ロバーツ監督の選択肢を広げる
現地2021年12月14日もMLBはロックアウト中。本日もCBA執行前の駆け込みディールで書ききれなかったディールの詳細について書いて行こうと思います。本日はスーパー・ユーティリティーのクリス・テイラー(Chris Taylor)がドジャースと再契約したディールについてです。
2021年のポストシーズンで大活躍
クリス・テイラーの2021年のポストシーズンでの活躍は記憶に新しいところです。レギュラーシーズンで106勝も上げながら、ジャイアンツが強すぎて地区優勝出来なかったドジャースは、ワイルドカードからのポストシーズン進出となり、カージナルスと戦いました。
このゲームは9回表まで1-1のタイスコア。ドジャースがかなり危なかったゲームですが、それを救ったのがクリス・テイラー。9回裏に見事にサヨナラ2ランHRを放ち、ドジャースをNLDSへ導いたのでした。
ドジャースはNLDSでは地区優勝を争ったジャイアンツと対戦。これまたギリギリのゲームとなり、3勝2敗で辛うじてNLCSへ進出。
そしてブレーブスとの対戦となったNLCSではドジャースはもう疲れ果てていました。特に先発ローテーションの疲弊が甚だしく、4戦を終えた時点でブレーブスが3勝1敗で王手をかけていました。
迎えたGame5、後がなくなったところで大活躍したのがクリス・テイラーでした。このゲームではなんと3HRを放ち、ドジャースを危機から救い、アトランタでの決戦に持ち込んだのでした。
クリス・テイラーと再契約したことで、現場のデーブ・ロバーツ監督の選択肢が格段に広くなりました。ナ・リーグが2022年もDH無しのままであるなら、クリス・テイラーがいることで、打撃中心にゲーム後半の追い込みをかけることが可能。
本当に素晴らしいユーティリティーです。
契約内容
さて契約詳細はご覧の通りです。
- 4 年/$60M (2022-25) + 2026 $12Mクラブオプション
- 支払い:$15M/(2022-23) / $13M (2024-25)
- 2022年の$12MクラブOptには、バイアウト$4Mもあり。
- トレードとなった場合、アサインメント・ボーナス:$2M
- 2026年の$12Mのサラリーは以下の場合にさらに追加
- $3M追加:2023シーズン開始前までにトレードされた場合
- $2M追加:2023シーズン終了から2024シーズン終了までにトレードとされた場合
- $1M追加:2024シーズン終了から2026シーズン開始までの間にトレードされた場合
- $1M追加:2025年に525打席到達、もしくは2025年にオールスター出場、シルバースラッガー賞受賞で
- 4年/$60MでAAVは$15M
初めて見たかもしれないというのが、トレードに関する期間別の規定。トレードとなった場合に発生するトレード・アサインメント・ボーナスはよく目にしますが、トレードの時期によって、オプションのベースサラリーにプラスされる設定というのは非常に珍しいと思います。
「簡単にトレードすんなよ!」というのがひしひしと伝わるコントラクトでもあります。なるべく2026年のオプションが行使されるように、バイアウトは$4Mと高めの設定ですね。ちなみに、エージェントはMeister Sportsというところ。
相場よりやや低かった
クリス・テイラーは狙い目でした。年齢が現時点で31才というのが少しネックではありましたが、守備の器用さ、素晴らしさ、そして打撃から言ってとても仕事の出来る選手。
ディールが成立する前、トレード・ルーモアさんの試算ではクリス・テイラーは4年/$64M。今回のディールは4年/$60Mでしたから、相場よりやや低かったですね。
ユーティリティーはサラリーが高騰しづらい
狙い目というのは、ユーティリティーの選手は本当に現場でありがたがられる存在ではあるのですが、サラリーがあまり高騰しないという傾向がある点です。本当はもっとその価値を認めてもらいたいくらいですが、ちょっと軽く見られる傾向があるのも事実。
実際、これほどの選手がAAVで$20M/年以下の$15Mというのは相当価値があると思います。よって、アグレッシブに乗り出すクラブが多数出るかと思ったのですが、競り合いにまで発展しませんでした。
あと2026年のオプションですが、2025年に頑張ってベース・ペイを上げて$12-15Mにしたとしても、バイアウトの$4Mとの天秤にかけられ、結局行使されずということも十分にあり得ます。契約上ででオプションが行使されやすい設定にするというのはなかなか難しく、限界がありますね。
クリス・テイラーとは
かんたんにプロフィールを。1990年8月29日生まれの31才。2022年シーズン後半で32才になります。
ドラフトは2012年のマリナーズの5巡目指名。デビューは2014年で23才の時。現在、ユーティリティーであるその礎はもともとはSSだったことにあります。デビュー・イヤーはSSを守り、内野のユーティリティーとなったのはその翌年から。
ドジャースに移籍したのは2016年6月のこと。2010年のドラフトでドジャースの1巡目指名であった右腕のザック・リーとのトレードでした。ちなみにザック・リーは2016年シーズンオフにウェーバーにかけられ、パドレスに移籍。マリナーズでは活躍の機会がなく、パドレスで2017年に1勝を上げたきり、メジャーのマウンドには上がっていません。
クリス・テイラーはドジャース移籍後の2017年に140試合、2018年には155試合に出場。ユーティリティーとして本領を発揮したのがこの頃でしたね。
MLB8シーズンで通算成績は、打率.261、OBP .337、SLG .443、OPSは.779。OPS+は109。HRは79本、RBIは309。HRよりも二塁打が期待できる選手で、二塁打のキャリアハイは2018年の35本。
ドジャース、すでに5M
2022年の贅沢税のしきい値がどれくらいになるのは現在、CBAで交渉中。抜本的に変えてくるかもしれません。
2021年のしきい値は$210Mでした。現時点でのドジャースの40manロスターの予測サラリーはすでに$235M。これはマイナー・プレーヤーの予測サラリーも加えた額です。ここから、さらにFAで選手を獲得するとなると、かなりの額になりますね。ちなみに2021年の40manロスターの贅沢税上のサラリーは$262M強でした。
2022年のドジャースの高額サラリー選手
ドジャースはとんでもない額でサインしている選手が何人もいるので彼らだけで相当なインパクトです。
- RHP トレバー・バウアー:$34M
- LHP デービッド・プライス: $31M (契約は2022年まで)
- OF ムーキー・ベッツ: $30.4M
- 3B ジャスティン・ターナー: $17M
- UTL: クリス・テイラー: $15M
- OF: A.J. ポラック: $12M
- SS/2B: トレイ・ターナー: $19.5M〜(ロックアウト後に決定)
- 1B/OF: コディー・ベリンジャー: $17M〜(ロックアウト後に決定)
- 1B/2B: マックス・マンシー: $8.6M〜(ロックアウト後に決定)
マックス・シャーザーはメッツに決まりましたので、さらなるインパクトはなくなりましたが、FAのクレイトン・カーショウをどうするか?$30Mほどは覚悟しないといけないかもしれません。
ロックアウト後のドジャースの動きが楽しみでもあります。
それにしてもドジャースは、キケ・ヘルナンデスもユーティリティーとして抱えていたのですから、どんだけの戦力をもっていたのかと思いますね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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