ほぼ半数のクラブがコンタクト!
今オフ、ポスティング・システムを利用してMLBに参戦する山本由伸投手。日本シリーズが明けた11月6日にはオリックスがMLBにポスティングの申請手続きを完了。現地2023年11月20日、MLB側から正式にポスティング手続きの承認されました。
30クラブとの交渉のウィンドウは現地2023年11月21日から現地2024年1月4日3PM(東部時間)まで開くことになります。 現地2023年11月24日時点ではすでに半数以上のクラブがコンタクト済みとのことです。まさに殺到中です。
【訂正】WINDOW OPENは45日間
「ポスティング・ウィンドウは通常は30日。11月21日からだと12月20日がそれになりますが、1月4日が締切となっているのは推測ですが、なんらかの休みの期間を抜いているからだと思われます。」と記事投稿当初は書かせていただいたのですが、どうやら45日に変更になったようです。失礼しました。
30日だったのは前の交渉期間で、以前は$20Mを払う意思があるクラブだけが交渉出来、その期間が30日だったのですが、45日に修正となっています。
一般的なNPB選手のMLB挑戦への契約プロセス
まずは一般的な例としてNPBの選手がMLBに挑戦する際のプロセスを整理しておきたいと思います。
NPB選手のFA権の要件は2つ。
NPBの選手もMLBの選手のサービスタイム(MLS)と同じように1シーズンを1年と換算する計算があります。NPBの場合は年間145日の一軍登録を1年とし、それに満たない一軍定着前のシーズンが複数あれば合算して累計でカウントされます。そのNPB版のサービスタイムの計算で以下のシーズンを過ごした場合、フリーエージェント権利を有することとなります。FA権利は国内FA権と海外FA権に分かれており、国内が8シーズン、海外が9シーズンとなります。流出を防ぐためにやはり海外の方が長めに設定されております。
- 国内FA権:8シーズン
- 海外FA権:9シーズン
2023年の場合、国内FAの有資格者は広島の西川選手(すでにオリックス入りが決定)、オリックスの山﨑 福也投手ら5名。海外FA権の有資格者は楽天の松井裕樹投手ら2名となっています。
9シーズン未満の選手の場合は?
では9シーズン未満の選手はどうなるのか?というのが次の説明です。
フィルター1:ポスティング
海外FAの資格を得る前にMLBでのプレーを希望する選手は、「ポスティング・プロセス」という制度を利用しなければなりません。
日本の球団は11月1日から12月5日の間に選手をポスティングすることができ、それが受領・承認されればMLBのクラブはその選手と交渉することが出来ます。その期間は30日間のウィンドウ。
選手との契約が決まったMLBのクラブは、日本の所属球団にリリース・フィーを支払うことになります
(リリース・フィー)
- $25M未満で合意した場合→20%
- $25,000,001〜$50Mで契約した場合
- 最初の$25Mに対して →20%
- 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
- $50,000,001以上の契約
- 最初の$25Mに対して →20%
- 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
- $50Mを超える部分に対して→15%
- 契約にSupplemental Fee(余剰の料金)がある場合、サイニング・ボーナス(契約金)あるいは、Vesting Option(〜を達成すれば$〜)がある場合はそれぞれ15%。
- マイナー契約の場合は、契約金の25% + 40manロースターに登録された場合の追加料金が加算されます。
フィルター2:ISBPの考慮
MLBが外国人選手と契約する場合はフリーエージェントか、もしくは日本人選手の場合はそれにプラスして上述のポスティングシステムを通じて契約しなければなりません。
ISBPとは”International Signing Bonus Pool” (インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール)のことで、大雑把に説明すれば、海外選手と契約する場合の各クラブの契約金の総額のことです。かつて契約金を釣り上げることで根こそぎいい選手を持っていく場合があったので、公平を期するように各クラブの契約金に上限がかけられいる・・・というイメージです。
ただし、NPBの9年未満の選手でポスティングを利用してMLBに挑戦する場合は特例があり、以下の条件をクリアーしていれば、ISBPを考慮しなくて良いということになります。
- 年齢は25才以上
- 外国のリーグ(=NPB)で少なくとも6シーズン経過
- 年齢、シーズン数が満たない場合、ポスティング+インターナショナル・サイニング・ボーナス・プールということになります。
山本投手のケース
では山本由伸投手のケースを見てみます。
FAではない⇛ポスティング
まず山本由伸投手は9シーズンの海外FA権を満たしているかと言えば満たしておりません。
山本由伸投手は2007年にデビュー。ファイナルとなった2023年まで計7シーズン、オリックスに在籍していました。2017年は5試合の登板にとどまったものの、2年目の2018年にはリリーフとして54試合、53.0IPに登板しておりそれ以降はほぼフルシーズンの活躍です。NPBのMLBでいうところのサービスタイム(MLS)の換算で少なくとも6シーズンは満たしていると見ていいでしょう。
ちなみに、MLBへ行くかどうかは所属するオリックスとの交渉で決まったということになります。
ISBPはなし!!
次に獲得した山本投手と契約したMLBのクラブがISBPを削られるかどうか?ですが、
- 25才以上か?⇛1998年8月17日(25才)= YES
- 外国のリーグ(NPB)で少なくとも6シーズン経過⇛YESかと。
1の年齢はクリアーです。2に関しても6シーズンはクリアーかと。つまり、獲得するクラブはISBPを削られることなく、リリース・フィーのみの考慮で良い!ということになります。
実際、色々とソースを当たってみたのですが、ISBP(インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール)についての記載はありませんでした。
条件としては菊池雄星投手、筒香選手、鈴木誠也選手そして同じオリックス出身の吉田正尚選手らと同じということになります。
海外FA権を取得してMLBに挑戦したのは、秋山選手と千賀投手です。
制限が一つ外れたというのが非常に大きいので、現状で関心が殺到しているところです。
早期にマークしたのはボストン!
その山本由伸を早期からマークしていたのがボストン・レッドソックス。ヤンキースのキャッシュマンGMが千葉ロッテ戦での9月9日のノーヒッターのゲームに出くわしたことが話題となりましたが、レッドソックスはもっと前からのマーク。かなり有利と見られていたレッドソックスでしたが、上述のようにヤンキースを始めすでに半数以上のクラブがコンタクト済み。11から14クラブと言われています。レッドソックスの他にはドジャース、ヤンキース、フィリーズ、Dバックス、カブス、メッツなどがかなり熱心なようです。
吉田選手はポスティング承認1日で決まりましたが、山本由伸投手の場合は時間をかけそうですね。良い選択となるように祈るばかりです。
【YOUTUBE】Coveted free agent Yoshinobu Yamamoto is NASTY on the mound! Who lands the former NPB star?
お読みいただき、ありがとうございました。
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