結構、特殊な延長契約
現地2025年2月14日、カンザスシティ・ロイヤルズは、左腕のエース、コール・レーガンズと延長契約を結ぶことに合意しました!
コール・レーガンズはセス・ルーゴとともに2024シーズンのロイヤルズの快進撃を後押しし、さらにALワイルドカード・シリーズのGm1という大事なポストシーズン・オープニングで先発に指名され、見事にオリオールズ打線を6回シャットアウト。チームも1-0の僅差という渋い勝利を上げ、まさにエースとしての存在感を示しました。
もっとも、Gm1で負けたとしてもGm2で必勝という意味でGm2の先発に戦略的に指名されたセス・ルーゴがNO.2という訳でもありません。ロイヤルズにとってはどちらが先頭に立ってもいい二人であります。
そんなコール・レーガンズの延長契約の内容はこちらです。
延長契約の内容
- 3 年/$13.25M (2025-27)
- サイニング・ボーナス:$0.25M
- 2025: $1M | 2026: $4.5M | 2027: $7.5M
- 2027年のサラリーは2025年もしくは2026年にサイ・ヤング賞を受賞すれば $8Mに
スーパー2に非ず!
安いな!というのが第一印象かと思います。
コール・レーガンズのステータスですが、デビューはレンジャーズ時代の2022年で本格稼働は2023年からで、2024シーズンも含めたMLSは2.029。まだ調停スタータスを満たしていないのです。
ついでに2024年のサラリーも驚くべき金額で、2023年終了時点ではMLSがまだ1.000を超えたところだったので、ミニマムの$0.74Mに少し色付けされた$0.75375 Mでした。
ここで気になるのがこれだけ活躍しているコール・レーガンズですので、MLSが2.000を超えているがゆえに、スーパー2の対象ではないか?ということ。
スーパー2の要件は下記のリンク記事に書かせていただいておりますが、スーパー2とは「MLS2年から3年の間に在籍した選手のうち上位22%は、1シーズン早く調停の資格を得ることができるとするもの。ただし、前シーズンの86日以上をアクティブロスター登録またはILで過ごした場合に限るとする」。
スーパー2資格が適用されるか否かの分岐点はカットオフと呼ばれますが、2024年終了後のカットオフは、MLS 2年と132日(=2.132)に設定されていたのです。つまり、2024年シーズン終了時点でMLSが 2.132を超えていれば調停資格のMLS3年を満たしていなくても2025年に年俸調停を受ける資格を得ることになるのです。
よって、2.029のコール・レーガンズはそれを満たしていなかったということに。
ちなみに、2024年を終えた時点で2.132のカットオフを超えた選手は、例えば以下の選手達。
- 【レッドソックス】カッター・クロフォード(MLS:2.136)
- 【レッドソックス】ジャレン・デュラン(MLS:2.155)
- 【タイガース】ボー・ブリスキー(MLS: 2.134)
- 【ブルージェイズ】アーニー・クレメント(MLS: 2.168)
- 【ブルージェイズ】ザック・ポップ(MLS: 2.171)
スーパー2のメリットは?
注目すべきは、スーパー2のカットオフが選手のポテンシャル収入にに大きな影響を与える可能性があること。調停資格はMLS:3.000-5.000の間で計3回あるわけですが、スーパー2だとプラスもう1回で計4回ということになるのです。
この制度の最も大きな恩恵を受けた一人がブルージェイズのヴラディーミル・ゲレロ・Jr.で2021年終了後にスーパー2資格を得て、下記のように増えて行きました。
【ゲレロ・Jr.の調停でのサラリーの推移】
- 1 年/$7.9M (2022)
- 2022年3月22日に (調停を避けてサイン)
- 1 年/$14.5M (2023)
- 2023年1月13日に(調停を避けてサイン)
- 1 年/$19.9M (2024)
- $19.9M-$18.05Mのレンジでの調停に勝利
- 1 年/$28.5M (2025)
- 2025年1月9日に(調停を避けてサイン)
このような形ゆえに、コール・レーガンズはスーパー2に関しては残念!ということに。
ちょっと変則な延長契約:調停2年目まで
今回の延長契約によりロイヤルズはMLS 2-4年の間、つまり調停2シーズン分までのサラリーを固定したということに。この後に再延長で上書き更新がない限りはコール・レーガンズは2027年終了後に1度だけ調停スタータスを経てFA市場に出ることになります。
この形の延長契約はあまり見たことがありません。 だいたいはFA資格を超えて1年もしくは2年を経過したところまでの延長というのが多いです。
ロイヤルズとしては、2023年、2024年のレーガンズの高品質投球に報いたというというところでしょう。それに2年目の2026: $4.5M、3年目の2027: $7.5Mは、質の高い投球をしていれば、調停の最初の2回でこれくらいのレンジになるでは?とも思います。その意味でも先に固定して上げたというのも親心かもしれません。
レンジャーズから移籍後、ALトップランクの左腕へ
コール・レーガンズはもともとはレンジャーズの投手で、2016年の1巡目指名です。高校卒でプロ入りしたレーガンズはキャリア初期に大きな挫折を味わいます。
2度のTJ手術
実はキャリア初期にトミー・ジョン手術を2度も受けており、1度目は2018年で、2度目は2019年。その結果、プロ入り後のキャリアも限られてしまい、 2016年はルーキー・レベルで7.2イニング、2017年はクラスA-で13先発、57.1 IPでERA 3.61を記録したきりで、以降は2020年のコロナパンデックによるマイナー・リーグのキャンセルを含め、2018年から2020年まで4年間、1球も投げることが出来ませんでした。
ゆえに誕生日が1997年12月22日生まれで現時点で27歳というのはそういう事情もあるのです。
ただ、2021年以降は順調に成長の段階を踏み、2022年にはダブルAスタートでトリプルAにも昇格。両レベルで18先発、94.2 IPでERA 3.42をマークし、ついにメジャーデビューを果たします。
2022年、TEXでデビュー
2022年8月にメジャーへ昇格したコール・レーガンズは2022年8月4日のホワイトソックス戦でメジャー・デビュー。5回を1失点に抑え、勝ち星はお預けとなったものの、上々のスタートを切りました。
2022年は9先発で、40.0イニングを投げ、0勝3敗、ERA 4.95。
レンジャーズがワールドシリーズを制覇した2023年はリリーフとして起用され、17試合、24.1 IPで2勝3敗、ERA 5.92をマーク。
チャップマンとのトレードでKCへ
メジャーである程度の結果を残すようになったレーガンズはトレードの要員に入ることに。この年、早めにブルペンをテコ入れしたレンジャーズは2023年6月30日にロイヤルズからアロルディス・チャップマンをトレードで獲得。これもレンジャーズのワールドシリーズ制覇に効きましたね。
ロイヤルズに移籍後のコール・レーガンズは先発で起用されることとなり、12先発、71.2 IPで5勝2敗、ERA 2.64の好成績をマーク。これにより、2024年も先発ローテーションとして数えられることに。
2024年はCY投票4位
そして2024年、コール・レーガンズは32試合、186.1 IPで11勝9敗、ERA 3.14をマーク。SO9は10.8、BB9は3.2、HR9は0.7、H9も7.1とAL屈指の左腕の地位を獲得。奪三振223はMLBで5位にランクされ、ALサイ・ヤング投票で4位を獲得。そして今回の延長契約に至るという流れです。
コール・レーガンズはこのまま順調に行けば、31歳でFA市場に出てくるという流れになります。
お読みいただき、ありがとうございました。
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