リック・ハーン、ケニー・ウィリアムス解任後
現地2023年9月1日、シカゴ・ホワイトソックスは新GMに元プレーヤーのクリス・ゲッツ(Chris Getz )が就任したと発表しました。
正式なタイトルは、ベースボール・オペレーションのシニア・バイス・プレジデント兼ジェネラル・マネージャー(senior vice president and general manager)。
クリス・ゲッツはこれまでアシスタントGMに就いており、今回は内部昇格です。
ホワイトソックスは前週となる8月23日に、長年編成のトップを務めてきたリック・ハーン(Rick Hahn)とケニー・ウィリアムス(Kenny Williams )を解任。リック・ハーンはジェネラル・マネージャー、ケニー・ウィリアムスはエグゼクティブ・バイス・プレジデントでした。
今回のクリス・ゲッツは2人のポジションを兼任する形となり、権限の範囲も広くなることから今後の編成を大きく担う形となっています。
低迷ムードのクラブの一新を担う
かつて綺羅星のように輝くプロスペクト達を擁し、それこそ2023年には黄金期を迎えるのではないか?と見られたホワイトソックスですが、そもそものケチが就き始めたのは2020シーズンのこと。
短縮シーズンとなったこの年にホワイトソックスは35勝25敗で、ALセントラル3位ながら、ワイルドカード・シリーズに進出。
そのワイルドカード・シリーズでは才能溢れたプロスペクトが数多くいるホワイトソックスがまずは先勝。
ところが、ティム・アンダーソンなどはかなり調子に乗った発言などをしていて、結局、Game2、Game3でアスレチックスに連敗し、シリーズ敗退。
この早期敗退に激怒したオーナーがリック・レンテリアを解任。
リック・レンテリアは2017年に監督に就任。弱い時期を経験してそれこそこれから軌道に乗せるという時期でもありました。この早期敗退は完全に舐めてかかった選手の責任だったのですが、監督がスケープゴードにされてしまいました。
ティム・アンダーソンは今季、ホセ・ラミレスに右フックを喰らいましたが、この頃からその芽はあったということですね。3年経って顕現化したということのように思えます。
そして、若造どもに重しをということで選んだのはトニー・ラルーサ。オールド・スクールから選出したというのは良かったのですが、いかんせんラルーサは健康に大きな問題を抱えていました。
それでも2021年は93勝69敗でALセントラルを制覇。ただ、ALDSでアストロズに3勝1敗で敗戦。これはもう完敗というレベルでした。
そして、2022シーズンは2位になったとは言え、81勝81敗で勝率.500。ラルーサも采配にキレがなく、観客から選手交代を促進されてアンパイアーに告げに行くという事態も。結局、ラルーサも任期をのこして退団。
迎えた2023シーズン。ペドロ・グリフォルを新監督に迎えたホワイトソックスでしたが、今季の成績は現地2023年9月1日時点で、53勝82敗で、ALセントラル4位。首位ツインズとは17.0ゲーム差。
得失点差は、RUN 560に対し、Run Allowedは696で-136。投壊でもあるのですが、打線も打っていません。560得点はALセントラルでは2位の得点力なのですが、ALイーストなら最下位のヤンキースの571点にも及ばず、ALウエストでは上位4クラブが640以上なので、完敗です。
このような状況でトレードデッドラインでは、売りに転じ、ルーカス・ジオリトやジェイク・バーガーらを移籍させることに。
クリス・ゲッツとは
新しくGMに就任したクリス・ゲッツは、1983年8月30日生まれで40才になったばかり。非常に若いGMです。そして、元プレーヤーです。現役時代は2Bで右投げ左打ち。
現役時代
高卒時の2002年にホワイトソックスから6巡目指名を受けるも、大学へ進学。2005年のアマチュア・ドラフトで再びホワイトソックスから指名を受けてプロ入り。4巡目での指名でした。
2008年に24才のときにメジャー・デビュー。2009年には107試合に出場し、.261/.324/.347をマーク。2008年終了後に、ホワイトソックスがマーク・ティーエン(Mark Teahen)を獲得したトレードで、野手のジョシュ・フィールズとともにロイヤルズへ移籍。
ロイヤルズでは2010年から2013年まで在籍。4シーズンで、.248/.305/.295。キャリアの大半はここで過ごしました。
そして2014年、トロントでプレーし、現役を引退。
通算成績は、7シーズン、459ゲーム、352安打、打率.250、OBP .309、SLG .307、HR 3、二塁打 50、RBI 111、Run 176、SB 89。
引退後
2014年5月に現役引退後は、ロイヤルズのベースボール・オペレーションのプレーヤー・ディベロップメント・アシスト(選手育成のアシスト)で2年間過ごしました。
2016年10月にホワイトソックスがロイヤルズが引き抜き、2017年から20年までアシスタント・GMに昇格するまでの間、プレーヤー・ディベロップメントの新しいディレクターを務めました。
特に、マイナーリーグ・システムとドミニカ共和国にある同クラブのアカデミーの日々の運営を監督。また、選手の評価や契約交渉も担っておりました。
いわば、今成熟期を向かつつあるクラブの骨子となる選手たちをプロスペクト時代から見てきた人物と言えます。
元プレーヤーのGMが増えている
クリス・ゲッツは、上述のように7シーズン、MLBでプレー。選手から編成の上位に就任するのはこれで5人目。
有名どろろでは長身右腕でならしたレンジャーズのクリス・ヤングGMがいます。現役時代は79勝67敗。
マリナーズのジェリー・ディポートも元プレーヤーです。ディポートは、ベースボール・オペレーションのプレジデントですが、編成トップということでGMロール。現役時代は投手で、リリーバーとしてインディアンス、メッツ、ロッキーズで390試合に登板。
フィリーズのGMのサム・ファルド(Sam Fuld)は、現役時代はOF。カブス、レイズ、アスレチックスなどでプレー。
ドジャースのGMのブランドン・ゴームズ(Brandon Gomes)は、元レイズのリリーバー右腕。
このうち、サム・ファルドとブランドン・ゴームズは、ベースボール・オペレーションのNO.2。クリス・ヤング、ジェリー・ディポートは、編成の意思決定者です。
このようにMLBでは元プレーヤーがGMになるケースが増えており、これは良い傾向だと思います。
GMの中にはスピンレートなどセイバーおたくぶりを発揮し、「手段」のみにフォーカスして現場を混乱に落とし込んでいるのもいるようです。ジョー・マッドンが辞めた後にそういう事態があったことが暴露されましたが、今季もどうやら変わっていなかったようですね。もう誰だかはわかってしまいましたが。
やはり現場をよく理解し、現場ファーストで連携してもらいたいとは思います。指標も大事で、それはうまく使うと。
現役時代にスーパースターではなかった人が、現役引退後にその才能をGMという役職で発揮するというのも非常に興味深いところでもあります。
選手時代は感覚がものを言う世界ですが、引退後にGMロールのような役職に就く人は、現役時代に客観的なアプローチでスキル向上に取り組んできた人だったのか?というのは知りたいところです。動画、写真、セイバーなどなんらかの客観的なものを採り入れて、技術を改善してきた人がそうなるのか?などとも思ったりするわけです。今の選手はプレー直後にIPadでチェックしたり出来るので、そういう素質がより磨かれているのか?などとも思ったりもしてしまいます。
お読みいただき、ありがとうございました。
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