メリフィールド、今季の苦戦が響く
現地2024年7月12日になりますが、フィラデルフィア・フィリーズは内外野を守れるユーティリティー・マンでオールスターに3度出場したウィット・メリフィールド(Whit Merrifield)をリリースしたと発表しました。
メリフィールドのロスター・スポットにはウェストン・ウィルソン(Weston Wilson)をコール・アップ。ウェストン・ウィルソンは右投げ右打ちの29才のユーティリティー(LF/2B)です。
今オフ、FAでサイン
フィリーズは現地2024年2月16日にウィット・メリフィールドと1年/$8M 保証(2024) でサイン。非常に頼もし過ぎるバックアップ・ロールとしての補強でした。
今季は大苦戦
もともとは開幕前の2月はじめにブランドン・マーシュが左膝の内視鏡手術を実施し、3-4週間の離脱が決定したことによる補強でした。開幕に間に合うかどうかの微妙な時期での手術で結果的にはマーシュは間に合い、3月29日のアトランタ戦から先発出場しました。
よって、そもそもの補強がかなり手厚すぎるリスクヘッジというところでした。というのもウィット・メリフィールドの実績から考えて、彼でさえバックアップ・ロールか?という選手でしたから。メリフィールドの実績については後述します。
メリフィールドは、4月は途中出場も含めて2日に1度のペースで出場。4月は43-9でAV.209、OBP .244、SLG.302。ベテランゆえ、スロースタートもあり得ることなのでここは様子見されていました。
トレイ・ターナーの離脱で出場機会増も・・・
5月に入り、3日のジャイアンツ戦でトレイ・ターナーが左ハムストリングスを傷めてしまい、6週間ほどの離脱が決定。
これにより、フィリーズは内外野をどうにかやり繰りして、ウィット・メリフィールドにも力を貸してもらおうとしました。本業の2Bを多めに、3BあるいはLFでの出場機会を得ました。ところが、5月はさらに成績が悪化。55-9でAV.164、OBP .281、SLG .273。
良いシナリオの場合、バックアップ・ロールのプレーヤーがしこたま活躍して、本来のレギュラーが帰ってきた時に起用に悩むというくらいに活躍というのが理想的なのですが、メリフィールドはここで調子が上がらなかったのです。
そして6月の成績がもはや決定打となってしまいました。40-8でAV.200、OBP .304、SLG .275。
メリフィールドは7月10日のドジャース戦がフィリーズの最後の試合となってしまいました。
今季の成績は53試合で、156-31、AV.199、OBP .277、SLG .295、HR 3、RBI 11、RUN 21、BB15、SB 11、SO19。厳しい結果となりました。
DFAを経ずにリリース
今回のフィリーズはいきなりリリースした訳ですが、実はそれなりに親心のある処置でもあるとも言えます。
DFAとなると、手続きとしては一旦はアンコンディショナル・リリース・ウェーバーにかけることになり、5日間の公示もありますし、仮に手を挙げたとなると獲得したクラブは残りサラリーを引き継がなければなりません。
また、メリフィールドは最低100球のインプレーをした322人の選手の中で、平均出力速度が83.0マイルで最下位だったというデータも残りました。
残りサラリーはMほど
上述でウィット・メリフィールドの契約は1年/$8M保証と書きましたが、正確に書くと2024年のサラリーは1年/$7M (2024)。2025年はクラブオプションで$8Mで、それを行使しない場合はバイアウトとして$1Mが支払われるという内容。よって、計8Mとなるわけです。
2024年のサラリーの残りは$3.01M程度ということなっており、これを今季の実績で引き継ぐクラブはほぼないと見ていいでしょう。ウェーバーの公示期間で時間もかかります。そうであるなら、ここでリリースした方が次に獲得するクラブはメジャー最低年俸の日割りのみで良いことになり、獲得のハードルが低くなり、メリフィールドにとってもチャンスが出て来る訳です。
フィリーズは残債+バイアウトの$1Mを払い、仮にメリフィールドがどこかと契約すれば、メジャー最低年俸の日割り分だけ差し引かれます。言って見れば、フィリーズはメリフィールドのほとんどのサラリーを払いながら、彼にチャンスを与えているとも言える訳です。
かつては右打者で200安打超え!
遅咲きのメリフィールドは、ロイヤルズで2016年、27歳のシーズンを迎えるまでメジャーに到達せず。2015年にワールドシリーズ・チャンプとなったロイヤルズには、SSにアルシデス・エスコバー、2Bにはオマール・インファンテ、3Bにはマイク・ムスターカス、OFもロレンゾ・ケインがCFにいて、アレックス・ゴードンがLFにいましたから、ちょっと出場機会がなかったというのがその原因になるかと思います。
ただし、デビュー後はほとんど即座にと言っていいくらいにロイヤルズのロースターに定着。それだけでなく、リーグで最も安打を放ち、かつ盗塁でもNO.1を取るほど素晴らしい選手となりました。 2016年から20年にかけて、メリフィールドは.295/.342/.445、58 HR、119 SBを記録。2018年と2019年には安打数でメジャーをリードしたほか、2017年、2018年、2021年には盗塁数でアメリカン・リーグをリードしました。
打つわ、走るわ、しかもユーティリティーだわとどうして遅咲きだったのか?というくらいの素晴らしい選手でした。
2Bにパワーのないクラブは結構ありますので、メジャー最低年俸の日割りなら喜んで手を挙げるクラブは出てくるでしょう。そして、怪我がないならそこで結果を出せば、メリフィールドもまた復活できる可能性があります。
追記:ATLがサイン
リリースとなったウィット・メリフィールドですが、現地2024年7月22日、アトランタ・ブレーブスが獲得するに至りました。オジー・アルビーズが8週間、離脱する見込みであるのが決定打になりましたね。まさかPHIのライバルに行くことになるとは、不思議な縁でもあります。
フィリーズはOAKのあの人を狙う?
この2週間はフィリーズにとって、結構重要な期間になるかもしれません。
7月30日のトレード・デッドラインに向け、26人のアクティブ・ロースターをどのように改善するのか?ポイントは右打席のOFそしてリリーバー。
現地2024年7月12日の時点でのフィリーズのOFポジション別のOPSを見てみると、LFが.679でMLBで20位、CFが.613でMLB 23位、RFが.691でMLB17位。RFはニック・カステヤーノスがいるので若干ましですが、手厚い攻撃力を誇るフィリーズであっても、ここが攻撃のウィーク・ポイントには違いありません。
とくにLHPを打てるOFは補強のポイントになりそうです。この点はブランドン・マーシュでさえも黄色信号。
(フィリーズOFのvs LHPのAVG & OPS)
OF | PA | AVG | OPS |
---|---|---|---|
メリフィールド | 84 | .190 | .567 |
B・マーシュ | 54 | .149 | .392 |
C・パチェ | 73 | .210 | .635 |
ヨハン・ロハス | 62 | .186 | .417 |
ヨハン・ロハスはその守備力が素晴らしく、彼がいるだけで投手はかなり助かるのですが、いかんせん打撃がかなり厳しく、右打席でありながらLHPには苦戦しています。
OFで右打席でしかも長打力のある打者が一人います。それがアスレチックスのOF/DHのブレント・ルッカー。2023年に30HRを放ち、今季は.287/.365/.550、19 HR。
2024年がMLS3をカウント中のブレント・ルッカーに対してアスレチックスはまだ3シーズンの支配権が残っています。アスレチックスはそろそろサラリーが高くなって嫌がる頃。
アスレチックスが新フランチャイズの顔に彼を置くのか?あるいはもう放出するのか?ここは見ものですよ。放出するなら、フィリーズにどのような見返りを要求するのか?というところですね。
ただし、アスレチックスが現時点でブレント・ルッカーをトレード対象にしているかと言えば、そうではなく、もしもフィリーズが動くとなれば、他クラブも動きそうですね。大谷選手がいるところとか。もっともそこは先発投手が優先かと思いますが。
メリフィールドのリリースがこのようなところまでつながっています。
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント