コミッショナーが324試合のサスペンションを科す
現地2022年4月29日、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、ロサンゼルス・ドジャースの右腕トレバー・バウアー投手に対し、家庭内暴力と性的暴行に関するポリシー(domestic violence and sexual assault policy)に違反したとして、324試合(丸2シーズン)のサスペンション(出場停止処分)を科しました。
サスペンションのスタートは29日から
トレバー・バウアーは2021年7月2日から、リストリクティッド・リストに入っていました。これは何か法的な手続きが進行している時に入れられるステータスです。
ただ、MLBと選手会の合意により、調査期間中はアドミニストレーティブ・リーブで有給扱いとしており、期限が来れば延長を繰り返し、2022シーズンにおいても継続し、4月29日まで延長されてきました。
今回の324試合のサスペンション処分はいわゆる2021年7月2日に遡及するのではなく、2022年4月29(金)からスタートとなります。丸2年という相当厳しい処分です。2024年4月28日まで。
サスペンション期間は無給
また、このサスペンション期間はこれまでのアドミニストレーティブ・リーブと異なり、無給となります。
ドジャースの支払い
トレバー・バウアーとドジャースは、2021年2月に3年/$102M (2021-23)という短期間で単価の高い契約でサイン。
- サイニング・ボーナス:$10M
- (2021年3月15日、7月15日にそれぞれ $5Mずつ支払い)
- サラリー:
- 2021:$28M (2021年11月1日受け取り)
- 2022:$32M
- 2023: $32M
- オプトアウト:
- 2021年終了後(バイアウト$2M) :その場合、ドジャースは2021年の$28Mのうち、$20Mを利息なしで繰延払い。スケジュールは2031年から2040年までの10年間、12月1日に$2Mずつ支払い
- 2022年終了後(バイアウト $15M )
バウアーは2021シーズン終了後にオプトアウトせずにドジャースに残留することを選択しています。
これまで支払った額と支払う見込みの金額は$102Mのうち、サイニング・ボーナスの$10M、2021年のサラリーである$28Mの計$38M。そして、2022シーズンの$32Mのうち、現地2022年4月28日までの18試合分は支払う対象期間に。計算すると、$32Mを162試合で割れば$0.198M/Gameで、18試合分は$3.564M。そして残りの$28.436Mは支払い免除、さらに2023年の$32Mもそうで、ドジャースは計$60.436Mを支払わずに済むことに。
いずれにせよ、サスペンションは契約の終了後も継続しているという設定となっています。
DVポリシーに抵触した疑惑
トレバー・バウアーと被害女性はInstagramを通じて知り合い、2021年4月21日に初めて面と向かって会いました。彼女は、最初の出会いがエスカレートし・・・と説明。それ以降はナイーブな内容なので記載は避けたいと思います(リンク)。
女性はまた、バウアーに対して一時的に一方的接近禁止命令を提出。それが出て以降、MLBも調査に入り、リストリクティッド・リストに入りました。
ロサンゼルス高等裁判所の判事は接近禁止命令を却下。そして、2022年2月にロサンゼルス地方検事局は、バウアーを刑事事件として追及しないことを発表しています。
なお、被害女性は今後、民事で訴える権利も有しています。
処分はコミッショナーに権限
MLBはバウアーがリーグのDVポリシーに違反したかどうかを判断するため、約10ヶ月にわたり、独自に別の調査を敢行。MLBとMLBPAが合意したDVポリシーの下では、コミッショナー事務局は、たとえ裁判で起訴されたり有罪判決を受けたりしていなくても、選手を出場停止にする権限をもっています。
その捜査が進む中、MLBとMLBPAはバウアーの現ステータスを複数回延長することに合意。2021年のレギュラーシーズンの81試合と2022年のシーズン開幕18試合を欠場したのはご承知の通りです。
過去のケース
MLBはこのDVポリシー違反で過去6年間に、このケースを含めて15人の選手に15試合から162試合のサスペンション処分を科しています。また、刑事告訴が取り下げられた後でも、DVポリシーに基づき、サスペンション処分を下された選手の例は複数あります。
その一例が2019年8月のフリオ・ウリアスのケース。ウリアスは、同年5月にビバリーセンターの駐車場でガールフレンドを地面に押し倒したということで、軽犯罪のDV容疑で逮捕。起訴されなかったものの、マンフレッド・コミッショナーは彼に20試合のサスペンションを科しました。なお、ウリアスは不服申立てをすることなくその処分を受け入れています。
また、これまで起訴されずに同ポリシーの違反でサスペンション処分を受けた最長記録は、リリーバーのサム・ダイソン(2019年のツインズが最後)が科されたフルシーズンの162試合(2021年3月)。
バウアーはあくまで不服申立て
この処分に対して、バウアーはツイッターで、「私は、リーグのDVポリシーに違反したことを否定します。私はこの処分を不服としており、勝訴することを期待しています。このプロセスの間ずっとそうしてきたように、代理人と私は手続きの機密性を尊重します」と述べています。
処分に異議を申し立てたのは初めてのケースです。
また、大手メディアの情報では、別の事件としてオハイオ州の女性が、バウアーから暴力を伴った性交渉を強要され怪我を負わされたと主張していると報じており、この女性はMLBの調査官にも協力したとのこと。
なお、バウアーの代理人はこの申し立てを “全くの虚偽 “として却下。2022年4月にサンディエゴの女性、それをスクープしたメディア、また上記のオハイオ州の件を報じたメディアを名誉毀損で告訴しています。
31才のバウアー
今後、バウアーは、コミッショナーの処分に対して異議申立てを行い、それが通るまでは欠場は継続。仮に異議申し立てが通ったとして、目的は名誉回復のみになる可能性も。
そして、バウアーにとって状況が好転するには、処分の逆転しかありません。2年というサスペンション処分の根拠をどう客観的に覆させるか。
いずれにせよ、MLBは被害者に最大限配慮するデリケートさを失うことはしないでしょうから、バウアーは相当厳しい立場にあることは変わりありません。
お読みいただき、ありがとうございました。
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