ついにブルージェイズがFAを獲得
現地2025年1月20日、トロント・ブルージェイズが今FAで注目されていたスラッガーのアンソニー・サンタンデア(Anthony Santander)を獲得するに至りました!
ブルージェイズは2023年オフには大谷選手獲得に大いにコミットしていたものの振られてしまい、今オフもフアン・ソト、マックス・フリード、コービン・バーンズ、そして佐々木朗希投手にかなり突っ込んで交渉していたものの、やはり尽く振られました。
アンソニー・サンタンデアはオリオールズからFAとなっていたため、このディールに関しては結果的にディビジョンのライバルから引き抜いたという大仕事になっています。
契約内容
ブルージェイズとアンソニー・サンタンデアのディールはすでに現地2025年1月20日にオフィシャルとなっています。ただ、契約内容は詳細が明かされていないため、下記は大筋の合意内容ということになります。
- 5 年/$92.5M保証 (2025-29) + 2030 クラブオプション
- 2030: $15M保証のクラブオプション($5M バイアウト込み)
- 3年後の2027年のWS終了後にオプトアウト可
- ただし、ブルージェイズは2030年のクラブオプションを行使することでオプトアウトを無効にすることができる
6年目のオプション
期間は5年+オプションで条件は上記の通りです。
6年目のオプションがまだはっきりとわかっておりません。現時点ではバイアウト込の$15M保証ということになっていますが、$17.5Mが上乗せされる可能性もあります。
オプトアウトあり!
そして特筆は3年目の2027年のワールドシリーズが終わったタイミングでオプトアウト可となっている点です。ちなみにエージェントはGSE Worldwide。オプトアウトありだと、ついボラス・コーポレーションかと思ってしまいますが違います。
このオプトアウトに対してブルージェイズは6年目のオプションを行使することを条件に無効にすることが出来るという特約もあります。3年が終わった時点で6年目を行使するという割と変わったパターンです。
なお、オプトアウトを無効にする措置はフアン・ソトとメッツの契約にも入っています。ソトのケースは5年後にオプアウトが入っているのですが、ソトがそれを決断した場合、メッツは残り10年のサラリーに$4M/年を加えることで、その決断を無効にすることが出来るというものです。ちょっと似ていますね。
繰り延べ払いあり!
さらに、$92.5M保証ですが、そのうち$35M以上が繰り延べ払いが入っています。その繰り延べ払いの金額も、オプトアウトあるいはオプションの結果次第では$50Mを超える可能性もあるとされていますので、現時点では詳細は不明です。どうして繰り延べ払いが入っているかというとブルージェイズの場合も贅沢税の閾値超えがあるからです。詳細は後述。
大幅アップ
アンソニー・サンタンデアの2024年のサラリーは(調停を避けて)1年/$11.7M でしたから、かなりアップしましたね。現状の5年/$92.5Mで算出するなら、AAVは$18.5M。ただし、上述のように繰り延べ払いが1/3以上入っているので、$14Mくらいには落ちると見込まれます。これも繰り延べ払いの額によって変わってきます。
ブルージェイズにフィット
アンソニー・サンタンデアはフアン・ソトのようなスーパー・パワーではありませんが、それでも彼はブルージェイズにフィットしていると見て良さそうです。その理由を挙げる前に先にアンソニー・サンタンデアの2024年のスタッツを見てみます。
2024年のアンソニー・サンタンデア
アンソニー・サンタンデアの2024シーズンはとにかく素晴らしかったです。155試合で140安打を放ち、.235/.308/.506と、打率は低いものの、HR は44本で、RBIは102を記録。長打力があるのでOPSは .814をマーク。RUNも91を記録しています。そしてオフにはシルバー・スラッガー賞も受賞。
長打がなかったTOR
2024年のブルージェイズのチーム打撃成績は.241/.313/.389でOPS は.702。打率はMLBで19位、OBPは割と高いものの、それでもMLB 13位。BB数 590はMLB 9位と健闘。OBPがある程度高いのもこれが要因です。ただし、年間HR数は156本でこれはMLB 26位。ヴラディーミル・ゲレロ・Jr.でさえもHR 30でフィニッシュしました。ゆえに2024年にHR 44本を放ったサンタンデアはブルージェイズにとって大きなメリットになりそうです。
スイッチヒッティングも有効
さらにアンソニー・サンタンデアはスイッチヒッター。
実はブルージェイズは非常に面白い特徴を持っていて、右打者が多いのです。昨今は左打者が多いクラブが多く、ドジャースなどはその典型ですね。ブルージェイズはゲレロ Jr.、ボー・ビシェット、ジョージ・スプリンガー、アレハンドロ・カークら主力が右打席。
また、3B候補のアーニー・クレメント、LF候補のデービス・シュナイダー、INFのレオ・ヒメネス、2B候補のオレルビス・マルティネスなどの若手も右打席。
左打席はCF候補のドールトン・バーショー、このオフにガーディアンズからトレードで移籍してきた2B最有力候補のアンドレス・ヒメネス、INF候補のウィル・ワグナー、LF候補のジョーイ・ロペルフィドら4名。ワグナーとロペルフィドはまだメジャー経験が浅いので実質2名というところ。
ここにスイッチヒッターのサンタンデアが入れば、バランスをもたらすことに。ちなみにサンタンデアの対左投手の成績(右打席)は.252/.320/.467、対右投手の成績(左打席)は.243/.302/.470で左右でほぼ変わりません。
打撃の面でかなり大きな戦力になりそうです。
アンソニー・サンタンデアとは
アンソニー・サンタンデアのプロフィールについて簡単に触れておきます。1994年10月19日生まれの30歳、ベネズエラ出身です。もともとは2011年7月にアマチュアFAとして当時のインディアンスとサインしました。16歳の時です。
プロデビューは2012年でそこから2016年までインディアンスのロー・マイナーで過ごす日々が続きました。インディアンス・マイナーのファイナルとなった2016年もクラスA+の在籍で、一応このレベルでは結果は出しました。128試合に出場し、.290/.368/.494、HR 20、RBI 95。
ルール5出身
2016年12月、アンソニー・サンタンデアはルール5ドラフトにかかることに。2016年がサインから5年目でした。
【ルール5ドラフトの対象選手】
- 今所属しているクラブと18歳以下でサインした選手は在籍年数が5年を経過していれば指名対象となり得るが、その前に40manロスターに加えれば、指名対象から外れる。
- 今所属しているクラブと19歳以上でサインした選手は在籍年数が4年を超えていれば指名出来るが、その前に40manロスターに加えれば、指名対象外から外れる。
その2016年のルール5ドラフトでボルチモア・オリオールズからメジャー・リーグ・ステータスで指名されたアンソニー・サンタンデアはオリオールズに移籍することに。
2017年にメジャーデビュー
ルール5ドラフト直後の2017年、アンソニー・サンタンデアはスプリングトレーニングからメジャー・ロスターに入ることは出来なかったものの、クラスA+、ダブルAで併せて.382/.453/.746、OPS 1.199の好成績を残し、シーズン後半の8月18日にメジャー・デビューを果たすことに。見事にチャンスを掴みましたね。
そのデビュー戦となったエンゼルス戦にRFで先発出場し、メジャー初ヒットも記録しております。
2018年はほぼマイナーで過ごし、メジャーでは30試合のみの出場。2019年は93試合に出場、.261 .297/.476と結果を残し、しかもHR 20を記録。これでメジャーで活躍するきっかけを掴んだ感じです。
短縮シーズンの2020年も37試合に出場し、打率.261、HR 11をマーク。2021年にはついに100試合以上となる110試合に出場するも、241/.286/.433、HR 18と今ひとつの結果となりました。
2022年に33HR
彼の長打力が注目されたのは2022年。152試合に出場し、打率.240、HR 33、RBI 89をマーク。、OPS+は120を記録。オリオールズは2022年に著しい向上を見せましたが、アンソニー・サンタンデアもそれをプッシュした一人です。
2023年はRFとして153試合に出場し、HR 28、RBI 95、OPS+は121を記録。この年、オリオールズは101勝をマークし、ALイーストを制しました。
2024年に44HR
2024年、強者となったオリオールズでアンソニー・サンタンデアは打撃の象徴に。上述のような成績を残し、夏にはオールスターにも出場。
際立ったゲームは8月23日のアストロズ戦。8回裏、スコア2-5で3点ビハインドの状況でブライアン・アブレイユから逆転満塁ホームランを放ち、オリオールズを7-5の勝利に導いたこと。オリオールズは、オールスター・ブレーク以降、低迷していたために余計に価値のある一発となりました。
そしてシーズン終了時には44HRを放ち、このオフに注目のスラッガーとしてFAとなったのでした。
なお、スイッチヒッターとしてHR40本を放ったのは、ミッキー・マントル(4度達成)を含めて8人目。またオリオールズ史上で40HRを放ったのも8人目のこととなりました。
UKでカルト的人気!?
なお、アンソニー・サンタンデアにはイギリスにかなり大きなファンクラブがあります。これは奇跡的というか偶然の賜物で、2019年8月にボルチモア地区でボーイスカウトとガールスカウトの大会が開催され、そこに参加したイギリスの少年少女のメンバー達がたまたまカムデンヤーズで行われたブルージェイズ@オリオールズ戦をLFスタンドで観戦。
そのゲームでLFを守っていたのがアンソニー・サンタンデアでした。ところがアンソニー・サンタンデアは3打数1安打でとりわけ目立った活躍をした訳ではなかったのですが、外野でのフライ処理などで彼らの心を動かすものがあったようで、彼らはサンタンデアをその日のヒーローにし、なんとファンクラブが誕生したのでした。サンタンデアも歓声が湧くごとに「なんで?」という感じだったのですが、その好意を素直に感謝で受け取ったのでした。そして彼らはイギリスに戻ると、SNSで応援ページなどを作成。これが徐々に広がって行き、情熱的なイギリス野球ファンのコミュニティの拠点ともなっているのでした。
ブルージェイズはまた贅沢税超過
ブルージェイズは2023年は閾値$233Mに対して贅沢税のペイロールが$257.8Mで超過。しかし、2024年は閾値$237Mに対して$233.9Mで閾値内に抑え、リセットされました。
ところが今オフは現時点ですでに$258Mが見込まれており、閾値$241Mを超えております。これはアンソニー・サンタンデアの分が繰り延べ払いでインパクトが薄まったとしても超えている状況。
球団社長のマーク・シャピロはあまり閾値を超えたくはない模様ですが、その割にFA獲得にはかなり熱心です。おそらく肚をくくって超過を受け入れていると思われます。
QO選手をめぐる補償とペナルティー
アンソニー・サンタンデアはQOを提示されましたが、それを拒否してこのディールに至りました。ゆえにオリオールズには補償が、ブルージェイズにはペナルティーがあります。
まずオリオールズへの補償ですが、オリオールズはレベニューシェアリング受領チームです。且つ今回のディールは$50Mを超えたので、2025年MLBドラフト1巡目の後のコンペティティブ・バランス(以下CB)ラウンドAで補償を受けることができます。
そしてサインしたブルージェイズですが、レベニューシェアリングを受領せず且つ2024年は贅沢税の閾値内となっているため、2025年ドラフトで2番目に高い指名権を失うとともにインターナショナル・ボーナス・プールから$0.5Mの枠を失います。なお、ブルージェイズがほかのQO辞退選手とサインした場合、残り3番目に高い指名権とさらに$0.5Mドル枠を没収されます。
ピート・アロンゾ獲得に動くか?
贅沢税の閾値超過には違いないのですが、ブルージェイズはまだ動く可能性があります。ピッチャーも懸念点のようですが、1Bでピート・アロンゾ獲得に動くかもわかりません。
ご承知のようにブルージェイズの1Bにはヴラディーミル・ゲレロ・Jr.がおります。しかし、Jr.をDHで起用するプランもあり、そうなると強い1Bということでピート・アロンゾはかなりフィット。
2024年と違い、長打の打線を組むならその選択は非常に面白いものになります。アンソニー・サンタンデアもいるわけですから。あとはペイロールの問題だけです。ピート・アロンゾ獲得なら、$20M-$30Mが追加ということになり、$280Mが見えてきて、メッツの$295.8Mとそれほど変わらない状況になるかもしれません。
様子を見守りたいですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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