パドレス、ローテーションを補強
現地2025年2月12日、サンディエゴ・パドレスはレッドソックスからFAとなっていたローテーション右腕のニック・ピベッタ(Nick Pivetta)と4年契約でディールをまとめました。こちらはまもなくオフィシャルとなります。
すでにピッチャーとキャッチャーのワークアウトがスタートする時期となったにも関わらず、ここまで残ってしまったニック・ピベッタ。動向が心配でしたが、マルチイヤー・ディールとなったのは良かったです。
契約内容
両者の合意内容は大筋で以下の通り。
- 4 年/$55M (2025-28)
- サイニング・ボーナス:$3M
- 2025: $1M | 2026: $19M | 2027:$14M | 2028 :$18M
- 2026年と2027年のワールドシリーズ終了後にオプアウト可
ニック・ピベッタの2024年のサラリーは1年/$7.5M。レッドソックスは今オフ、初FAとなったピベッタに対してQOを提示したのですが、ピベッタはこれを拒否。市場に出ました。
極端な配分
さて、この契約の特筆はやはり2年目と3年目終了後の2回、オプトアウトが入っていることですが、もう1つは1年目のサラリーの$1Mです。サイニング・ボーナスがあるとは言え、それを併せても2024年に満たない安さはどうなんだろう?と思うのですが、ずいぶんと思い切った配分だなと思います(サイニング・ボーナスの受取時期は不明ですが、たぶん2025年に受け取るのでしょう)。
この極端な配分のメリットはキャッシュフロー的なところにあるのでしょうが、贅沢税の計算はAAV(Annual Average Value)でなされるので、$13.75Mで計上されます。余計なお世話ですが、ピベッタの2024年度分の所得税の支払いがうまくいくことを祈ります。
ピベッタのエージェントはCAA Sportsです。
イニング・イーターのピベッタ
とにかくイニング・イーターとして定評のあるニック・ピベッタ。2024年は好投しながらも、ちょっと気の毒なシーンが何度もあったのも事実です。
ニック・ピベッタはカナダ出身で、ドラフトは2013年のナショナルズの4巡目指名。2015年のトレード・デッドラインでナショナルズがジョナサン・パペルボンを獲得したディールでフィリーズに移籍。
フィリーズ時代
デビューはその2年後の2017年4月30日。1年目から26試合に先発し、133.0 IPで8勝10敗、ERA 6.02を記録。
2018年もローテーションとして機能し、6月18日には、自己最多となる13奪三振をマーク。4シームも最速98mph(約158km/h)を記録するなど力強さも発揮。この年は33試合中、32試合に先発し、164.0イニングを投げ、7勝14敗、ERA 4.77を記録。なお、SO9は10.32でナ・リーグ5位にランクイン。これは1997年にカート・シリングが記録した11.0に次ぐフィリーズのフランチャイズ史上2番目に高いSO9に。なお、サイ・ヤング賞4度のスティーブ・カールトン、その他ロイ・ハラデー、クリフ・リー、コール・ハメルズらはいずれもシーズンSO9は一桁しか記録しておりませんでした。ザック・ウィーラーがシーズンSO9 10.4を記録したのは2021年のことです。
2019年は特に怪我などはなかったのですが、調子を落とし、30試合中13試合に先発し、4勝6敗、ERA 5.38。
2020年はリリーフで3試合5.2 IPに登板し、8月21日にレッドソックスにトレード。レッドソックスでは2試合に先発して、ERA 1.80と浮上のきっかけを掴みます。
レッドソックスで好転!
レッドソックスに入ってからのピベッタは状況を好転させました。2021年6月24日のレイズ戦では6.2イニングをノーヒットに抑える好投。この日は100球以上を投げたため最後までマウンドに立てず。降板後はジョシュ・テイラーが逆転を許して試合にも敗れました。
2021シーズンは31試合に登板し、9勝8敗、ERA 4.53。
特に素晴らしかったのはポストシーズンで、ロングリリーフに起用され、素晴らしい投球を披露。2021年10月7日のレイズとのALDS Gm1では、エドゥアルド・ロドリゲスが2回を投げ切れなかった後に7回まで計4.2イニングを3失点に抑え、なんとかゲームを立て直すも、このゲームは敗れました。
10月10日のGm3では、4-4の同点で迎えた10回に7番手投手として登板。延長13回まで4.0イニングを投げ、無失点、7三振と好投。最後はクリスチャン・バスケスが13回裏にサヨナラ2ランHRを放ち6-4でレッドソックスが勝利。ピベッタの投球があってこそのサヨナラ勝利でした。
ALCSでは、2021年10月19日のアストロズとのGm4に先発。この試合でも5回1失点と堅実な投球を見せ、2-1とリードしていた段階で降板。ただ、残念ながら、ブルペンが8回に1失点、9回に7失点を喫して惨敗し、最終スコアは9-2となり、ピベッタの好投を無にしてしまいました。
2022年には、33試合に登板して10勝12敗、ERA 4.56とキャリア初の2ケタ勝利をマーク。イニング数もキャリアハイの179.2イニングを投げ、SOは175。
2023年は38試合中、16試合に先発し、ERAは防御率はフルシーズンで自己ベストの4.04をマーク。イニング数も142.2をマークし、奪三振は183。
2024年、彼は肘の故障のために4月に1ヵ月間離脱しましたが、その後はフルタイムで先発に復帰。145.2イニングを投げて6勝12敗、ERA 4.14、SO 172。
このようにニック・ピベッタは2021年からレッドソックスのローテーションとして大いに機能。2021年から2024年までの4シーズン平均のイニング数は156.0。これはパドレスにとってもありがたいイニング・イーターかと思います。
2021年以降はカーブの品質が向上。より遅く、より大きくなりました。さらに2023年からはスウィーパーも威力を増し、投球に幅を持たせています。
パドレスは贅沢税超過へ
パドレスは2021年から2023年まで3年連続で贅沢税超過となっていましたが、2024年は$237Mの閾値内に収め、一旦はリセットされました。
しかし、2025年はピベッタのAAV$13.75Mも加わって40manの予測ペイロールが$262.5Mとなり、$241Mの閾値を超えました。
ディラン・シーズのトレードを持ちかけていたのはなんとかラインを超えないようにするためでしたが、もはや肚をくくったというところでしょうか。
パドレスはD・シーズをキープへ
現地2025年2月13日、パドレスのPOBO(President of Baseball Operations)のAJ・プレラーはこのオフシーズンにトレード話の噂が絶えなかったディラン・シーズをキープする方向であると述べています。他にトレードの噂としてはマイケル・キングの名前も若干上がっていましたが、彼ももちろんキープ。
2025年の右腕ローテーション
これによりパドレスの現時点の2025年のローテーションはご覧の面々が候補となります。
- ディラン・シーズ|2024年:14勝11敗、ERA 3.47
- マイケル・キング|2024年:13勝9敗、ERA 2.95
- ダルビッシュ有|2024年:7勝3敗、ERA 3.31
- ニック・ピベッタ|2024年:6勝12敗、ERA 4.14
- マット・ウォルドロン|2024年:7勝11敗、ERA 4.91
- ランディー・バスケス|2024年:4勝7敗、ERA 4.87
上記6名はすべて右腕。現地2025年2月13日は2020年にレッドソックスで投げたことのある左腕のカイル・ハート(Kyle Hart)とメジャー契約でサインしていますが、果たしてローテーションまで参戦できるかは不明。左腕にとっては大チャンスなのですが、どうなるでしょうか?
ちなみに左腕はリリーバーなら松井裕樹投手、エイドリアン・モレホン、ワンディー・ペラルタ、トム・コスグローブ(Tom Cosgrove)らがおります。
ジョー・マスグローブはTJリハビリ中
パドレスの先発投手と言えばジョー・マスグローブの名前が浮かびますが、彼は2024年10月2日(日本時間3日)のワイルドカード・シリーズGm2で右肘に張りを訴えて降板。その後の検査で右肘のUCL(内側側副靭帯)の断裂が判明し、10月4日にはトミー・ジョン手術を受けることが決定。ほどなく手術を行いました。これにより、マスグローブは2025年の全休が決定。復帰は2026年の開幕からというのが順当なスケジュールになると思われます。
QO
ニック・ピベッタはレッドソックスからQOを提示されてそれを拒否してFAとなった関係で、レッドソックスには補償が、パドレスにはペナルティーが与えられます。
まず、レッドソックスへの補償ですが、レッドソックスは2024年は贅沢税の閾値を超えておらず且つレベニュー・シェアリングを受けていませんので、2025年ドラフトでCB(Competive Balance)ラウンド B の後に指名権を得ることに。
また、パドレスも2024年は贅沢税の閾値を超えておらず且つレベニュー・シェアリングを受けていない立場で、その場合は2番目に高い指名権を失い、それとともに、インターナショナル・ボーナス・プールの$0.5Mの枠も失います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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