34才、ファイナルシーズンにクラブ107勝
現地2021年11月4日、サンフランシスコ・ジャイアンツのバスター・ボージー(Buster Posey )が引退会見を行いました。引退の意思が公式に表明されたのがその前日の3日。34才の若さでの引退となりました。
マスクから半分顔を出してゲームを指揮するその立ち居振る舞い、足を上げるかっこいい右打席、キャリア12シーズンの間に残してきた数々のアウォード、実績、その全てがまさに「スーパー・エリート」と言いたくなる素晴らしい選手でした。引退は非常に残念でなりません。
ポージーの魅力
バスター・ポージーの魅力を一言で表現するのは難しいです。それまで、ジョニー・ベンチ(Johnny Bench /1967-1983)、イバン・ロドリゲス(Iván Rodríguez/ 1991-2011)、そして2022年が現役最後となるヤディアー・モリーナなど、その恐ろしいまでの肩と素晴しい打撃で、ファンに捕手の見方を変えさせたプレーヤー達がいました。
捕手界で言えば、パッジと入れ替わり
なお、私感も入り恐縮ですが、捕手界でのポージーのポジショニングをジョニー・ベンチ、イバン・ロドリゲス、ヤディアー・モリーナで浮き上がらせるなら、このようなところでしょうか。
ます、ジョニー・ベンチは人気も実力もレジェンドぶりも大きな存在。メジャーの捕手の代名詞的存在で、もしも幅広い世代に、「メジャーの捕手と言えば?」と聞くと、「ジョニー・ベンチ」の名前を上げる人が多いでしょう。やはり一目置きたくなる捕手です。もちろん、幅広い世代というのがポイントで、現時点のメジャーを知る人にとってのレジェンドはヤディアー・モリーナでしょう。
そして、捕手としてのインパクトが宇宙人的にすごかったのが、イバン・ロドリゲス。ちょうど野茂さんのデビューの1995年とピークが重なっていますし、ブレーブスの前回のワールドシリーズ・チャンプがこの年でしたから、その肩のすごさに画面を2度見した方も多いと思います。
「大リーグ」は一旦は日本の視聴者の前から消えていて、野茂さんのデビューのおかげで再度放映の頻度も上がってきたのです。よって、パッジ(愛称)のすごさを知る人も多いですね。「メジャーリーグ」という呼び方が日本で浸透したのも野茂さんの功績が大きいです(ちょっと横道にそれました)。
イバン・ロドリゲスのピークと入れ替わるような形で出てきたのがヤディアー・モリーナで、イバン・ロドリゲスの現役引退と入れ替わるような形で出てきたのがバスター・ポージーでした。
【魅力1】モンスターショルダーでもないが、肩も有能
ポージーの場合、もちろん強肩です。ただ、2005年のヤディアー・モリーナのように64%のCS%を誇る訳でもなく、イバン・ロドリゲスのようにCS%が50%近辺、あるいはそれを超えるシーズンが10シーズンもある訳でもありません。
つまり、現役12シーズンで際立ったCS%を誇る訳でもありませんが、いずれもリーグ平均超えできっちりと仕事をしているという有能ぶりが光ります。キャリア通算で33%。これは同時代のモリーナで2021シーズン終了時点で40%。少し前のイバン・ロドリゲスで46%。
【魅力2】HRキングではないものの、打撃がエリート
今季、サルバドール・ペレスが48HRを放ち、ゲレロ・Jr.とともにタイトルを獲得しました。その際、ジョニー・ベンチがもつ捕手によるシーズン最多HR記録(45HR-1970)を塗り替えたことで話題になりました。
バスター・ポージーは、HRをたくさん打つ捕手ではありませんが、打撃成績が際立っています。
- キャリア通算打率 .302
- 100試合以上で.300超えのシーズン:6シーズン(2021も.304)
- バッティング・タイトル:.336(2012)
- 80 RBI 以上:4シーズン
- OBP .320以上:11シーズン
- OPS .800以上:7シーズン
- 通算安打数: 1,500
【魅力3】数々のAward
So many accomplishments. What a career for @BusterPosey. pic.twitter.com/hv6XG93SpV
— MLB (@MLB) November 4, 2021
そして受賞したAwardの多さ。
- ROY: 2010
- オールスター:7度
- MVP: 2012
- シルバー・スラッガー賞:4度(2012、2014-15、2017)
- ゴールドグラブ賞:1度(2016)
- ハンク・アーロン・アウォード:2012
- カムバック・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー:2012
- ウィルソン・ディフェンシブ・プレーヤー(C):2度(2015-16)
- ルー・ゲーリック・メモリアル・アウォード:1度(2019)
【魅力4】ジャイアンツ浮沈のキーマン
そして、有能さの象徴がポージーの成績如何でジャイアンツの成績が決まっていたこと。これは打撃、守備、ゲーム内での存在感それら全ての総合力で、その結果がワールドシリーズ・リングが3つ。
# | SFG順位 | SFG PS | ポージーの成績 | Award |
2010 | 地区優勝 | WS制覇 | 108試合/Av. 305 | ROY |
2012 | 地区優勝 | WS制覇 | 148試合/Av.336/103 RBI/ 24 HR/OPS .957/OPS+ 171 | MVP/SS All Star |
2014 | 2位 | WS制覇 | 147試合/Av.311/89 RBI/ 22 HR/ OPS .854/ OPS+ 143 | SS |
2016 | 2位 | NLDS敗退 | 146試合/Av. 288/ 80 RBI 二塁打33 | GG All Star |
2021 | 地区優勝 | NLDS敗退 | 113試合/Av.304/ OPS.889 OPS+ 140 | All Star |
【魅力5】子供を大切にする優しさ
2020年、バスター・ポージーはシーズンをオプトアウトしましたが、理由は子供への健康配慮。
養子縁組も成立させており、子供さんに最大限の愛情を注いでおられます。
ポージーの魅力を数え上げればこんなものではないと思いますが、大きなところで言えば、このようなところではないかと思います。
コリジョン・ルール導入のきっかけ
バスター・ポージーで忘れてはいけないのは、大怪我ですね。2011年5月25日のことでした。フロリダ・マーリンズ戦。あまりにひどい怪我だったので、これ以上は書きません。この大事故がきっかけでホームコリジョン・ルールが2014シーズンから発動となりました。
これには、当初、オールドスクールの人達は反発しましたが、筆者は激突シーンは好きではなかったので、これでよかったと思っています。
もっともこれを功績として上げるのはどうかとも思います。ただ、これにより、醜かったホームでのラフプレーが無くなりました。ホームでの激突はある意味、メジャーの象徴でもあったわけですが、面白みはありませんでしたから。
ザイディ社長、ため息
ジャイアンツの浮沈のカギを握っていたのはバスター・ポージーの調子如何というふうに書きましたが、引退により、ため息をもらしているのは、ジャイアンツのベースボール・オペレーションの社長、ファーハン・ザイディ(Farhan Zaidi)。
Buster Posey says goodbye to pro baseball! ⚾️
— SportzStew Ⓥ (@sportzstewcom) November 5, 2021
Farhan Zaidi to Posey:
“Is this a definite, for sure thing? #ResilientSFpic.twitter.com/ss9WT8gilX
ポージーの存在は、2021年のジャイアンツの107勝の大きな原動力であり、編成の根幹中の根幹。まさに、大黒柱を失ったような状況。これからどうやって良い家をつくればいいのか、さすがのザイディー社長もまだ整理しきれていない模様。
ブランドン・クロフォードのエクステンションは決めたとは言え、このオフはケビン・ゴーズマン、アンソニー・デスクラファニーもFA。
それに肝心の捕手をどうするのか?これはFAの捕手市場に大きな影響を与えることになりそうです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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