MLBでは実に2012年以来、11年ぶりの快挙達成
現地2023年6月28日、ニューヨーク・ヤンキースの右腕ドミンゴ・ヘルマンがオークランド・アスレチックス戦でメジャーリーグ史上24度目のパーフェクトゲームを達成しました。
Congratulations!
なかなか出なかったパーフェクト
MLBでは、パーフェクト・ゲーム(完全試合)がなかなか達成されませんでした。今回のドミンゴ・ヘルマンの達成は、2012年8月15日にキング・フェリックスこと、フェリックス・ヘルナンデスがレイズ戦で達成して以来、実に11年も間が空きました。
それまでは惜しいゲームがたくさんありました。今季だけでもご覧の2回。
我々、日本のファンにとっては忘れられないダルビッシュ投手のニア・パーフェクトもありました。2013年4月2日のアストロズ戦。この日はダルビッシュ投手が当時所属していたレンジャーズにとっても開幕2戦目。
ダルビッシュ投手は完璧な投球を披露。9回2アウトまでパーフェクト!あと一人で大記録というところだったのですが、マーウィン・ゴンザレスにCF前シングルを許し、惜しくもパーフェクトならずというゲームがありました。
このようにようやく出たか!というパーフェクト・ゲーム。成し遂げたのはドミンゴ・ヘルマンという、意外な投手でした。
前回、前々回で大炎上から一転!
なぜ、意外だったかというと、ドミンゴ・ヘルマンは直近の2試合で大炎上していたからです。
Date | Opp. | IP | H | R | ER | BB | S0 | HR |
6/16 | @BOS | 2.0 | 7 | 7 | 7 | 2 | 1 | 1 |
6/22 | SEA | 3.1 | 8 | 10 | 8 | 2 | 4 | 4 |
下手をすればDFAになるのではないか?とまで思われたくらいの散々な出来。シアトルでの4被弾の状況から一転、誰がこの日のパーフェクト・ゲームを予想できたでしょうか?
逆に言えば、誰でもチャンスはあるというのは言い過ぎだと思いますが、考えられない状況からの快挙の達成でした。
チェンジアップとカーブのコマンドが抜群!
ドミンゴ・ヘルマンは2017年にデビューし、2019年に27試合、24スタートで18勝8敗、ERA 4.03をマーク。2017年の4シームのアベレージ・ベロシティーは96.3mph、シンカーは96.5mph。そこからベロシティーは少しずつ落ちて行き、18勝のシーズンであっても、4シームは93.4mph、シンカーは94mph。
今季は4シーム、シンカーともに92.4-5mphというところです。
今季はカーブのシェアが大きく上がっており、41.7%。この日の投球にもそれが表れておりました。
とにかく82mphほどのカーブのコマンドが非常に良かったと思います。そしてカーブよりやや速い85mphほどのチェンジアップのコマンドも素晴らしかったです。
アスレチックスにはライアン・ノダといういい左バッターがいますが、緩いボールを使って3三振と完全に封じました。
【YOUTUBE】Domingo Germán throws the 24th PERFECT GAME in AL/NL HISTORY!! | Full Final Inning
JP・シアーズも結果的に良い刺激を与える
この日のアスレチックスの先発はJP・シアーズ。チーム状態が悪いので数字こそついてきていませんが、やはりアスレチックスの先発で一番良い投手だと思います。
彼はもともとヤンキースの選手。フランキー・モンタスとのトレードでアスレチックスに移籍しました。
JP・シアーズは立ち上がり3イニングを無失点。出塁はBB1だけ。この素晴らしいゲームへの入り方もドミンゴ・ヘルマンには良い影響を与えたと思います。
JP・シアーズは4回にジャンカルロ・スタントンに一発を浴び、5回には先頭のアイザイア・カイナー=ファレファへの四球をきっかけにカイル・ヒガシオカにタイムリーダブルを打たれるなど、集中打を浴びて4失点。さらに溜まったランナーを2番手藤浪投手がタイムリーを2本浴びて返されるなど、自適点5という結果に終わりましたが、立ち上がりは良かったと思います。
最後の関門もクリアー
イニングが深くなるほどに緊張感も高まりましたが、むしろ圧に感じていたのはアスレチックス打線の方でした。かなり焦りが感じられました。
最大の見せ場は、最後の打者にアスレチックスで最も期待出来るエステウリ・ルイーズに打席が回ってきたことです。足での内野安打もある選手です。
そのルイーズは、捉えた打球を三遊間に放つのですが、残念ながら名手ジョシュ・ドナルドソンの守備範囲。万事休すとなりました。
しかし、ジョシュ・ドナルドソンは大胆に三塁線を空けていましたね。この守備位置には驚きです。定位置なら三遊間を破っていたと思われます。
完全試合達成者
さて、これまでのパーフェクト・ゲーム(完全試合)達成者はこちら。
MLBの起源をどこからスタートするか?は色々と議論のあるところですが、仮に1876年からのスタートとすると全試合数は23,7000以上。
このうちのパーフェクト・ゲームがたったの24試合です。実に0.01%。
Date | Name | vs | |
1 | 1880年6月12日 | リー・リッチモンド (Lee Richmond ) /ウースター・ルビー・レッグス | クリーブランド ・ブルース |
2 | 1880年6月17日 | モンテ・ウォード (Monte Ward ) /プロビデンス・グレイズ | バッファロー ・バイソンズ |
3 | 1904年5月5日 | サイ・ヤング (Cy Young) /ボストン・ピルグリムス | フィラデルフィア ・アスレチックス |
4 | 1908年10月2日 | アディ・ジョス (Addie Joss) /クリーブランド・ナップス | シカゴ ・ホワイトソックス |
5 | 1922年4月30日 | チャーリー・ロバートソン (Charlie Robertson) /シカゴ・ホワイトソックス | デトロイト ・タイガース |
6 | 1956年10月8日 | ドン・ラーセン (Don Larsen) /ニューヨーク・ヤンキース | ブルックリン ・ドジャース |
7 | 1964年6月21日 | ジム・バニング (Jim Bunning) /フィラデルフィア・フィリーズ | ニューヨーク ・メッツ |
8 | 1965年9月9日 | サンディ・コーファックス (Sandy Koufax ) /ロサンゼルス・ドジャース | シカゴ ・カブス |
9 | 1968年5月8日 | キャットフィッシュ・ハンター (Catfish Hunter) /オークランド・アスレチックス | ミネソタ ・ツインズ |
10 | 1981年5月15日 | レン・バーカー (Len Barker) クリーブランド・インディアンス | トロント ・ブルージェイズ |
11 | 1984年9月30日 | マイク・ウィット (Mike Witt) /カリフォルニア・エンゼルス | テキサス ・レンジャーズ |
12 | 1988年9月16日 | トム・ブラウニング (Tom Browning) /シンシナティ・レッズ | ロサンゼルス ・ドジャース |
13 | 1991年7月28日 | デニス・マルティネス (Dennis Martinez) /モントリオール・エクスポズ | ロサンゼルス ・ドジャース |
14 | 1994年7月28日 | ケニー・ロジャース (Kenny Rogers ) /テキサス・レンジャーズ | カリフォルニア ・エンゼルス |
15 | 1998年5月17日 | デビッド・ウェルズ (David Wells) /ニューヨーク・ヤンキース | ミネソタ ・ツインズ |
16 | 1999年7月18日 | デビッド・コーン (David Cone) /ニューヨーク・ヤンキース | モントリオール ・エクスポズ |
17 | 2004年5月18日 | ランディ・ジョンソン (Randy Johnson) /アリゾナ・ダイヤモンドバックス | アトランタ ・ブレーブス |
18 | 2009年7月23日 | マーク・バーリー (Mark Buehrle ) /シカゴ・ホワイトソックス | タンパベイ ・レイズ |
19 | 2010年5月9日 | ダラス・ブレーデン (Dallas Braden) /オークランド・アスレチックス | タンパベイ ・レイズ |
20 | 2010年5月29日 | ロイ・ハラデイ (Roy Halladay) フィラデルフィア・フィリーズ | フロリダ ・マーリンズ |
21 | 2012年4月21日 | フィリップ・ハンバー (Philip Humber) シカゴ・ホワイトソックス | シアトル ・マリナーズ |
22 | 2012年6月13日 | マット・ケイン (Matt Cain) /サンフランシスコ・ジャイアンツ | ヒューストン ・アストロズ |
23 | 2012年8月15日 | フェリックス・ヘルナンデス (Félix Hernández) /シアトル・マリナーズ | タンパベイ ・レイズ |
24 | 2023年6月28日 | ドミンゴ・ヘルマン (Domingo Germán) /ニューヨーク・ヤンキース | オークランド ・アスレチックス |
NYY史上4度目
今回のパーフェクト・ゲーム達成でヤンキースのフランチャイズ史上4度目の完全試合となり、シカゴ・ホワイトソックスの3度を抜きました。
以下は、ヤンキース史上過去3度のパーフェクトゲームです。
ドン・ラーセン
1956年10月8日(ブルックリン・ドジャース戦):ワールドシリーズ史上初、そして唯一の完全試合として語り継がれています。
デビッド・ウェルズ
1998年5月17日(ミネソタ・ツインズ戦): ヤンキースにとって近代初の完全試合。
デビッド・コーン
1999年7月18日(モントリオール・エクスポズ戦): コーンが達成した完全試合は、インターリーグ史上初のもの。ラーセンが始球式を行った日に達成。
ドミンゴ・ヘルマン
30歳のヘルマンは、今シーズンは不安定でした。先発14試合でERA 5.10、SO%は2.76。シーズン初めには、粘着物質のポリシーに違反し、10試合のサスペンションを科せられました。しかし、今回の完全試合は99球(うち72球はストライク)での達成で、9 SOという素晴らしさ。まさに別人級の投球でした。
ガララーガを思い出す
完全試合と言えば、やはりアーマンド・ガララーガを思い出します。2010年6月2日のことでした。
完全試合を逃した瞬間のガララーガの表情が今でも忘れられません。メジャーでの完全試合の確率は上述の通り、0.01%。それを誤審によって逃したにもかかわらず、あの冷静な顔。抗議一つせず、実に清々しい表情でした。普通なら執着するところを実にこともなげに次への準備を始めました。どんだけ人として器が大きいのかと感動さえ覚えます。
今の時代ならリプレーでアウトとなっていましたね。
ドミンゴ・ヘルマンは実質的にあ25人目だよと言いたいというだけのことです。
筆者はまだ執着していますね(笑)。
お読みいただき、ありがとうございました。
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