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【タイラー・スキャッグス事件】エリック・ケイの有罪判決確定とマット・ハービーのサスペンションについて

エリック・ケイ(元LAA社員)に有罪判決

 去る2019年6月30日に遠征先のテキサス州のホテルで急死したエンゼルスの左腕投手、タイラー・スキャッグス(Tyler Skaggs)の裁判に判決が出ましたので、まとめておきたいと思います。

 現地2022年2月17日、テキサス州フォートワースで開かれていた連邦陪審は、元エンゼルスのコミュニケーション・ダイレクターの地位にあったエリック・ケイをフェンタニル入りのオピオイドをタイラー・スキャッグスに融通したこと、そしてその結果同投手を死亡させたという2つの容疑で有罪判決を受けました。正確には陪審が政府主張(日本で言う検察)に同意したということに。

量刑は禁錮20年の可能性

 そしてエリック・ケイは2022年6月28日ごろを目安に量刑が確定する見込みで、20年の禁固刑ではないかと言われています。

 評決が読み上げられた後、エリック・ケイとその家族は、呆然と沈黙。数メートル離れたところにいたスキャッグスの未亡人カーリーと彼の母親デビー・ヘットマンが涙を流し抱き合ったという光景があったようです。
 有罪が確定した後、エリック・ケイの弁護人のレーガン・ウィンはこの評決を批判したと同時に「この件に勝者はいない」と語りました。

10日ほど続いた裁判

 この裁判は2022年2月9日から8日間行われ、陪審員は2時間足らずで審議に入ったようです。その途中には現役MLBプレーヤーも証言に立ったことからMLB界隈をざわつかせていました。それらは後述します。

政府側VS弁護側

 最終弁論で連邦検事補のリンゼイ・ベランは陪審員に対して、「2019年6月30日にタイラー・スキャッグスと薬についてメールしていた人物が1人いて、それがエリック・ケイであった。そして、6月30日にタイラーがホテルの部屋に招いた人物も1人でそれもエリック・ケイであり、よって、彼のホテルの部屋に行き、タイラーの死を招いた」と主張。

 一方、エリック・ケイの弁護人のマイケル・モルフェッタは最終弁論で、「もしエリック・ケイが死んでいたら、我々はここにいなかったと思うか?」と。つまり、モルフェッタ弁護士は、死の最終的な責任は、亡くなった本人にあると主張。「完全に贅沢で特権的な生活を送っている大の大人が、自分の荷物も運ばずに、いつ自分の行動に責任を持つのか」と陪審員たちに語りました。メジャーリーガーは手ぶらではないと思いますが、とにかくやった本人に責任があるだろうという主張ですね。

 陪審員の評決は、連邦側の主張に同意したというのが今回の裁判の大筋です。

事実関係

 なまなましい事実関係としては、2019年6月30日、エンゼルスはレンジャーズとのシリーズのためにテキサスに飛び、フライトの前に、スキャッグスはケイに数錠の錠剤を頼んだことが証拠で示されていました。その夜、チームが到着した後、スキャッグスはケイに自分の部屋(469)に来るようにメールを送信。
 後日、ケイは捜査員に、自分は薬を持っておらず、スキャッグスの部屋に着いたとき、すでにスキャッグスの机の上には吸引するために砕かれて並べられた3つの錠剤があったと主張。さらにケイは、薬物は摂取しておらず、当時は抗オピオイド薬のナロキソンを服用していたと述べました。彼が部屋から去ったとき、スキャッグスには意識があったという。
 翌7月1日朝、妻カーリーがスキャッグスに複数のメールを送ったり、電話しても応答がなかったため、クラブに報告。警備員がスキャッグスの部屋を確認したところ、死亡しているのが発見された、という内容です。

現役メジャーリーガーの証言

 そしてこの8日間の裁判では、ギャレット・リチャーズ、C.J.クロン、アンドリュー・ヒーニー、ブレイク・パーカー、マイク・モリン、キャム・ベドローシアン、マット・ハービーも証言台に立ちました。

ハービーは「薬物提供者」と証言

 現地2022年2月9日、弁護団の冒頭陳述でレーガン・ウィン弁護士は、タイラー・スキャッグスの薬物入手先として元オールスター投手のマット・ハービーの名前が上がることを示唆。
 死亡した夜、エリック・ケイはタイラー・スキャッグスが「ピンクの粉」(錠剤を砕いたもの)を吸引している目撃したとされ、どこから入手したのか?と聞くと、『ハービーからもらったパーコセットだ』と言ったとされていたからです。パーコセットとはミュージシャンのプリンスも死に至らしめた薬物ですが、スキャッグスの体内からはパーコセットは発見されなかったものの、政府側はスキャッグスの部屋から発見された薬物の1つが処方箋オピオイドであると確認しています。

 そしてマット・ハービーは後日、タイラー・スキャッグスに薬物を提供したこと、そして自身も薬物を摂取していたことを認めました。

 これにより、現在FAのマット・ハービーがロックアウト解除後に数十日のサスペンションを科されるのは確実となりました。もう復帰出来ないかもしれません。

アンドリュー・ヒーニー

 現地2022年2月9日には、すでにドジャースとサインしているアンドリュー・ヒーニーも証言台に立ちました。ヒーニーはスキャッグスと一緒にマリファナを吸ったこと、そして多くの選手がオピオイド鎮痛剤を使っていることを認めました。しかし、スキャッグスにはオピオイドは提供していないとも。
 弁護人マイケル・モルフェッタは、「多くの選手がチームドクター以外のところでそのような薬物を摂取していますね?」と質問。ヒーニーは「何人かはわからない、少なくとも数人はいると言ってよいでしょう 」と答えました。ついでにMLB内の薬物の浸透状況を知る良い質問でしたね。
 なお、ヒーニーは8日に、スキャッグスが薬物を使用したことは知らなかったと証言したものの、この日の反対尋問では、彼がスキャッグスに送ったというメール内容について聞かれ、その中にあった ”geetered ”という言葉についてどういう意味か?と聞かれ、「ハイになることを表す言葉みたいなものだと思う」と証言。つまり、知ってたよね?というツッコミでしたが、定義を知らず使ったとうまく逃げました。

 その他の選手も提供者ではなかったと主張。ハービーだけが提供を認めました。

 現地11日の裁判では死因の物質の特定も行われ、「フェンタニルがなければスキャッグスは生きていたのかどうか?」そして引いてはそれを提供したエリック・ケイの責任について審議されました。ここで言うフェンタニルとは、オピオイドと同義で、オピオイド系鎮痛剤の中の1つの物質がフェンタニルです。

なぜ一般にも禁止されている薬物を摂取するのか?

 タイラー・スキャッグスの母親のデビー・ヘットマンによれば、2013年、スキャッグスはすでにパーコセットに「問題」を抱えていた(はっきり言うと、パーコセットをやっていた)と証言。それもあって、彼が2014年にトミー・ジョン手術を受けた際には、医師からスキャッグスにオピオイドを処方しないよう同意してもらっていたことなども、裁判の前半で証言。

 しかし、スキャッグスはエリック・ケイという薬の供給者を見つけ、チームメイトにもケイからなら薬を調達してもらえるよと伝えていたそうです。

 複数のソースを見てみましたが、選手がこの種の薬物に手を出す理由は、もうどうしようもないプレッシャーを軽減する目的が多いようです。体験した人でないとわからない大きな重圧があるということでしょうが、だめなものはだめですね。

 また、2019年6月30日にエンゼルスがテキサスへ遠征に行った際、エリック・ケイは薬物リハビリ後であり、それからわずか数週間しか経っていなかった時期にこの事件が起きたことも判明しています。

 なお、スキャッグスのご遺族は、エンジェルスに対しても過失があったとして、現在も民事訴訟を係争中です。

 この裁判によって少なくとも、MLB内もアメリカの一般社会と同様に汚染されていること、そして入手経路にクラブ関係者などもいることが照らし出されたことは意義があったと思います。これまでクラブ内が汚染されていたことは知らなかったというスタンスのエンゼルスでしたが、民事の方では厳しい採決が下るかもしれませんね。ただし、本人の責任が0%ではないことは確かでしょう。実はご遺族もそうお認めかもしれません(推測です)。それでも最愛の人が亡くなって悔しい要素があったのだ・・・そういうのが裁判なのかもしれません。

 お読みいただき、ありがとうございました。

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