ピッチャーのルール変更をおさらい
去る現地2023年2月13日に、MLBから2023年のフィールド・ルール変更と投球時のボークについてアナウンスがされました。
フィールド・ルール変更は、下記の記事に記載しています。
かいつまんで書きますと、、、
- ピッチ・タイマー
- シフト・リストリクション
- ビガー・ベース
これらに加えて、以下も定められました。
- 延長戦でのオートマティック・ランナーの恒久化
- ポジション・プレーヤー登板ルール
というところになります。
上記リンク記事では「ボーク」のルールについて、「あらためて」と書いておりましたので、本日の記事はピッチタイマーの運用状況が明らかになったことことと絡めて、そのボークについて書いて行きたいと思います。まずは衝撃的な結果が出たピッチ・タイマー初日の状況です。
【タイマー】まさに積小為大!高校野球並みの試合展開
現地2023年2月24日からスプリング・トレーニングのゲームが行われています。選手たちは集合こそ、2月半ばで、野手などは20日前後に加わっているのですが、もう自主トレで仕上げまくっているので初日でも実践に参加できる選手ばかりなのは例年どおりです。
初導入の模様
さて、ピッチ・タイマー(ピッチ・クロックでも同義)がこのスプリング・トレーニングから導入されることになっていますが、この日はその初日で衝撃の結果が出ました。
まずはこのような状況でした。
Your first look at MLB’s pitch clock pic.twitter.com/L2iTEbDivV
— Talkin’ Baseball (@TalkinBaseball_) February 24, 2023
忙しない! 実に忙しないですね。普段、我々は高校野球を見慣れているはずですが、それでも非常にせわしなく感じました。
- 打者から打者への交代の時間:30秒
- 【投手】投手は投球タイマーが切れる前に投球の動作を開始しなければならない。
- 走者なし:15秒 (マイナーでのテストでは平均14秒)
- 走者あり:20秒 (マイナーでのテストではトリプルAでは19秒)
- 違反した場合、自動ボールとなる。
- 【打者】
- 投球間の準備:8秒までに投球に対峙する準備を終える必要がある。
- タイマーに違反した打者には、自動ストライクが科される。
ゲーム開始直後なので、ランナーなしの状況ゆえ、15秒が適用されています。初球はファウルでしたので、少し時間が空きましたが、どうやら返球を受けてからのスタートですね。2球目以降はさらに実態が明らかとなり、捕手の返球を受けてからタイマーがスタート。ニック・マルチネスももはやちぎっては投げ、ちぎっては投げという状態です。
マチャードが初バイオレーション!
そしてマリナーズ@パドレス戦で初のバイオレーション(違反)が出たのですが、打者のマニー・マチャードによるタイムアウトでした。
打者は8秒までに準備をしないといけませんが、15秒からスタートして8秒以内なので、表示が「7」を示すまでに構えていなければいけないのですが、マチャードは「6」に突入しても完成していなかったということでオートマティック・ストライクが取られました。
Now that we got our first look at the pitch clock, we see our first clock infraction
— Talkin’ Baseball (@TalkinBaseball_) February 24, 2023
Manny Machado started off his at-bat, 0-1 because he took too long to get into the box pic.twitter.com/pUcAdyZAkx
本人は試合中のインタビューで今年は0-1でたくさんストライクを取られるかもと述べていました。
マイナーでは経験済み
なお、マイナーではすでにピッチタイマーは導入済みで、投手も打者もマイナーで経験している選手も多いです。
ともに大量の投手を投入して2時間半!
なお、この日行われたスプリング・トレーニングのゲームは、3ゲーム。驚きの試合時間となりました。
- レンジャーズ 5 @ 6 ロイヤルズ (2:33)
- マリナーズ 3 @ 2 パドレス ( 2:29 )
なんと2時間半で終わってしまいました。
驚くべきは、スプリング・トレーニングなので、ショート・イニングで選手がころころと代わったのですが、レンジャーズは9名の投手、ロイヤルズは8名の投手が投入されての2時間半。パドレスとマリナーズはともに6人の投手をつぎ込んでのこの経過時間です。
レッドソックス vs カレッジは3時間のペース
なお、レッドソックスはカレッジのニュー・イングランド・ハスキーズと対戦し、5-3で勝ちましたが、こちらは7イニングのゲームでしたので、ここには入れていません。レッドソックスがX勝ち(久々に使いましたよ、X勝ち!)で勝利を納めたので、7回裏の攻撃を行っていませんが、7回表を終了して2時間8分のゲームでした。こちらは、ざっと1攻撃あたり9.85分ですから、仮に9回表までやったとして7回裏、8回表、8回裏、9回表であと4攻撃分で40分弱かかり、9回裏までやれば+10分で、3時間ゲームのペースでした。
このピッチタイマーは現場の選手はなかなか大変そうですが、野球が変わるかもわかりませんね。
元レッドソックスのノマー・ガルシアパーラから始まったと言っても過言ではない(本当は違うと思いますが、ガルシアパーラの代名詞のようなもの)、投球間に打者がバッティング・グローブのマジックテープを付け直しながら、次のボールを考えるという仕草も消えるかもしれませんね。
野球で大事にされてきた「考える時間」を投手も打者もどうやって捻出するのか?これから見てみたいと思います。
サンプルはまだ1日のみですが、かなり衝撃的でした。
追記:勝敗に関わる場面が早くも登場
現地2023年2月25日、オートマティック・ストライクによるゲームエンドが発生。これも想定済みのことですが、やはり「がっかり感」が拭えないのは確かですね。
6-3でレッドソックスがリードして迎えた9回裏、ブレーブスは3点を奪い6-6のタイ・スコアに。レッドソックスはたまらず、ロバート・クイッコウスキー(Kwiatkowski)を投入。クイッコウスキーは三振で2アウト目を奪い、あとアウト1つ。しかし、ランナーは満塁でブレーブスは押出でもサヨナラという場面。
ここでクイッコウスキーは、カル・コーンリーから強気に2球で2ストライクを奪います。いずれも真ん中だったのですが・・・。3球目。下記のVTRではタイマーが映っていないのですが、打者コーンリーは準備ができておらず、バイオレーションとなり、オートマティック・ストライクでゲームエンド。6-6のタイスコアで終わりました。
Bottom of the ninth. Tie game. Bases loaded. Full count. The dream scenario. And … Cal Conley didn't get set in the batter's box with 8 seconds left on the pitch clock.
— Jeff Passan (@JeffPassan) February 25, 2023
Umpire calls an automatic strike. At-bat over. Inning over. This is the new reality. pic.twitter.com/Bv5k2xJ06j
2023年に厳しくなるボークについて
上述の通り、今季からボークが厳しくなります。
ピッチ・タイマーとの絡み
なお、時短という意味でピッチタイマーとも関係している点としては、時計係は、投手が投球を始めたらタイマーを切ることになっており、ワインドアップの場合は、後ろか横に1歩動くことが許されているので、そこでタイマーが切れます。よって、2歩ステップするような動きはボークの対象に。
また、セットポジションの場合は、フリーレッグ(右投手なら左足)が動いた時点でタイマーが切れます。よって、紛らわしい動きがボークになります。
なお、ピッチタイマーは投手がタイムアウトになってしまうと、オートマティック・ボールに、打者がタイムアウトになってしまうと、オートマティック・ストライクになり、あくまで1球に対し、ペナルティーが科されるのに対して、ボークは進塁が許されてしまいます。
変更点と実例
大きな変更点は上の埋め込みリンクの記事の通りで、ランナーのいないワインドアップ時に、後ろか横に1歩動くことのみ許される点です。
リンク内にもあったアストロズのルイス・ガルシアは2歩動いていることになり、これはボークの対象に。また、足踏みを激しくするマイク・クレビンジャーの動きもボークの対象に。
またランナーがいるあるいは、いない状況でもセット・ポジションから投げる投手は、セットに入ってから、ピクピク動いてもアウトです。ケビン・ゴーズマンのセット後の動きもボークの対象となります。
Kevin Gausman was HEATED after being called for this balk pic.twitter.com/5OzAWFs1aK
— Jomboy Media (@JomboyMedia) September 5, 2022
ケンリー・ジャンセンの場合は、グラブを固定してからは問題ないのですが、その前にフェイクのセットを入れるような動きがボークになります。下記の動画の開始すぐの腰をひねるような動きです。
ピックオフ(牽制)の制限
牽制も上述のリンク通りの制限が入ります。
- ランナーがいる場合、ピッチャーがピックオフ(牽制)を試みるか、ラバー(ピッチャー・プレート)を踏み外すとタイマーはリセットされる。
- 投手は対戦する打者一人つき、2回の離脱が許される。離脱とは、牽制、あるいは牽制の偽投(MLBでは2塁への牽制でよくやります)、あるいはプレート外しのこと。言ってみれば、牽制は2回まで。
- 走者が進塁した場合、この回数はリセットされる。(仮にバント失敗で走者が同じ塁に残った場合は、打者が変わるのでリセットされる認識です)
- 3回目のピックオフの試みが成功しなかった場合、ボークとして、走者は自動的に1つ進塁する。
あらためてボークとは?
Baseball Referenceによれば、ボークとは「走者が塁にいるときに投手が行う不正行為」であり、ランナーがいる時にコールされるものです。ボークを犯した場合、塁上のすべてのランナーに1つ進塁が許されます。
ボーク・ルールの目的は、走者の盗塁の試みと、守備側の牽制のバランスを保つことにあります。そして以下の13のアクションがそれに該当するとのこと。
- Starts his pitching motion without completing the pitch;
(変な表現ですが、要は「投球に関連する動作を起こしながら投球を中止する」ことを意味していると思われます) - Fakes a throw to first base;
(MLBでは1塁への偽投はボークとのこと。3Bへの偽投は書いていないです。) - While standing on the rubber, throws to a base without stepping directly toward that base;
(プレートを踏み、投球方向に真っ直ぐ踏み出さなければボーク) これは後述。 - While standing on the rubber, throws or fakes a throw to an unoccupied base, unless a runner is running toward that base;
(プレートを踏んでいる間は、ランナーのいない塁に投げてはいけない。たとえランナーが先の塁に進塁しようとしていたとしても)←プレートを外せば良いです。 - Makes an illegal pitch, including a quick pitch;
(違反投球、とくにクイックピッチ。クイック・ピッチとは打者がバッター・ボックス内で十分な構えをしていないとき投球される行為のこと。この場合、審判は投球をクイックピッチと判定し、塁に走者がいればボーク、いなければボールとなる。)←たまに高校野球でみかけますが、グレー・ゾーンを綱渡りしている感じです。クイック・ピッチとみなすかどうかは審判の裁量にも依ります。騙し投げのような状態かどうか。 - Pitches while not facing the batter;
(投手が打者に正対しないうちに投球) - Makes any part of his pitching motion while not touching the pitching rubber;
(プレートに触れずに投球すること) - Unnecessarily delays the game;
(不要な遅延行為) - Stands on or astride the pitching rubber without the ball;
(ボールを持たないでプレートに立つ、あるいはまたがったりすること)←隠し球の時は要注意ですね。 - After assuming the windup or set position, removes one hand from the ball except in the course of making a pitch or throw to a base;
(ワインドアップまたはセットポジションを取った後、投球または塁へ送球する場合を除いて、ボールから片手を離すこと。)←よく足を上げたあとにグラブからボールを一度離して、再度グラブに入れるような動作をする投手がいますが、それは「投球する場合」に該当しますから除外、つまり問題ありません。 - Drops the ball while standing on the pitching rubber;
(プレートを踏んでいる時にボールを落とす) - Pitches while the catcher is not in the catcher’s box;
(キャッチャー・ボックスの外にいる捕手に投球)←敬遠の時はあくまでそれたボールを捕手が取りに行く体をとっているということですね。 - Pitches from the set position without coming to a complete stop.
(セット・ポジションでは完全に停止すること。)
MLBの左投手の1塁牽制
3番についてですが、国際試合でのNPBの選手に限らず、レギュラー・シーズン中のMLBの選手であっても、メジャーの左投手の1塁牽制につられてアウトになるケースは多いです。
メジャーの左投手の1塁牽制は投手によってはほぼホーム側にステップして1塁へ投げているようにも見えますし、足がクロスしているようにも見えます。
Andy Pettitte picked off a baserunner in EIGHT consecutive games in 1997. 😵 No other pitcher in MLB history has had a pickoff streak longer than five games. pic.twitter.com/mFUarLDupI
— Codify (@CodifyBaseball) March 4, 2022
メジャーであれをボークととらない理由がよくわからないのです。今季はそれも対象になるのか?と期待したいところでしたが、おそらく例年どおりではないかと。理由は、各クラブの左投手に通達された形跡がないですし、対策として牽制の練習をしているというニュースも聞かないからです。
アメリカのベースボール・アカデミーの動画を見て、そういう理由か?とわかった面がありました。それは「クロス」の定義です。どうやら、プレートとクロスしてはいけないという観点ではないか?と思いました。日本の場合は、膝がクロスするかどうかですが、メジャーの場合は、プレートで考えているのかもしれません。プレートへのクロス=膝のクロスとも言えますが、プレートにクロスしていなければ、膝のクロスは大したことはないということかな?と思いました。ステップへの面はまだ不明なのですが。
これは実際にアメリカで投げた左投手に聞いてみたいですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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