「違うぞ!」スプリングTでの実感
現地2020年2月29日、スプリングトレーニングの真っ最中でありますが、グレープフルーツ・リーグ、カクタス・リーグが始まって約10日が経過。いつのマニカ2月も終わってしまいましたね。3月に入り、いよいよ26日の開幕まで1ヶ月を切ってきました。
そんなスプリングトレーニングのゲームのど真ん中の段階に来て、2020年のボールについての話題が出てきました。
実際にスプリングトレーニングで投げた2人の投手が、2020年のボールについて証言してくれています。
やや柔らかく、縫い目が高い
「2019年とは明らかに違う!」というボールについての感想をもらしたのはヤンキースの田中将大投手(Masahiro Tanaka )とフィリーズのザック・エフリン(Zach Eflin )。
表現は違うものの2人に共通しているのは2019年のボールとは明らかに違うという感想でした。どうやら前年ほど飛ばないようですね。
田中将大投手 の感想:”2017年のボールと似ている”
現地26日に今スプリングトレーニングに初登板した田中投手。ナショナルズを相手に先発。2イニングを被安打2、失点2、被本塁打1、奪三振2という結果に終わりましたが、ボールについて感想をもらしました。
The one we’re using right now is pretty similar to what we used in 2017,” “But I’ll remark here that, it’s just how I feel.
「今年のボールは2017年のボールととても良く似ている。あくまで自分の使用感ですが」
ザック・エフリン “柔らかく感じる、縫い目が高い”
現地26日のツインズ戦に先発し、2回を1BBのみに抑えたザック・エフリンも2020年のボールについて以下のような感想を述べています。
I think it’s awesome. To me, they feel a little softer and you can definitely notice the seams a little more. Last year, it was like throwing a cue ball. The thing that was tough with last year’s balls was the mud they use to rub them wouldn’t stay on the baseball because it was so slick and hard
「ぼくは(今季のボールは)とてもいいと思う。僕の感覚ではちょっと柔らかくなったような印象。明らかにわかるのは縫い目が高くなっているところ。2019年のボールはキューボール※を投げているような感じだったからね。※ビリヤードの突き玉
去年のボールで難しかったのは、土をつけてなじませようとしても、(表面が)滑らかで硬かったので、なかなかなじまないところでした」
意味するところは?
ザック・エフリンの言う「柔らかい」というのは指のフィット感から感じるところと実際にバットにあたった後の反発係数の面の2つがあると思います。
投手の感想ですから、指から感じるボールの柔らかさというのが大きい要素だと思いますが、「去年はビリヤードのボールを投げてる感じだったからね」というのは投手側でもなんらかの反発係数を感じているのでしょうね。
また、「縫い目がやや高い」というのも注目ポイントですね。変化球の精度に影響を与えるのはもちろん、打球にも影響を与えそうです。それだけ空気抵抗も生まれますから。
よって、2人の感想から、仮説として2020年のボールは距離を抑えた作りにしている可能性がかなり高いですね。
ジュースド・ボールだった2019年
2019年の改造ボールの件は、ファンの方ならご存じの通りです。HR数が格段に増えました。ご欄の通り、2019年のHR数は前年の2018年の5585本を1,191本も上回る数字に。実に前年比121%アップ。1ゲーム当たりのHR数も2019年のHRの多さを表しています。
【MLB HR数推移】
- 2019: 6,776 / 1.39 per Game
- 2018: 5,585 / 1.14 per Game
- 2017: 6,105 / 1.26 per Game
- 2016: 5,610 / 1.16 per Game
- 2015: 4,909 / 1.01 per Game
- 2014: 4,186 / 0.86 per Game
2009年から2018年までの10年間の合計を調べますと50,197本。年平均で5,019.7本/年。いかに2019年の数が突出していたかがわかると思います。バーランダーも怒っておりました。
トリプルAではさらに実験的なことを試していたようで、こちらはさらに激増。選手の本来の評価を見誤らないように、ある程度指標を下げて見ないといけないほどでした。かなり飛び出した規格も使用していた可能性が高いと思います。
2014年はここ10年最低だった
さて、ここ10年でもっともHRが少なかったシーズンは2014年で、4,186本でした。2019年はそれと比べると161%もアップですね。なお、2019年のHRタイトルはNLはピート・アロンソ(NYM)が53本、ALはホルヘ・ソレアー(KCR)の49本を放ちました。
では2014年のタイトルはどうだったかというと、NLはジャンカルロ・スタントン(当時MIA)が37本を放ち、ALはネルソン・クルーズ(当時BAL)が40本を放ち、タイトルを取りました。2019年の数字と比べるとタイトルリーダーの数も10本ほど違いますね。
シーズンは変えてくる可能性もあり得る
もしも田中投手の直感が正しければ、今季は2017年と同じくらいのレベルのHR数になることが想定できます。そうなれば、前年よりも飛ばない。
設定ゾーンとしてはかなりいいところをついている気がします。前年より激減しても2019年の改造度合いが浮き出てきますから。
ただし、2020年のレギュラーシーズンはどうなるかわかりません。普通ならシーズンに使うボールをスプリングトレーニングでも使用すると考えたいところですが、そうとも言い切れないのがMLBのやり方。
2019ポストシーズンは飛ぶボールではなかった
なぜなら、MLBは2019年のポストシーズンに急遽、ボールを変えてきた実績があるからです。ポストシーズンにです。
レギュラーシーズン中は2018年までならフェンスを超えないような当たりがHRになるケースが多かったです。これは改造ボールの影響ですね。しかし、ポストシーズンに入り、同じような観点で打球を追っていたら、HRにならないケースが何度も見られました。突然、飛距離を抑えた規格に変更してきたのです。選手自身も飛ばなくなったという感想を持ちました。
このボール問題、レギュラーシーズンに入ってどうなるでしょうか?スプリングトレーニングで使用された規格なら、2020シーズンのHR数は前年より落ちますね。どうなるか、見ものです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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