日常生活にも支障
ストラスバーグが最後に登板したのは2022年6月9日のマイアミ戦。このゲームでは4.2イニングで被安打8、失点7、BB 2、HR1と本来の投球とは程遠い内容でした。
2020年8月に2試合登板後に、手根管症候群でシーズン・エンディングへ。
2021年に4月から6月にかけ、5試合に登板した後に再度離脱。胸郭出口症候群の手術を行いました。前年の手根管の手術もこちらが怪我の本丸だったのかもしれません。ストラスバーグが行った胸郭出口症候群の手術は恐ろしいことに肋骨1本と首の筋肉2本を切除するものでした。壮絶な神経痛のため、MLBレベルどころか野球が出来ない状態で、さらにはドアを開けたり幼い子供を抱き上げたりといった日常的な動作にさえ支障をきたしていた状態であったと言われています。
ストラスバーグはシャイな性格なのですが、仮に今表に出てくれば相当痛々しい姿で現れるのではないか?と思われます。怪我は非常に気の毒な状態です。
メガディールが潰える
ストラスバーグは上述のように非常に気の毒な状態であるという反面、厳しい見方もあります。それは7年/$245M (2020-26)で契約したにもかかわらず、新契約に移行してからは、8試合、31.1 IPで1勝5敗のみの登板であったこと。2020年は短縮シーズンで満額ではありませんが、AAVで$35M x 7年です。そして問題となった契約残は2024年も含めてあと3年分もあるということ。実績が公平性を担保するベースとなるなら、この辺りがそれほど共感性を呼ばない面でもあります。
未公開の繰延
もともと繰延払いが入っていたストラスバーグの契約ですが、今回はナッツも契約通り支払うことに合意。ただし、その繰延払いの割合は相当増えているのではないかと推測します。その金額は明らかになっておらず。
双方ともに前へ
ストラスバーグはこれからも神経痛との戦いが続きます。ただ、プレーできてきていないという圧からは開放されたのではないかと思います。
またナッツもストラスバーグをロスターに残しておくことで潰れてしまう1枠分を確保。そして繰延払いになることで、贅沢税の計算も軽減されることになり、双方ともに前に進むこととなりました。
ナッツがこの契約を結んだのは2019年にストラスバーグがワールドシリーズ優勝に大きく貢献し、ワールドシリーズMVPを受賞した後。2019年はレギュラーシーズンで209イニングを投げてNLをリードしながらERA 3.32という素晴らしい成績を残し、ポストシーズンでは36.1イニングを投げ、ERA.98という圧倒的な投球を見せました。この大きな貢献の後、FA市場に出て価値を探ったストラスバーグは上述の契約でナッツと再契約。FAイヤーで最高の成績を残せばこのようなメガディールとなる典型でもあります。
もともと怪我が多かったストラスバーグに対してナショナルズは高い保険料を危惧して保険に入らず。これによって今回の支払いで色々ともめた訳ですが、なかなか将来性を見抜くのは難しいですね。
ストラスバーグのこれまでのキャリアは、上述の引退記事でかなり熱を入れて書いたのでそちらをご参照ください(もう一度リンクを貼っておきます)。
晩年、怪我によってキャリアを棒に振りましたが、MLBで3度のオールスターに出場、1,470イニングを投げてERA 3.24(ERA+127)、FIP3.02をマーク。レギュラーシーズンで247試合に登板し、113勝62敗、ポストシーズンでは、55.1イニングでERA 1.46、SO%が32.6%という驚異的な数字を残した偉大な投手でもありました。
神経痛が治ることを祈ります。
お疲れさまでした。
【YOUTUBE】Stephen Strasburg retires after 13 seasons | Career Highlights of 3-time All-Star & World Series MVP
お読みいただき、ありがとうございました。
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