ナスティーなクローザーがライバルチームへ
現地2021年7月27日、30日のトレードデッドラインまであと3日と迫ったこの日、衝撃的なトレードが決まりました。マリナーズのクローザーで今季素晴らしい成績のケンダール・グレイブマン(Kendall Graveman)がアストロズへトレードされることになりました。
トレード概要
このトレードで動くのは4名。CLはクローザーの意、RPはリリーフ・ピッチャーの略です。
アストロズGet
- ケンダール・グレイブマン(Kendall Graveman /30)RHP/CL
- ラファエル・モンテロ(Rafael Montero/ 30)RHP/RP
マリナーズGet
- エイブラハム・トロ(Abraham Toro /24)3B&1B/ 右投げスイッチ
- ジョー・スミス(Joe Smith/ 37)RHP/RP
マリナーズ、BUY&SELLモード!?
現地2021年7月27日のゲームを終えた時点で、マリナーズは55勝47敗でALウェスト3位。
- アストロズ:62-40
- アスレチックス: 56-46
- マリナーズ: 55-47
- エンゼルス: 50-50
- レンジャーズ: 36-65
貯金8という好成績を残しており、首位アストロズとは離されているものの、2位アスレチックスとは1勝差。そのような好成績ですので、当然、ワイルドカード争いにおいても上位に入っており、2枠目に入っているアストロズといつでも入れ替わることができる好位置にいます。
ポストシーズンも十分に狙える位置につけていながら、好成績の原動力の1人であるクローザーのケンダール・グレイブマンをトレードに出すとは。
また、一緒に出ていくラファエル・モンテロは今季はERAが7.27と荒れていますが、ケンダール・グレイブマンの10セーブに次ぐ、7セーブを上げている投手。ゲーム後半を担う二人がいなくなるという事実はなかなか重いです。
今トレードデッドラインでマリナーズはBUY&SELLモードという、一見、聞こえは良いように思える姿勢で臨むようです。しかし、これは裏を返せば、どっちつかずで前進なしということにもなりかねません。
ある選手は怒り心頭
ケンダール・グレイブマンの一報が入った後、マリナーズのとある選手(名前は伏せられています)は、ロッカールームで大暴れ。破壊した備品や設備が出たそうです。
「裏切られた」とフロントに対して大いに疑念が湧いている模様。シーズン中にこのような不協和音が出るのはよくないことです。
この選手の気持ちもわかります。ポストシーズンが手に届く位置にいながら、はしごを外されたような気分でしょうから。
当のディポトGMは、「さらに前進するための大いなる進化」のようなコメントを出しているのですが、どうやら今のところは選手からは理解を得られていないようです。果たしてこれを仲裁できる人物がいるのかどうか。
グレイブマンもショックを隠せず、しかし・・・
トレードされることとなったケンダール・グレイブマン自身もコメントで「ショック」を隠しきれなかったことを明かしています。ただ、アストロズはポストシーズンへ一直線という状況ですので、その点は本人もワクワクを抑えることができないようです。
PSに行けるよ!の口説き文句
今トレードデッドラインでは、レイズがかなりの大物選手の獲得に関心を寄せているという噂があります。ポストシーズンに行ったことのない選手には、「ポストシーズンでプレーしよう」みたいな文言はかなり有効のようで、レイズの大物獲得も現実味を帯びているかもしれません。
選手紹介
【アストロズ】ケンダール・グレイブマン
ケンダール・グレイブマンは1990年12月21日生まれの30才。2013年のブルージェイズ8巡目指名でプロ入り。
デビューは2014年9月5日とドラフト翌年にはメジャーのマウンドに上がりました。23才の時です。2014年11月、ブルージェイズがジョシュ・ドナルドソンを獲得したトレードで、フランクリン・バレート、ブレット・ローリーらとともにアスレチックスに移籍。
アスレチックスでは先発として活躍。特に2016年は186.0イニングを投げ、10勝11敗、ERA 4.11と二桁勝利に乗せました。
トミー・ジョン手術へ
しかし、2017年、ケンダール・グレイブマンの成績は悪化します。105.1イニングを投げて被安打114、失点50、ERAは4.19。これは肘の調子が悪くなったのが原因。非常に苦戦しました。この影響は翌2018年も続き、開幕のローテーションには入ったものの、7試合で29失点、ERA 7.60と投げては4失点、5失点が続き、5月11日のヤンキース戦を最後にマイナーに落ちることに。
そして2018年7月末、ケンダール・グレイブマンはトミー・ジョン手術を行うことを決意。将来のためにケアすることにしたのでした。
しかし、肘の手術もあり、2018年オフにノンテンダーFAとなったグレイブマン。非常に厳しい立場に立たされましたが、しかし、拾う神ありで、そんなケンダール・グレイブマンをシカゴ・カブスが獲得。1年/$0.575Mで、2020年がクラブオプションで$3Mという内容。カブスは復帰後を見込んで彼を獲得したのでした。これは他人事ながら、非常に嬉しい気持ちになったのを覚えています。カブス、よくやってくれたと。
ただ、2019年オフ、シカゴ・カブスは2020年のオプションを行使せず。グレイブマンは再びFAとなったのでした。しかし、カブスは十分彼のキャリアをつないでくれたと思います。
2019年オフ、マリナーズとサイン
そして2019年11月末、マリナーズと1年/$2M、2021年3.5Mのクラブオプション、0.5Mバイアウトの内容でサイン。2020シーズンへとつながりました。
2020シーズンはついにトミー・ジョンから復帰。2020年はご存じの通り、ショートシーズンになったこともあり主にリリーフをこなしました。これが今季へとつながりましたね。
2020年オフ、マリナーズは一旦はグレイブマンのオプションを拒否。FAとなりましたが、2020年10月末に、1年/$1.25Mでサイン。
ナスティーな2021シーズン
そして今季。ケンダール・グレイブマンは33.0イニングで被安打が15、失点7、自責点3でERAが0.82をマーク(現地2021年7月28日時点)。今季の剛球ぶりはちょっと打てる気を削ぐものですね。
ちなみにALのリリーバーでは、ERA、WHIP(0.70)、相手チームの打率(.136)、相手チームのOPS (.424)ともにもっとも低い数字をマークしています。
こんな素晴らしいクローザーが、$1.25Mという破格の安さでしっかりと機能してくれているのに、放出するとは!選手が怒っても仕方ありませんね。
グレイブマン→ライアン・プレスリー
アストロズにはライアン・プレスリーという今季43.0イニングでERA 1.88の素晴らしいクローザーがおりますが、GMのジェームズ・クリックのプランでは、プレスリーをそのままクローザーに、ケンダール・グレイブマンをセットアップに起用する見込みです。
アストロズは打線が素晴らしいので、もう盤石ですね。
【アストロズ】ラファエル・モンテロ
アストロズが獲得したもうひとりのリリーバー、ラファエル・モンテロも今季活躍しているリリーバー。ただ、43.1イニングでERAが7.27とラフな数字も残しています。しかし、17試合を締めています。
ラファエル・モンテロは30才の右腕で、もともとはメッツ。2011年にアマチュアFAとしてサインしました。メッツでは先発とリリーフを半分ずつこなす起用をされてきました。それがたたったのか、2018年にトミー・ジョン手術。
2019年1月にレンジャーズとサイン。2019年からリリーバー専任となりました。2020年オフにマリナーズにトレード。今季はゲーム後半を任されているという投手です。
【マリナーズ】エイブラハム・トロ
マリナーズが獲得したエイブラハム・トロは1996年12月20日生まれの24才。2016年のアストロズの5巡目指名の内野手。
デビューは2019年8月。2020年にすでにルーキーステータスを超えております。
今季はメジャー3シーズン目。ここまでのメジャー通算の成績は打率.196、OBP .278、SLG .364、HR 12、RBI 40。いつ爆発するかという素材でもあります。
First game, first HR.
— MLB (@MLB) July 28, 2021
Welcome to Seattle, Abraham Toro. pic.twitter.com/fYZtnwPsYW
【アストロズ】ジョー・スミス
ジョー・スミスは37才のベテラン・ライティー。きれいなアンダーハンドの投手。大谷選手がデッドボールを受けて睨み返した投手でもあります。
キャリア14年のERAが3.11という非常に頼もしいサブマリンでもあります。
マリナーズが今季あと2ヶ月あまりをどういう成績で乗り切るか。これは見ものですね。おそらく、エンゼルスが胸を撫で下ろしていることでしょう。
お読みいただき、ありがとうございました。
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