賭博を含めたMLB上の不正行為の規定について
現地2024年3月23日、MLBは本土開幕まで残り5日。各クラブは開幕に向けたロスター調整も盛んに行われており、本当ならそちらをメインに記事を書きたいところですが、やはり気になるのは水原通訳の一件です。混沌としており、日本のヒーロー大谷選手への影響も懸念されております。
これから調査に入り、開幕までになんらかの結論を出すのかどうかも現時点では不明です。
浮かび上がってくる誘引者
調査を進めて行くに当たり、これからエンゼルス時代の関係も明らかになっていき、2021年から始まったとされる水原通訳を賭博へ誘い込んだ人間も浮かび上がってくるでしょう。もう一部の報道では名前も触れっちゃっているようですが、調査の進展で大々的に報じられるかどうかは不明。現状では水原さんが見事にはまったことは間違いないようですが、一貫して闇深さを感じます。
ルール21の規定
問題は大谷選手への影響ですが、その根拠とされる不正行為を定めているMLBルール21をここで記載しておきたいと思います。
全体像
このルール21は不正行為とはなんぞやという定義をaからgまで7つの条項で定めており、賭博はdに記載されております。最後のgはルール運用の規定ですから、実質fまでの6つです。
- (a) MISCONDUCT IN PLAYING BASEBALL (プレーに関する不正行為)
- (b) GIFT FOR DEFEATING COMPETING CLUB (競合クラブの敗北に対する贈呈)
- (c) GIFTS TO UMPIRES (審判への贈呈)
- (d) GAMBLING (賭博)
- (e) VIOLENCE OR MISCONDUCT (暴力または不正行為)
- (f) OTHER MISCONDUCT(他の不正行為)
- (g) RULE TO BE KEPT POSTED (クラブハウスへの掲示義務)
まずは今回の焦点となっている賭博から見て行きます。
(d) GAMBLING(賭博)
(1) Any player, umpire, or Club or League official or employee, who shall bet any sum whatsoever upon any baseball game in connection with which the bettor has no duty to perform, shall be declared ineligible for one year.
(1)「野球賭博を一切禁止している」という規定には違いないのですが、”the bettor has no duty to perform”とあるように、ここでは自分が所属しているクラブとは違うクラブへ賭けた場合の話です。対象者は「選手、審判、リーグの役員、従業員すべての関係者」。そして「いかなる金額であっても(自分の組織と違うクラブへの)賭けを行った者は、1年間不適格とされる」。
(2) Any player, umpire, or Club or League official or employee, who shall bet any sum whatsoever upon any baseball game in connection with which the bettor has a duty to perform, shall be declared permanently ineligible.
(2)の対象者は(1)と同じで「選手、審判員、クラブまたはリーグの役員または従業員」なのですが、違う点は”the bettor has a duty to perform”とあるように賭けの対象が所属する組織である場合の規定です。これは重いです。「いかなる金額であっても(所属するクラブへの)賭けを行った者は、永久に不適格とされる」と厳しい対処が規定されています。
(3) Any player, umpire, or Club or League official or employee who places bets with illegal book makers, or agents for illegal book makers, shall be subject to such penalty as the Commissioner deems appropriate in light of the facts and circumstances of the conduct. Any player, umpire, or Club or League official or employee who operates or works for an illegal bookmaking business shall be subject to a minimum of a one-year suspension by the Commissioner. For purposes of this provision, an illegal bookmaker is an individual who accepts, places or handles wagers on sporting events from members of the public as part of a gaming operation that is unlawful in the jurisdiction in which the bets are accepted.
(3) 「違法なブックメーカー、または違法なブックメーカーの代理人と賭けを行った選手、審判、またはクラブもしくはリーグの役員もしくは従業員は、その行為の事実と状況に照らし、コミッショナーが適切と考える処罰を受けるものとする。違法なブックメーカー業を営む、または違法なブックメーカー業のために動く選手、審判、またはクラブもしくはリーグの役員もしくは従業員は、コミッショナーにより最低1年間の出場停止処分を受けるものとする。当該規定において、違法なブックメーカーとは、賭けを受け入れる司法管轄区において違法とされる賭博行為の一環として、一般人からスポーツ競技に対する賭けを受け入れ、受注し、または取り扱う個人を指す」
対象は上記(1)(2)と同じ。つまりはMLBに関わるどんな立場の人もこれに該当。今回の水原さんの場合はこの(3)にピッタリと該当。「賭けを受け入れる司法管轄区において違法とされる賭博行為」というのがカリフォルニア州で違法となっているのにそれを行ったとされています。
賭博以外の規定
その他の点について簡単に記載しますと、
- (a)プレーに関する不正行為:これは大まかに言うと八百長への関与のことでここでは永久追放となります。
- 故意に失敗するなどの直接的な関与
- 勧誘
- 知っていて報告しない
- (b) 競合クラブの敗北に対する贈与: 競合クラブが敗れるように不正に動いた場合の報酬を受け取った場合の関与について少なくとも 3 年間は資格なしと宣言されるものとします。(細かく規定されているのですが、省略します)
- (c)審判への贈与:いわゆる審判の買収です。こちらも詳細は省略しますがこの関与は永久追放です。
- (d)賭博:上述
- (e)暴力または不正行為:「メジャーリーグ、マイナーリーグの試合中、あるいはエキシビション・ゲームに関して、選手による、あるいは審判による選手に対する身体的攻撃やその他の暴力、あるいは審判や選手によるその他の不正行為があった場合。 メジャーまたはマイナーリーグクラブの場合、コミッショナーは、事実がコミッショナーの判断で正当とする限り、違反者に罰金、出場停止、資格剥奪またはその他の罰則を課すものとする。」
網にかけるf規定
(f)Other misconduct
Nothing herein contained shall be construed as exclusively defining or otherwise limiting acts, transactions, practices or conduct not to be in the best interests of Baseball; and any and all other acts, transactions, practices or conduct not to be in the best interests of Baseball are prohibited and shall be subject to such penalties, including permanent ineligibility, as the facts in the particular case may warrant.
「(f)その他の不正行為:
ここに含まれるいかなる内容も、行為、取引、慣行、または行為が野球界の最善の利益にならないように排他的に定義または制限するものとして解釈されるものではありません。 野球界の最善の利益にならないその他すべての行為、取引、慣行、または行為は禁止されており、特定の場合の事実が正当とする限り、永久的な資格剥奪を含む罰則の対象となるものとします。」
よくわからない文章となっていますが、大事なのは後半部分で「野球界の最善の利益にならないその他すべての行為、取引、慣行、または行為は禁止されており、特定の場合の事実が正当とする限り、永久的な資格剥奪を含む罰則の対象となるものとします。」と上述のaからeまでに該当しない行為も漏らしませんという規定となっています。これが調査結果に対してどう運用されるのかが大きいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント