”Thor”はまた1年契約で合意
このオフシーズンはほとんど動いていないロサンゼルス・ドジャース。メガ・ディールと言えばドジャースでしたが、今オフはメッツにその座を譲っている形となっています。その「静かな姿勢」にはいつくかの理由があるのですが、それは後述するとして、そんなドジャースがようやくFA獲得に動きました。
”Thor”のニックネームでおなじみのノア・シンダーガード(Noah Syndergaard)と1年で合意です。
契約内容
現時点でわかっている契約内容はご覧の通りです。
- 1年/$13M(2023)
- $1.5Mインセンティブ
インセンティブの内容はおそらくイニング・ピッチ(投球回数)、登板試合数など稼働率を意識したものと、それにともなう良いシナリオとしてのアウォード・ボーナスという設定になると思いますが、現時点では詳細はわかっていません。追って記載します。
2022年よりダウンしても受諾した理由
2年前の話になります。現地2020年3月26日にトミー・ジョン手術を受けたノア・シンダーガードは、2021年に復帰。ただし、登板は9月28と10月3日の2試合のみで、いずれも1イニングのみの登板でERAは9.00。リハビリ途中のオーバー・ペースがたたり、かえって復帰時期が遅れた上に、本来の投球とはほど遠いものでした。
2021年終了後、初FAとなったノア・シンダーガードに対し、メッツはクオリファイング・オファー(QO)を提示(金額は$18.4M)。ノア・シンダーガードの2021年のサラリーは$9.7Mで、しかも上述の通り、2イニングのみの登板であったにも関わらず、オファーしました。
通常であれば、QOは提示しない成績ですが、これはメッツなりの誠意の表われだったのでしょう。
しかし、ノア・シンダーガードはこれを拒否。FA市場に打って出ました。そこでサインしたのがエンゼルスで、QOを上回る1年/$21M(2022)でサインしたのでした。
2022年のノア・シンダーガード
ノア・シンダーガードにとって2022年は術後初のフルシーズンであり、この1年を経て長期契約へというシナリオを描いていたようです。ただ、2022年の成績は、まあまあではあったものの、とりわけ素晴らしいものでもありませんでした。
エンゼルスでは、15試合に先発し、80.0イニングを投げ、5勝8敗、ERA 3.83、SO9 7.2、BB9 2.5。
たエンゼルスは、シーズン半ばでポストシーズンを諦めたため、トレード・デッドラインでは売り手に回り、その流れでノア・シンダーガードもフィリーズへトレードしました。なお、フィリーズとの別のトレードで、ブランドン・マーシュを出したエンゼルスはJT・リアルミュートの次の捕手として期待されるローガン・オホッピを獲得したのでした。
シンダーガードはフィリーズでは10試合に登板し、その内、9試合に先発、1試合はリリーフでした。54.2イニングで5勝2敗、ERA 4.12、SO9は5.1でBB9は1.5。フィリーズでの登板の方が内容は良かったです。1シーズンを通して、25試合、24スタート、134.2イニングで10勝10敗、ERA 3.94、SO9は6.3、BB9は2.1でした。
また、ポストシーズンではNLDS Game4でブレーブスを相手に先発し、3イニングで許したヒットはHRの1本のみで、もっと投げても良かったのではないか?という素晴らしい投球を披露。ただ、ワールドシリーズGame4では3イニングで2失点とNLDSの投球を上回るのもではありませんでした。
ノア・シンダーガードは今オフ、ドジャース以外の複数のクラブからマルチイヤーの高額オファーを受けていたようです。ただ、今回も1年契約でサインすることで、2023年オフに再びFA市場に出て、複数年の高額契約を狙っていると・・・というところかと。また、サラリーを抑えたいドジャースにとっても1年契約の方がありがたいという双方の受給がマッチしたディールでもありました。実際、トミー・ジョン手術後の2年目は、1年目の実績を上回るケースが多く、うまく嵌る可能性は十分にあります。
ベロシティーが復活なるか!
1992年8月29日生まれのノア・シンダーガードは2022年の誕生日で30歳となりました。
ノア・シンダーガードと言えば、かつてはメジャーで屈指の好投手のうちの一人でもありました。
デビューイヤーの2015年は9勝7敗をマークし、ROY(新人王)の投票で4位に。翌年の2016年は31試合、30先発で、183.2イニングを投げ、14勝9敗で、ERA 2.60、SO%(奪三振率) 29.3%、BB%(与四球率)5.8%、GB%(ゴロ率)50.5%。この年のfWAR(FanGraphs 計算のWAR)は、6.0! これは、クレイトン・カーショウ、ホセ・フェルナンデスに次ぐメジャー3位の成績でした。
2015年から2019年にかけて5シーズンで、716.0イニングを投げ、ERAは3.31。SO%は26.4で、BB%は5.6。この時期はまさに”Thor”のようで、マウンドに立ちはだかるヒーローでもありました。
実際、4シームのアベレージは、2016年が98.7mph、2017年が98.6mph、2018年が97.6mph、2019年が97.8mph をマーク。シーズンを通した先発投手の平均のベロシティーが、このようなすごい数字だったのです。100mphを連発していました。
しかし、トミー・ジョン手術後の2022年の4シームのそれは94.1mph。全盛期の2016年よ4.6mphもダウンしているのです。
2016年に10.68をマークしたSO9は2022年は6.35。かつての無双状態ではなくなりました。トミー・ジョン手術後の2度めのフルシーズンとなる2023年にかつてほどではないにしても強いボールが復活するかが今後のキャリアを決めそうです。
ドジャースのローテーション
2022年はウォーカー・ビューラーがシーズン途中で離脱。どうなるか?と思われましたが、トニー・ゴンソリンが16勝1敗、タイラー・アンダーソンが15勝5敗をマークし、当初それほど計算に入れていなかったこの2人の圧巻の投球のおかげで、シーズン111勝を達成。NLウェストを制覇しました。
今オフはクレイトン・カーショウと1年/$20Mで再契約したものの、タイラー・アンダーソンをFAで失いました(エンゼルスとサイン)。
ウォーカー・ビューラーは、2022年8月にトミー・ジョン出術を行い、2023シーズンの復帰は微妙です。早くて9月で、数試合に登板というところか、2022年は全休かもしれません。
よって、安定感のあるフリオ・ウリアス(17勝)を軸に、クレイトン・カーショウ、トニー・ゴンソリン、トミージョン手術から復帰のダスティン・メイ、そしてノア・シンダーガードとあと1人というローテーションになると思われます。トニー・ゴンソリンはシーズン後半に疲れから前腕部を傷めましたので、2023年はどこまでやれるか?やや不透明な部分もあります。
ドジャースが今オフ、静かな理由
今オフ、ドジャースの動きが静かな理由は3つほどありそうです。
【1】贅沢税のリセット
やっぱり気にするんだな?というのがドジャースの贅沢税への態度。ドジャースは2021年と2022年に2年連続で贅沢税のしきい値を突破。
Season | LAD CB TAX | Threshold |
---|---|---|
2021 | $285.6M | $210M |
2022 | $302.4M | $230M |
2023 | $199.2M ※ | $233M |
2年連続の超過はペナルティーが厳しくなるため、2023年は$233Mを下回るように、意図的に調整しています。タイラー・アンダーソンや、コディー・ベリンジャーを流出させたのも理由はそれです。
その甲斐あって、現地2022年12月14日時点では、$32Mほどスペースが空いております。
一度、しきい値内に収まれば、贅沢税はリセットされますので、2023年は$233MM未満に抑えるように動きそうです。
【2】万が一のバウアー復帰に備えた動き
トレバー-バウアーのサスペンションが裁判によって解かれた場合、ドジャースの2023年の40manのサラリーは一気にしきい値付近にまで上昇。万が一、こうなってしまうとしきい値を超える可能性も出てくるので、それを警戒しての動きでもあります。なお、それは2023年1月にでも判明する予定です。
【3】ファンタジー:「大谷選手の獲得」
ドジャースの動きが今オフ、静かな理由の3つ目は、大谷選手獲得も視野に入れている可能性があるということ。もっとも、これは噂でしかありませんが、チラホラと話が出ています。
大谷選手は2023年終了後にFA。そしてエンゼルスはオーナーが代わることが決まっており、現オーナーは2023シーズン開幕前の売却成立を望んでいます。大谷選手の2023年終了後の動向は、色々な要素が絡んでいますが、「ドジャース」というのも有力な選択肢の1つです。
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント
オホッピはマーシュとの交換だよ
はい。ご指摘ありがとうございました。記事内修正いたしました。