注目対決が粘着物質にフォーカスが当たってしまう
現地2023年4月19日、ニューヨークの新旧のクラブがロサンゼルスで対決しているというメッツ@ドジャース戦。この日は3ゲームシリーズの最終日でここまでは1勝1敗。
ちなみにメッツの青とオレンジは、かつてニューヨークにあったブルックリン・ドジャースの青とニューヨーク・ジャイアンツのオレンジを組み合わせたものです。
最終日は、ドジャースがかつてメッツに在籍していたノア・シンダーガードが先発。一方のメッツはかつてドジャースに在籍したこともあるマックス・シャーザーが先発するという顔合わせ。
歴史的にも、選手にお金をたくさんつぎ込んでいる点においても非常に面白い両クラブの対決の最終日だったのですが、この日はマックス・シャーザーのスティッキー・スタッフ(粘着物質)の件で一色になってしまいました。
シャーザーへ執拗な粘着物質チェック
何が起こったのか、シャーザーに対する粘着物質のチェックの経緯を見ておきたいと思います。
【1】ルーティーン・チェック(2回裏終了後)
1度目はルーティーン・チェックで、2回裏の投球終了後にホーム・プレート・アンパイアーのダン・ベリーノ(Dan Bellino)氏がシャーザーの右手とグラブをチェック。この時、1Bアンパイアーのフィル・カッツィ(Phil Cuzzi)氏もチェックし、シャーザーの手がベタベタしすぎであると結論づけました。このやりとりの後、シャーザーは次のイニングでマウンドに上がる前にMLB関係者の前で手を洗ってくるように指示されています。シャーザーによると、MLB関係者の前でアルコールで粗い落としたとのことでした。
【2】グラブ交換(3回裏登板前)
そして2度めのチェックは3回裏の登板前。シャーザーがマウンドに上がる際、1Bアンパイアーのカッツィが彼のグラブを取り上げてチェック。メッツのバック・ショウォルター監督に「これではだめだ」と言わんばかりに渡して、シャーザーに新しいグラブと交換するよう指示。この時、もう一度手を拭き取るようにと併せて指示を出しています。そして仕方なくグラブを取りに行くシャーザー。
Max Scherzer had to change his glove and he was NOT happy about it pic.twitter.com/YUa8VSsK7C
— Talkin’ Baseball (@TalkinBaseball_) April 19, 2023
新しいグラブの中身と右手もチェックしたカッツィはシャーザーの胸にドンと渡すなかなかの粗い対応。サイ・ヤング3度の投手に敬意も何もあったものではありません。
【3】退場処分(4回裏登板前)
そして3度目のチェックは4回裏のまたしても登板前に行われました。
この最終チェックの後、シャーザーは審判に「ただのロジンだ」と繰り返し叫んでいるように見えましたが、フィル・カッツィは退場処分を告げます。
Scherzer Ejection.
— Rob Friedman (@PitchingNinja) April 19, 2023
"It's Rosin" pic.twitter.com/6o3MGu21PI
シャーザーの説明
マックス・シャーザー本人の説明ではこういうことのようです。
- 手の粘着性は、汗とロジンからそうなったもので、「少し塊状のもの」であり、カッツィが2回裏終了時にそれを洗い流すように指示。シャーザーはその通りにし、しかもアルコールを使って洗い流した。
- シャーザーは試合後、アルコールで手を洗った結果だと説明。「ロジンを塗るときに、ちょっとだけアルコールがベタベタすることがある」と。また、カッツィはシャーザーに、グラブにロジンが多くつきすぎているから新しいグローブを用意するように言った。シャーザーはそれに従い、新しいグラブと交換した。
- シャーザーは、4回のマウンドに上がる前にもう一度チェックされることは分かっていたという。
- 4回裏が始まる前のチェックではカッツィから「まだ粘着性が強い」として判断されて退場に。
シャーザーは「汗とロジンで手がベタベタするんだ。合法的な物質を使用しているのに、手がベタベタしていると判断されて退場させられるなんて、理解できない」と話しています。
抗議の際、シャーザーは「私の子供の命に誓って、私は他のものは使っていないよ。これは汗とロジン、汗とロジンだ」と主張したと言います。
審判の見解
なお、審判側の見解として、ホーム・プレート・アンパイアーのダン・ベリーノは、カッツィの下した判断を支持。シャーザーの右手は通常よりかなり粘りがあったと語っています。
回転数の上昇は無し
ピッチャーは通常、回転数を上げるためにグリップ増強剤を使用するものですが、この日のシャーザーの投球は、回転数の上昇を示さなかったと言います。また、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、グラブ・チェックはドジャースが要求したものではないとかつてのチームメイトへ「疑わないでね」という意味のメッセージも出しております。
フィル・カッツィ氏は3度目
試合後のインタビューでバック・ショーウォルター監督は、「フィルはそのことで知られている男だ」とも言っている通り、今回も含めた過去3度の粘着物質のチェックで退場処分にしたのはいずれもフィル・カッツィ氏です。
Including Max Scherzer today, there have been three pitchers to get ejected for foreign substances since the checks were instituted
— Talkin’ Baseball (@TalkinBaseball_) April 19, 2023
Phil Cuzzi was the umpire for all three
(via @BaseballDoesnt) pic.twitter.com/bw9nU3OB2i
なお、今季の事例としては前の週にヤンキースの右腕ドミンゴ・ヘルマンが、ロジンを使いすぎだとして審判に指摘され、手を洗うように指示されています。この時は、彼の投球に影響を与えるような外部物質の基準に達していないと判断されたため、退場処分にになりませんでした。
上記の件もあり、今週は取締を強化したのかもしれません。
ロジンの使用について
ボールに関する規則として、選手がボールを「意図的に変色させたり、破損させたり」する方法のリストにロジンが含まれています。また、2023年3月16日にMLBは各クラブにロジンの使用がレベルによっては反則に当たる可能性があるとのメモを送付しています。
「選手のロジン使用は、常に公式野球規則の要件と期待に合致したものでなければならないことを心に留めておいてください。ロジンを過剰に使用した場合、あるいは誤用した場合(グローブやユニフォームの他の部分に使用した場合など)、ロジンは審判によって禁止異物と判断され、その使用は選手を退場させ懲戒の対象となる場合があります。OBR 3.01 および OBR 6.02(d) を参照のこと。さらに、プレーヤーはロジンを意図的に他の物質(例えば、日焼け止め)と組み合わせて、さらなる粘着性を生み出してはならない。」
ポイントはロジンというより粘着性にあるようですが、これを客観的な要件にするのはなかなか難しいものがあると思います。
今回の件も別のアンパイアーなら、スルーだったかもしれません。
10日のサスペンションだが・・・
シャーザーには自動的に10日のサスペンションが科されますが、これは不服申立てが可能です。おそらくシャーザー側はそうすると思います。
東京五輪で使われたSSKのボールは絶賛されましたが、ツルツルのボールをやめれば済むことのようにも思います。
メッツが勝利
シャーザーを緊急降板せざるを得なくなったメッツですが、5-3で勝利。シリーズ勝ち越しを決めました。
マックス・シャーザーは、3イニングで降板となりましたが、被安打1、スコアレス、BB 2、SO 3という成績でした。今季3勝目のチャンスだっただけに、悔しかったでしょうね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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