現地2021年6月21日から実施予定
現地2021年6月13日(日)、MLBはいよいよ現地2021年6月21日(月)から投球時の強粘着の異物による滑り止めの規制を具体的に行うことがESPNほか各スポーツメディアが報じました。
シーズン前から話題になっていた投球時の異物(Foreign Substances)使用についてですが、もうどういう効果を生んでいるのかはご存じの通りです。スピン・レートに大きく影響し、球速アップ、変化球のキレの向上などに大きな効果を生むというものですね。
規制方法
その規制方法ですが、DUIチェックポイントのような方式を取り、なおかつランダムに行われるということです。
DUIチェックポイントとは、Driving Under the Influence of 〜の略ですが、飲酒運転なら、of のあとにalcohol(アルコール)、薬物であればDrugがくるということになります。さながら飲酒運転の取締のような定まった項目をランダムに実施するというもの。
8から10項目
現時点で言われているのは、8から10項目のチェクポイントを見られるということで、先発投手の場合は、イニング間に何度かアンパイアからチェックを受ける模様。毎イニングに行われるのではなさそうです。
普通に考えれば、グラブの内側、バイザー部分を含めたキャップ、ベルト、パンツ、前腕部、ユニフォームの袖の内側など、ぱっと思いつくだけでも6項目は出てきます。もう少し細かいのでしょうが、触る部分は決まっていますから。
ポジション・プレーヤーからの引き渡しも
なお、ポジション・プレーヤー(野手)もまたモニタリングされる模様。投手本人でなく、野手が投手になんらかの形で渡す場合もあり得るという視点です。
ロジンバッグではちょっと心もとない?
メジャーリーグのボールはよくツルツルという話を聞きます。筆者などはアメリカのアマチュアのボールは知っていて、確かに透明のコーティングをしているようななめし具合です。
日本の高校野球や社会人、あるいはNPBのボールのようにしっとりくる革のなめし具合とは違うことはなんとくはわかります。この辺は元カブス在籍の藤川投手のチャンネルでもしっかりと言及してくださっています。もう経験者に語ってもらうしかありません。
アメリカはさらに気候も乾燥していることから余計に大変なようです。
【日本人投手がメジャーで故障する原因はコレ!】MLBとNPB投手環境3つの大きな違い!!藤川球児が実体験をもとに語り尽くす!(Youtube動画)
投手は原則、湿り気が欲しいということになります。ロージンバッグはどちらかと言えば、汗で滑るのを防止する役割の方が強いと思います。松脂(ヤニ)の成分も入っていますが、15%ほど。
ニューボールの処理
なお、新品のボールは日本のアマチュアでもそうですが、一旦、土をつけて両手でこね回したりします。これはアメリカではMudding(マッディング)と呼ばれていて、Mudは土のことですが、泥水とドロをわざとつけてなじませることをします。
この辺はレイズのクラブハウスクルーの仕事を紹介した動画があるので、見てください。
Rays All Access: The Clubhouse Crew(Youtube:開始6:27)
動画にもありますが、Mudding Application Standardsというのがあるようにどのくらい汚すかの基準がしっかりと決められています。もちろん、合法です。
魔調合された粘着剤
今回問題にされているのは、もう数年前から出回っていたとされる、強力な粘着剤。まさに魔調合されたといって過言ではない粘着物質のことで、スパイダー・タックなどとも呼ばれています。
スピット・ボール
いわゆるスピット・ボールが規制されたと考えていいと思います。スピット・ボールとはツバをつけるボールのことですが、パイン・タールなどの異物も含まれています。
ちなみに、ボールの不正としてはシャイン・ボール(つるつるのボール)、エメリー・ボール(傷をつけて変化を変えるもの)、マッド・ボール(土をつけることですが、上記の新品に施すのとは違います)などがあります。
滑りをよくするものは昔から
異物と言えば、ワセリンなど、いわゆる滑りをよくしてスピン量を減らすというものはよくありました。しかし、粘着力を上げることで、球速アップなどにもつながるというのは、正直、勉強不足ながら、今回のシーズン前から始まった一連の出来事で初めて知った次第です。
暗黙の了解にメス
ボールへの不正な細工、改造、施しはDoctoring Ballと言い、即座に退場となり、さらに10ゲームのサスペンションの処罰があります。
もうずっと前から異物の使用はありました。ルールではもちろん禁止で、上記のような罰則も規定されており、今までも取締がありました。
今回の場合はちょっと度が過ぎていて、不利益を被る選手がいたことから大きな話題となりました。
今季の動き
なお、今季の強粘着の異物による動きをちょっとまとめてみます。
- 5月26日 :審判のジョーウェストが、カージナルスのリリーバー、ジオバニー・ガヤゴスの帽子が異物で覆われているとして没収。 なお、ガヤゴスは退場とはならず、リーグオフィスからも罰せられてはいません。
- 5月26日 : ジオバニー・ガヤゴスの件でツインズの3Bジョシュ・ドナルドソンが完全な証拠があると言及。
- 6月1日:ホワイトソックスのアナウンサーのスティーブ・ストーンは、インディアンスのクローザー、ジェームズ・カリンチャックのグラブの親指に異物があり、ドクタリング・ボールの可能性を示唆。
- 6月2日:マイナーリーグの3人の投手を不正投球で10試合のサスペンションを実施。
- 6月上旬:ゲリット・コールが記者会見で、スパイダー・ダックの使用について回答に窮する
- 6月上旬: ゲリット・コール、トレバー・バウアーのスピンレートの下降が見られた。
史上最多ペースのノーヒッター
現地5月19日にヤンキースのコーリー・クルーバーが今季6度目のノーヒッターを達成。まだこの時点で5月。過去、MLBのノーヒッターのシーズン最多達成は、1990、1991、2012、2015年の7度が最高。今季はそれを上回るペースです。これも強粘着剤の影響があるのではないか、あまりに投高打低であるので問題であると言われています。
2019年はHR最多
なお2019年はジュースド・ボールが話題となりました。2年前までは飛びすぎていたのです。そのデータなどは過去の記事にあります。
投手は対策をしたのだと思う
外野フライかな?と思った打球がそのままフラフラとスタンドに入るケースが多かった2019シーズンに対しておそらく対策を取った投手が多かったのではないか?と思います。野球場ではHRを見る方がわかりやすく、楽しいですから。その改造ボールに対して対策を立てた投手が多かったのも、この魔調合が広がった背景にあるのでは?などとも推察します。
いずれにせよ、すべりにくさを実現し、反発力をほどほどにしたボールに変えてみればよいとは思うのですが。
また事実関係が更新されましたら、アップデートします。
お読みいただき、ありがとうございました。
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