ジャレッド・ケルニックがATLへ
現地2023年12月3日、ブレーブスとマリナーズの間でトレードが成立。これがなかなかのインパクトをもったトレードで、表題の通りマリナーズからは名の知れたジャレッド・ケルニック、マルコ・ゴンザレス、エバン・ホワイトの3名がブレーブスに動きます。一方、ブレーブスからマリナーズには2名。
選手の知名度から言ってブレーブスにメリットの多い、アンバランスなトレードのように思えますが、ちゃっかり者のマリナーズのジェリー・ディポートPOBO(President of Baseball Operation)がこれから本番というストーブリーグ序盤でそのような奉仕的なをディールをまとめる訳がなく、よく見ると、ブレーブスにとっては難しく、マリナーズにとっては割と収穫のあるトレードということになりました。
トレード概要
今回は計5人が動くトレードです。記載の年齢は2024年の開幕時の年齢です。
ブレーブスGet
- ジャレッド・ケルニック(Jarred Kelenic/24)OF/左投げ左打ち
- マルコ・ゴンザレス(Marco Gonzales/32)/LHP
- エバン・ホワイト(Evan White/27)1B/左投げ右打ち
- キャッシュ・コンシダレーション
マリナーズGet
- ジャクソン・コーワー(Jackson Kower/27)RHP
- コール・フィリップス(Cole Phillips/21)RHP
ATLにとってはなかなか難しいトレード
一見、華やかな面々を獲得したブレーブスですが、上述の通り、ディポートのディールですから、額面通り受け取れません。結構、訳ありな面も孕んでいて、アレックス・アンソポロスPOBO兼GMはよく承諾したなというディールでもあります。
その理由を見てみます。
(1)伸び悩みのケルニック
ジャレッド・ケルニックはもともとは2018年のメッツの1巡目指名の選手。2017 U-17でアメリカの世界一に貢献したこともあります。ドラフト・イヤーの2018年12月、マリナーズとメッツ間で成立したロビンソン・カノーとエドウィン・ディアスが動いたトレードでメッツからマリナーズへ移籍。ディポートとしてはどうしても獲りたい選手でもありました。
まだ24歳のジャレッド・ケレニックは、Pre-2021のトップ・プロスペクト・ランク100で4位にランクイン。トップ・レベルのプロスペクトだったと言っても過言ではありません。
そのケルニックは2021年にメジャー・リーグ・デビュー。
ところが大いに苦戦しています。ご覧の通り、大いに苦戦しています。5ツールと謳われたのにOPBが.200台というのが非常にかなしいデビュー2シーズンでもありました。
Season | G | AVG | OBP | SLG | HR |
2021 | 93 | .181 | .265 | .350 | 14 |
2022 | 54 | .141 | .221 | .313 | 7 |
2023 | 105 | .253 | .327 | .419 | 11 |
ただ、ブレーブスとしての希望は2023年の成績に光が差し込んでいることです。OBPも大いに改善。2023年は足の怪我で離脱した時期もありましたが、復帰後の9月はAVG.260をキープしました。飛躍の要素もあります。しかも、左右の投手で打率はほぼ同じ(.250台)。
そう、化ける面も大いにあります。
【YOUTUBE】Jarred Kelenic is a breakout STAR!! He’s having a HUGE season for the Mariners!!
E・ロザリオの穴を埋めるか?
ブレーブスはこのオフにエディー・ロザリオの$9Mのクラブオプションを拒否。ケルニックが狙うのはそこです。しかも、ケルニックのサラリーはMLBミニマムのレンジですからクラブ側としても都合が良いわけですね。さすがにロザリオの穴を埋めるのは簡単ではありませんが、ここはケルニックの成長次第というところかと。
(2)肘に懸念のあるマルコ
もしもマルコ・ゴンザレスがヘルシーならブレーブスにとってこんなハッピーなことはありません。そもそもディポートが手放していないでしょうね。
2024シーズンで32歳のマルコ・ゴンザレスは、2023年6月に左前腕部のハリで15 Day IL に。マルコ・ゴンザレスの左肘前腕部は実は2021年4月にも悲鳴を上げ、ILに入った履歴もあります。
そうです、マルコ・ゴンザレスは手術が必要になるかもしれないのです。2018年に29先発で13勝9敗をマークし、ERAは4.00。2019年には34先発で、203.0イニングを投げ、16勝13敗、ERA3.99をマーク。これはキャリア・ハイの勝ち星です。その後、2022年にも32先発で10勝15敗、183.0 IPを投じました。もしヘルシーならかなりのイニング・イーターなのです。
しかし、2023年は10先発、50.0イニングに留まり、4勝1敗、ERA 5.22。
ヘルシーであれば、ブライス・エルダー、マックス・フリード、チャーリー・モートン、スペンサー・ストライダーの次のローテーションを担うことが可能。果たして肘はどうなのか??
(3)長期契約が機能しなかったホワイト
27歳のホワイトは、怪我と成績不振が続き、2021年を最後にMLBをでプレーしていません。MLB通算84試合出場で.165/.235/.308。
マリナーズと言えば「しぶちん」ですが、そのマリナーズが2019年11月23日に当時未デビューだったエバン・ホワイトと「6年/$24M (2020-25) + 2026年から2028年はクラブオプション」という長期契約を結んでいたのでした。
ところが上述のような状態で、この長期契約はまるで機能しませんでした。マリナーズはもう支払うのはやめると言わんばかりに今回トレードに出しました。
1Bのエバン・ホワイトが、マット・オルソンを脅かすことなどほぼなく、ブレーブスとしては2024年に$7Mの支払いが回ってきました。
キャッシュ・コンシダレーションが含まれる意味
今回のトレードでブレーブスが獲得する3選手のサラリーです。
- ジャレッド・ケルニック: 1 年/$0.7294(2023)=2024年もMLBミニマム近辺
- マルコ・ゴンザレス: 4年/$30M (2021-24)+ 2025 クラブOpt
- $5M(21), $5.5M(22) , $6.5M(23) , $12M(24)
- 2025: $15M クラブOpt (バイアウトなし)
- エバン・ホワイト: 6 年/$24M (2020-25) + 2026-28クラブOpt
- $1.3M(20), $1.3M(21), $1.4M(22), $3M(23), $7M(24), $8M(25)
- 2026 : $10M クラブOpt ($2M バイアウト)
- 2027: $11M クラブOpt ($1M バイアウト)
- 2028: $12.5M クラブOpt ($1M バイアウト)
ジャレッド・ケルニックはまだMLBミニマムの近辺なのですが、マルコ・ゴンザレスは $12M(2024)、エバン・ホワイトには$7M(2024)のサラリーがついています。今回、キャッシュ・コンシダレーションがついているのは、マルコ・ゴンザレスとエバン・ホワイトの支払いに充てる資金ということに。
ジャレッド・ケルニックは多少の光が見えている状態。マルコ・ゴンザレスには手術のリスクを孕んでいる、エバン・ホワイトはディポートに押し込まれた(!?)というディールで、実はブレーブスにとっては知名度ほど良い内容でもないということに。
マリナーズは大幅なコストダウン
一方、マリナーズは上述のようにマルコ・ゴンザレスとエバン・ホワイトの支払いから開放されました。すでにユーヘイニオ・スアレスも出しているマリナーズは、今オフすでに$30Mほど軽くした計算に。
単にサラリー・ダンプだけでなく、マリナーズはその資金をバッターに注ぎ込む見込みです。フアン・ソトの名前も挙がっていますね。
(SEA)ジャクソン・コーワー
マリナーズが獲得したジャクソン・コーワーは2023年11月17日にブレーブスがカイル・ライトとの1対1のトレードで、ロイヤルズから獲得した27歳の右腕。ブレーブスは転売するような勢いでトレード・チップとして彼を指名しました。
コーワーは2018年のロイヤルズの1巡目指名。2021年にデビューするも、8先発で0勝6敗。2022年はリリーフでの登板で7試合のみで勝ち負けなしのERA 9.77。2023年は23試合にリリーフ登板し、2勝0敗、ERA 6.43。まだ発展途上という投手です。
(SEA)コール・フィリップス
コール・フィリップスは2022年のブレーブスの2巡目指名の21才になる右腕。2023年は怪我のため登板せず。
The #Mariners are reportedly acquiring #Braves 2022 second-rounder and No. 7 prospect Cole Phillips and RHP Jackson Kowar for OF Jarred Kelenic, LHP Marco Gonzales and 1B Evan White.
— MLB Pipeline (@MLBPipeline) December 4, 2023
Here’s a look at the 20-year-old with a triple-digit fastball: https://t.co/nrzWF1FPNL pic.twitter.com/FZukM6HNFo
ブレーブスの高額サラリー選手
2023年は贅沢税の閾値である$233Mを超えて$250M超えとなったブレーブスは、現時点で$260Mを超えます(2024年は$237M)。マルコ・ゴンザレスとエバン・ホワイトの計$19Mは結構痛いです。
一応、2024シーズンの高額サラリーはご覧の面々となっています。
マット・オルソン | $21M |
オースティン・ライリー | $21.2M |
チャーリー・モートン | $20M |
マーセル・オズーナ | $16.25M |
ロナルド・アクーニャ・Jr. | $12.5M |
ライセル・イグレシアス | $14.5M |
マックス・フリード | $15M |
マルコ・ゴンザレス | $12M |
ショーン・マーフィー | $12.166M |
フィリーズ、メッツを意識した結果した影響もあるでしょう。
追記:マルコ・ゴンザレスはPITへ
現地2023年12月5日、ブレーブスは動きましたね。マルコ・ゴンザレスをパイレーツにトレードしました。パイレーツからブレーブスにはPTBNL(後日指名)の選手が動きます。
お読みいただき、ありがとうございました。
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