トップ・プロスペクトを囲い込み
現地2022年8月26日、マリナーズがトップ・プロスペクトのフリオ・ロドリゲス(Julio Rodriguez )と延長契約を結びました。
FAまで待たないで長期の囲い込み契約をするのはどうやらトレンドとなりそうです。
その先駆者で成功したのはやはりブレーブスのロナルド・アクーニャ・Jr.とのエクステンションのケースかと思います。ただ、レッドソックスも先駆者の1つで、かつてルズニー・カスティーヨと7年/$72.5Mでサインしましたが、これは如何ともし難いケースでした。
複雑な契約内容
さて、契約の中身ですが、非常に複雑なものでした。未来の頑張り度合いに見合った報酬が支払われるようにというのがその中身ですが、その中身が非常に細かいのが特徴。
12年/209.3Mドル保証
様々なケースが想定されているので、分解して書いて行きます。
まず、フリオ・ロドリゲスが保証されている内容は、以下の内容です。
- 12年/$209.3M (2023-2034)
その内訳を書くと、ご覧の通りです。サイニング・ボーナスはサイン後60日以内に支払われるので、2022シーズンに入れています。契約の範囲内はあくまで2023年からです。
なお、フリオ・ロドリゲスの誕生日は2000年12月29日なので、現地2022年8月26日時点で21才と241日。
2023-2029年で7年/119.3Mドル
まず、2023シーズンから2029シーズンまでの7シーズンでサイニング・ボーナス$15.3Mも含めて、7年/$119.3M総額があります。その内訳は下記のようになります。
Year | Season | Age | Amount | Note |
---|---|---|---|---|
– | 2022 | 21 | $15.3M | サイニング・ボーナス |
1 | 2023 | 22 | $4M | |
2 | 2024 | 23 | $10M | |
3 | 2025 | 24 | $18M | |
4 | 2026 | 25 | $18M | |
5 | 2027 | 26 | $18M | |
6 | 2028 | 27 | $18M | |
7 | 2029 | 28 | $18M |
2030-2034のプレーヤー・オプション
保証は12年なので、上記の7年に5年を加えた期間の内容がこれになります。
5年/$90M(2030-2034)のプレーヤー・オプションです(赤字の列)。プレーヤー・オプションとは選手側に主導権があるパターンですが、これは実質的には業績で決めるべスティング・オプションのような内容になっています。
Year | Season | Age | Ply Opt 5年/$90M | 想定1 5 年/$125M | 想定2 5年/$110M | 想定3 5年/$100M |
---|---|---|---|---|---|---|
– | – | – | – | MVP x1 & ASG x 2 in 2022-29 | ASG+SS x10 Combined in 2022-29 | ASG + SS x 8 Combined in 2022-29 |
8 | 2030 | 28 | $18M | $25M | $22M | $20M |
9 | 2031 | 29 | $18M | $25M | $22M | $20M |
10 | 2032 | 30 | $18M | $25M | $22M | $20M |
11 | 2033 | 31 | $18M | $25M | $22M | $20M |
12 | 2034 | 32 | $18M | $25M | $22M | $20M |
2022年から2029シーズンの間にフリオ・ロドリゲスが MVPあるいはシルバースラッガー賞、さらにオールスターの選出(ファン投票、監督推薦)をどれくらい受賞あるいは出場したかによって、2030-2034年のサラリーが決まる内容となっています。
想定1は同期間内にMVPを1度獲得及びオールスターに2度出場で条件をクリアー。想定2は、オールスター出場とシルバー・スラッガー賞受賞の回数を併せて10度でクリアー、想定3は8度でクリアーという設定になっています。いずれの条件もクリアーしない場合は、5年/$90Mです。
2030からのクラブオプション
マリナーズは2028シーズンのワールドシリーズ終了後に、2030年以降の契約をどうするか決めなければいけません。決めると言っても8年にするのか?あるいは10年にするのか?というほぼ2択のような選択肢です。
こちらも実質的にはべスティング・オプションのような内容ですが、フリオ・ロドリゲスが2022シーズンから2028シーズンまでの間でMVP投票でどのような結果になったかによって、選択肢があります。
8年のオプション
想定1はMVP投票で10位以内に2度入れれば$30M/年(2030-2037)に。想定2は10位以内を4度で$32.5/年、想定3は2パターンがありまして、【1】はMVPを1度獲得し、MVP投票で5位以内に1度入ればクリアー もしくは【2】としてMVP投票で5位以内に4度入れば、$35M/年 x 8年ということに。
Year | Season | Age | クラブOpt 8年/$200M | 想定1 8年/$240M | 想定2 8年/$260M | 想定3 8年/$280M |
---|---|---|---|---|---|---|
– | – | – | 0 MVP | MVP VOTE TOP 10 x 2 | MVP VOTE TOP 10 x 4 | 【1】 MVP x 1 MVP VOTE TOP 5 x 1 【2】 MVP VOTE TOP 5 x 4 |
8 | 2030 | 28 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
9 | 2031 | 29 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
10 | 2032 | 30 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
11 | 2033 | 31 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
12 | 2034 | 32 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
13 | 2035 | 33 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
14 | 2036 | 34 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
15 | 2037 | 35 | $25M | $30M | $32.5M | $35M |
10年のオプション
10年のオプションもあり、こちらは2022シーズンから2028シーズンの間で、【1】MVP獲得が2度、あるいは【2】として、MVP投票5位以内を4度達成で$35M x 10年という内容です。
Year | Season | Age | 想定4 10年/$350M |
---|---|---|---|
– | – | – | 【1】MVP x 2 【2】MVP VOTE TOP 5 x 4 |
8 | 2030 | 28 | $35M |
9 | 2031 | 29 | $35M |
10 | 2032 | 30 | $35M |
11 | 2033 | 31 | $35M |
12 | 2034 | 32 | $35M |
13 | 2035 | 33 | $35M |
14 | 2036 | 34 | $35M |
15 | 2037 | 35 | $35M |
16 | 2038 | 36 | $35M |
17 | 2039 | 37 | $35M |
ここの内容がこの契約のMAXの想定で、17 年/$469.3M (2023-39)になります。
SEAがクラブオプションを拒否する場合
マリナーズは上記のクラブオプションを拒否するかどうかを2029年のワールドシリーズ終了後に決めなければなりません。もし行使しない場合は、7 年/$168M (2030-36)のミューチュアル・オプションに変わります。双方合意が必要なので、マリナーズに拒否する余地は残されております。
Year | Season | Age | クラブOpt拒否 |
---|---|---|---|
– | – | – | →7 年/$168M の Mutualに |
8 | 2030 | 28 | $24M |
9 | 2031 | 29 | $24M |
10 | 2032 | 30 | $24M |
11 | 2033 | 31 | $24M |
12 | 2034 | 32 | $24M |
13 | 2035 | 33 | $24M |
14 | 2036 | 34 | $24M |
この契約のすごいところ
今回の契約は、MLS1.000未満の選手との延長契約という点では最大の契約となります。マリナーズ史上、もっとも高額な契約であり、仮にオプションが最大限発揮されたとしたら、17 年/$469.3M (2023-39)というとんでもない契約になります。
オプションで$30M/年を超えるケースも想定されていますが、あくまで最大値であって、保証されているパターンとしては、$20M未満の想定になっているのは良いなと思います。$30Mを超えると、クラブからもファンからも当たりが強くなりいいことがありません。ちゃんと仕事をしている選手なら、間違いなく怪我はつきものですから、調子が悪い時のことも考えないと本人が苦しいだけです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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