メッツとマリナーズ間のトレードの中身
前回の記事で今季のトレード・デッドラインは7月31日ではなく、8月1日ということを書かせていただきました。新CBAにより、コミッショナーは7月28日から8月3日の間であれば、いつでも期限日を設定できるようになっています。
そのウェバー公示無しにトレードが出来る期限に向けて動きがありましたので、記載しておきたいと思います。
巨大戦力にも関わらず、大苦戦しているニューヨーク・メッツがそんなメッツがリリーバー補強に動きました。マリナーズとのディールが成立。
メッツは現地2023年7月3日を終えた時点で38勝46敗とナ・リーグ東地区4位。最下位のナショナルズが34勝ですから、割と後ろから服を掴まれている状態でもあります。「なんとかせい!」という天からの声が響き、編成が動いたというのがわかるディールとなりました。
まずはトレード概要です。
トレード概要
動くのは計3選手。
メッツGet
- トレバー・ガット(Trevor Gott /30) RHP
- クリス・フレクセン(Chris Flexen /29) RHP →DFA
マリナーズGet
- ザック・マッケンハーン(Zach Muckenhirn/ 28) LHP
メッツ、クリス・フレクセンを即DFA
このトレードを難解、あるいは意味がわからないというふうに仕立てたのは、メッツの決断です。クリス・フレクセンを即DFAにしました。
メッツはトレバー・ガットの40manロスターのスペースを空けるため、4月後半に左足首を捻挫してILに入っていたエドウィン・ウセタ(Edwin Uceta)を60 Day ILに移しています。
まずはクリス・フレクセンとトレバー・ガットの契約内容を見てみます。
フレクセンとガットの契約
クリス・フレクセンの契約
クリス・フレクセンは、2020年12月18日にマリナーズと以下の内容でサイン。今季のサラリーは一定の条件で基準の成績に達すればオプションが行使されるというべスティングが行使された結果です。$8Mベースのサラリーになっています。
- 2年/$4.75M (2021-22) + 2023 $4M クラブ・オプション
- 2023年のサラリーは以下の条件に合致したので、$8Mベース。
- 2023年のクラブ・オプションは以下の内容で $8M ベースにアップ(ベスティング・オプション):
- 2022年に150 IP(未達:137.2 IP) もしくは 2021-22年を併せて300 IP ⇐317.1 IPゆえ達成!
- もしくは2022年に35試合のGame finishあるいは 2021-22年併せて65試合のGame Finish
- パフォーマンス・ボーナス:$1M/年
- トレード成立で$0.25M のアサインメント・ボーナス
- 同意なしにマイナーに送らない
- 2023年のクラブ・オプションは以下の内容で $8M ベースにアップ(ベスティング・オプション):
トレバー・ガットの契約
そして、もう一人のトレバー・ガットは、2022年11月にブルワーズからFAとなり、同年11月30日にマリナーズと以下の内容でサイン。
- 1年/$1.2M (2023)
メッツが払う金額は計4.5Mドル
メッツは2人の残りの契約内容もそのまま引き継ぎます。クリス・フレクセンは$3.9M、トレバー・ガットは$0.587Mで、合わせると$4.487Mでざっと$4.5M。
メッツのメリットは何か?
やはり気になるのはメッツのメリットです。$4.5Mも支払ってそのうち85%を占めるクリス・フレクセンをDFAとはどういうこと?と思いますし、それなら何故獲った?となるのも自然な考えです。
メッツが欲しかったのはトレバー・ガット。彼をブルペンに置きたかったというのがこのトレードの最大のメリットです。
メッツのブルペンは、現地2023年7月3日時点でERA 4.26でこれはMLBで21位。クローザーのデービッド・ロバートソンはERA1.95、11セーブで彼に繋げれば勝利は確実というレベルの仕事をしています。
セットアップがアダム・オッタビーノとブルックス・レイリーで、オッタビーノはERA 3.97、レイリーはERA 2.43。物足りないところもありますが、それなりの数字を出しています。ただ、その後がジェフ・ブリガムの5.16、ドリュー・スミスの4.23・・・とかなり凹む状況。
ここでトレバー・ガットが入れば、オッタビーノ、レイリーとともにセットアップに厚みをもたせることが出来、文字通り補強することになります。
SEAのディポトGMがうまく立ち回る!
メッツのメリットは上述のトレバー・ガット1本。クリス・フレクセンはもう起用する意思はほとんどなかったと思われます。どうして獲得した?となりますが、そこはマリナーズのGMロール、ジェリー・ディポトがうまく立ち回ったということではないでしょうか?
ガットが欲しければ、フレクセンもセットだと。
このトレードの結果、マリナーズはブルペンで良い仕事をしているガットは失ったものの、計$4.5Mのサラリー削減に成功。
さらに、強いボールはないですが、左腕のザック・マッケンハーンも手に入れる事ができました。
あくまで筆者の見立てになりますが、ディポトのネゴシエーションが大きく反映されたディールと言っていいと思いますし、メッツは事実上、ガットを獲得するのにザック・マッケンハーンに金銭をつけて送ったと同じ形かと思います。
メッツはガットが機能さえしてくれれば良いという認識かもしれません。
フレクセン、今季は大苦戦!
クリス・フレクセンはもともとは高卒路の2012年にメッツから14巡目に指名された投手。ずっとメッツのマイナーで上を目指し2017年にメジャー・デビュー。2019年までメッツに所属し、マイナーとメジャーを往復していました。2019年オフにリリースされます。
2020年はアジアのリーグでプレー。8勝4敗、ERA 3.01をマークし、同年12月18日に上述の契約内容でマリナーズとサインし、メジャーに復帰しました。
2021年に14勝
クリス・フレクセンは、メジャー復帰後の最初の2シーズンで317.1イニングを投げてERA 3.66の好成績を残しました。特に素晴らしかったのは2021シーズン。31スタートで179.2イニングを投げ、14勝6敗、ERA 3.61。
ところが、今季は大苦戦。マリナーズはシーズン序盤にサイ・ヤング賞投手のロビー・レイが腕を痛め、トミー・ジョン手術を受けることになりました。クリス・フレクセンはその穴を埋めべくローテーションに入りましたが、機能せず。ブルペンに移りましたが、こちらでも良い結果を残せていません。
2023シーズンはここまで17試合に登板し、42.0イニングでERA 7.71。これではメッツも使いづらいですね。
フレクセンの今後
メッツがトレード相手を見つけられれば良いですが、他のクラブはその$3.9Mほどのサラリーは負担ししたくないでしょうから、ウェーバーにかかります。そしてそれをクリアし(どこも手が上がらない)、FA。そうなれば新しいクラブはリーグミニマムの日割りだけで済むことになります。
トレバー・ガットの今季の成績
一方、30歳のトレバー・ガットは、今季はここまでERA 4.03とやや高めの数字ではありますが、SO%が24.8、BB%が6.2、HR%が1.6と内容はかなり良いです。ボールも強く、スライダーも良いのでオッタビーノとはまた違うタイプの右腕でゲーム後半に期待が持てそうです。
ザック・マッケンハーンとは
マリナーズが獲得したザック・マッケンハーンは、もともとは2016年のオリオールズの11巡目指名の左腕。2021年4月にオリオールズからリリースされ、同年はホワイトソックスとサイン。2022年にFAとなり、メッツとサイン。28才ながら今季デビューのルーキーです。今季は3試合、6.0イニングに登板。ERAは6.00。
マッケンハーンはメジャーではまだ良い結果を出せていませんが、今季、トリプルAではかなり良い結果を出しています。SO9は5.58、BB9は3.82ですが、30.2イニングを投げてERAは0.88。これがメジャーで通用すれば良いですね。
メッツ、贅沢税上のサラリーは377M超え
メッツの40manロスターの贅沢税上のサラリーはすでに$377M。今季の基準額は$233Mです。
贅沢税はメッツがとんでもない額のサラリーとなったため、新たにペナルティー第4層が創設されました。新しい層に対しては90%のTAXがかかることになります。すでに予想される税額は$105M。
お読みいただき、ありがとうございました。
コメント