一時帰休実施へ
現地2020年5月23日のニュースです。複数のソースによりますと、ロサンゼルス・エンゼルスは、6月1日までにfurlough(読み:ファーロー)、「一時帰休」を実施することを決定した模様です。
今回の新型コロナウィルスの感染拡大によってビジネス環境が大いに悪化しているのは球界全体がそうですが、6月まで、あるいは10月のシーズン終了までは雇用を確保するという方針のクラブが多い中、エンゼルスは独自に非常に厳しい姿勢でコストカット、つまり人件費に手を入れる決断を下しました。
一時帰休とは
「一時帰休」とは企業が行う雇用調整の一つ。生産設備をもっているもつ企業や複数の営業拠点をもつ業態などがビジネス環境が悪化した場合に実施します。先日記載させていただいたルイビルのバット工場と美術館の閉鎖も従業員をファーロー(一時帰休)させています。
解雇ではない
一時帰休は従業員を一時的に休業させることで、自宅待機とほぼ同義。よって雇用契約は継続されている点で、レイオフとは違います。レイオフの場合は、契約が解除されます。ただ、再雇用となった場合に優先的に雇用される権利が与えられるという補償はついています。
給与に関しては、雇用主は経営自体に責任があれば給与の何割かを支払う義務を負いますが、今回のパンデミック起因というところがポイントで、これは支払いがなされないのではないかと推測します(ここはアメリカの法律に詳しくないのでこのような書き方になりました)。
今回のエンゼルスの一時帰休は一応、解雇には当たりません。
保険などは継続
今回、エンゼルスが実施する一時帰休は健康保険などは継続して使うことが可能で、ただしその従業員の契約次第で終了期限が違ってきます。
Mのファンドで補助も
エンゼルスはクラブとして$1Mの給与に関するファンドを設置。一応は金額的にもなんとか救済する手段は講じてはおります。
正確な人数は明らかにせず
今回の一時帰休はメジャーのコーチなどは対象外で、エンゼルスはノン・ベースボール関係のどれくらいの人数の人が一時帰休となるかは公表していません。規模は大きいかもしれません。
対象はスカウト、マイナー・コーチ
対象は主にスカウトの模様。ケン・ローゼンタールさんの情報によれば、アメリカ、カナダ、メキシコを17のエリアに割って活動しているスカウトがその対象で、6月1日から実施するとのこと。要はドラフトの候補選手を探しまわっている人たちで、映画『人生の特等席』でクリント・イーストウッドが演じていたようなスカウトの人たちです。
さらに、ベースボール関連で言えば、マイナーのコーチ、すれに準ずるスタッフもその対象となっており、やはり規模としては大きいと言わざるを得ません。
ドラフト後にさらに削減
2020年は6月10日から11日にリモートでアマチュア・ドラフトが開催されますが、その後にドラフトで選手をいわゆる値踏みする立場のスカウト達も6月16日に一時帰休となる見込み。
ドラフトに影響
エンゼルスの場合、ドラフトに際し地域のスーパーバイザーが5名、クロスチェッカーと呼ばれるスカウトが4名、計9名がドラフトで選手を値踏みしているわけですが、この人達が16日に一時帰休になるとのこと。
地域の軸と能力などの情報の2つの軸で選手をもらさないような工夫をしているものの、6月1日時点で現場の最前線のスカウトがいないということは2020年のピックにも影響が出そうです。
また2021年以降、このネットワークが崩壊の危機に瀕することは言うまでもありません。
ベースボール活動に着手はLAAだけ
他のクラブも一時帰休を実施しているところはあります。
- SFG:60名のパートタイムに一時帰休。フルタイムは9月までは補償。
- PIT:ビジネス側のオペレーションで実施。
- TBR: フルタイムの中から一部の人を一時帰休実施へ
- OAK: 15%ほどの従業員を一時帰休へ
それぞれクラブによって規模は違います。
ただ、いずれもベースボール活動関連で雇用調整は行っておらず、ここに着手しているのは現時点ではエンゼルスのみです。
オーナーのアルトゥーロ・モレノは?
エンゼルスのオーナーはアルトゥーロ・モレノ。マイク・トラウトの12年$430M、アンソニー・レンドンの7年$245Mを気前よく決めた人物でもあります。
本業がピンチか??
ここは筆者の邪推であることは承知いただきたいと思います。モレノ・オーナーのビジネスはOutfrontという屋外の看板で広告を掲載している会社。CEOでもあります。
その他、ファンドも組んで資産を運用されているとも思いますが、今回の新型コロナ・パンデミックでビジネスがかなりガタガタになってのではないかと思います。もっとも、それはどこの業界でもそうでしょう。
企業がもっとも先に削るのは広告費でもあります。よってビジネスの打撃は計り知れないかと思います。
2020年の1Q(第一四半期)は$385.3 million。これだけでもとんでもなくすごい売上ですが、約400億円というところでしょうか。単純に成長のペースを例年のペースで4期分にすると1.6兆円ですね。
怖いのは2Q以降ですね。これは世界中どこも同じかと思います。どのくらいの人が看板を目にして、その効果を測定して広告主を募集したりするビジネスモデルを考えると人が出歩いていなかった訳ですから、相当厳しい数字になるのは明白。
あくまで邪推ですが、本業の影響も今回の決断に影響しているのではないか?とも推測します。
そしてエンゼルスに倣えと追随するクラブが出てきてもおかしくはないという怖さもあります。
なお、モレノ・オーナーの個人資産はForbesによると$3.3B。
以上、お読みいただき、ありがとうございました。
コメント