心機一転!復活なるか?
現地2023年1月19日、カンザスシティ・ロイヤルズがヤンキースからFAのアロルディス・チャップマン(Aroldis Chapman)と1年契約で合意しました。現時点ではフィジカルチェックの結果待ちです。
2010年代のMLBのベロシティー・キングは2023年の開幕時点で35才。直近2年で明らかにパフォーマンスが悪化している中、2023年にどのようなピッチングをするのか見ものです。
契約内容
ロイヤルズとアロルディス・チャップマンが合意した内容は下記の通り。
- 1年/$3.75M(2023)
- $4Mのパフォーマンス・ボーナス
旧契約
アロルディス・チャップマンの旧契約は、2019年11月3日にヤンキースと延長契約をした3年/$48M (2020-2022)。AAV(Average Annual Value)で$16Mでしたから、現契約はかなり下がっているのがわかりますね。
この契約はもう1つ前の契約も絡んでいまして、2018年12月にヤンキースと5年/$86M(2017-21)でサインした際に、2019年終了後にオプトアウトが入っており、そのデッドラインの直前に、延長契約で上書きしたものでした。
ちなみに、2019年11月3日でサインした契約($48M/3年)では、AAVは$16Mでしたが、贅沢税上の計算は$17.46M(2020-22)となっていました。これは、2018年12月にサインした契約の実際に支払った額のAAVと契約時のAAVとの差額が反映されたものです。
2017年から2019年までに支払った実額が$56M。それを年単価に直すと$18.66Mに。$86M/5年のAAVは$17.2Mであり、その差額の$1.46Mが2020年から2022年までにかかっていたのでした。贅沢税計算というのは、いかにフェアに反映させるかというところですね。
ロイヤルズ、ブルペン左腕で補強
ロイヤルズは2022年にクローザーを務め、69試合でERA 2.18のスコット・バーローが健在。彼がブルペンの中心となり、ゲームを締めることになりそうです。
またディラン・コールマンは2022年に68試合に登板しERA 2.78をマーク。彼もゲーム後半の大事なセットアップを任されることになりそうです。
よって、アロルディス・チャップマンはクローザー・ロールというより、ゲーム後半の大事なシーンで登場してもらいたい左腕という位置づけになるかと思われます。
ロイヤルズのブルペンには、アミール ギャレット、リチャード・ラブレディー、そしてアンソニー・ミシービッチ(Anthony Misiewicz)という3人の左腕がおりますが、2022年はなかなか良い結果が出ませんでした。
アミール・ギャレットは60試合に登板してERAは4.96。リチャード・ラブレディーは2021年にトミー・ジョン手術を行い、2022年9月にマイナーで復帰し、4試合(4.0イニング)でERA0.00と復帰に手応えはあり。そしてアンソニー・ミシービッチは2022年はマリナーズとロイヤルズに所属し、双方を併せて32試合でERA は4.34。
契約ではこのような位置づけになることも承知したと思われますが、果たしてどのような結果になるでしょうか?
象徴的だった2022年
2022年は、5月末にアキレス腱を痛めてIL入りになるなど、厳しいシーズンとなりました。
そしてフィールド外でも色々あったシーズンでもあります。
8月後半、ヤンキースのブルペンが苦戦している中、アロルディス・チャップマンはIL入りとなったのですが、その原因が脚に彫った刺青で感染症を起こし、抗生物質で治療するからというものでした。これは現場の仲間からすると、ふざけんなというふうになりますね。
さすがに9月17日に復帰してから数試合は引き締まった投球を見せたのですが、ポストシーズンに入り、またもやトラブルを起こします。
10月7日、ヤンキースがALDSに向けてニューヨークでワークアウトを行った際、彼は無断欠勤をしたのです。しかもその2日後にひょっこりとマイアミに出現。一体、何をしていたのかは不明です。当然のことながら、ポストシーズンのロースターから外され、2度とピンストライプを着ることはなくなりました。
BB%悪化
またBB%が著しく悪化した年でもありました。
アロルディス・チャップマンはもともとはBB%が高い投手でもあります。デビュー2年目の2011年には19.8%をマーク。最も急速が速かった2013年から2015年(レッズ)にかけても、11%台という数字。
カブスでワールシリーズに貢献した年は、8.1%と落ち着いていましたが、2018年から再び二桁に。短縮シーズンの2020年は8.9%に落ち着きましたが、2021年は15.6%、そして2022年には17.5%にまで悪化しました。BB9で言うと、2021年が6.1、2022年が6.9。さすがにこの数字でクローザーは任せられないことから、クレイ・ホームズにその座を譲りました。
ベロシティーですが、彼が最も多く投げている4シームが2022年は97.5mph平均に。これだけでもとんでもない数字ですが、アロルディス・チャップマンの場合、2017年の4シームが、100mph平均だったことから比べるとやはり低下しています。
なおファストボールのカテゴリーで行くとシンカーも投げているのですが、これは投球割合で最も少ない球種。ただし、シンカーなら2022年においても100.2mph平均を出しています。
そして2022年のERAはキャリアワーストの4.46。荒れた1年でしたね。
マイク・ブロソーからのリベンジ
アロルディス・チャップマンのエピソードの中で強烈な印象を放っているのは2020シーズンのマイク・ブロソーとの対戦。
2020年9月1日、アロルディス・チャップマンはレイズ戦でマイク・ブロソーに101mphの速球を頭付近に投げつけるというアクシデントを起こしました。アロルディス・チャップマンには3試合の出場停止処分を科されます。なお、このサスペンションはチャプマンが不服申立を行い、シーズン終了後に認められたたため2試合に減軽されています。
そしてシーズン終盤の事件から1ヶ月後、ヤンキースとレイズはALDSで激突。ALCS行きを決めるGame5の終盤8回、マウンドに上がったアロルディス・チャップマンは、マイク・ブロソーと再び対戦。スコアは1-1。マイク・ブロソーは2球で2ストライクと追い込まれながら、そこから9球も粘ります。そして10球目、LFにソロHRを放ち、レイズが2-1と勝ち越し。ヤンキースは9回表に得点できず、レイズがALCSへ進出したのです。見事にリベンジされたというお話でした。
通算315セーブ
アロルディス・チャップマンはセーブ数が通算315。奪三振率はキャリアを通じて驚異の40.2%。シーズンベストは2014年の52.5%。この時はアウトはほとんど三振という状態でした。
かつては、106 MPHもマークしたことのある左腕。スタットキャスト導入からは彼が最速です。それまでは、解析の結果ではボブ・フェラー、ノーラン・ライアンがそれ以上をマークしたと言われてはいます。
おそらく本人にも球速低下の自覚があるがゆえに、コントロールも乱れ、行動もおかしなことになったのだと思います。2023年、どのような投球を見せるのか、本当に興味深いです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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