2021年のデータを活かすMLB
現地2022年3月26日、複数のソースによりますと、MLBは2022シーズンも投手の強粘着物質のチェックを実施予定。MLBは2021年のデータを活かし、そのランダム性をさらに強化するため、アンパイアーに協力を要請していることが明らかになりました。
シーズン後半にスピンレートがアップ
MLBのマイク・ヒル現場運営担当上級副社長(Senior Vice President of On-Field Operations )は、現地2022年3月25日(金)に各クラブのオーナー、幹部、監督、選手たち(メジャーもマイナーも含めた全選手)に覚書を通達。
その中で、「定期的なチェックの結果、スピンレートは当初低下したものの、残念ながらシーズン終盤に上昇し始めたことがデータから示された」と記載しました。
そもそもの取り締まりの計画は、2021年6月3日のオーナーズ・ミーティング後に浮上。当時、大きく騒がれていたこともあり、2021年6月21日に本格運用がスタートしました。ものすごいスピード感だったことは言うまでもありません。
運用初日はなかにはユニフォームのパンツまで下げて、「どうだ?」という投手がいたほどだったのは記憶に新しいところです。
スピンレートのデータ
このスピンレートの単位には”rpm”を使いますが、この”r”はrevolutionsの略で、”rpm”で ”revolutions per minute”。これはMLB Glossary(spin rate)においてもそう記載されています。言葉の定義について詳細は後述します。
さて、ヒル氏の指摘の通り、この取締りは当初は効果はあったようで、Statcastのデータでは、ファストボールのスピンレートは5月が平均2,323回転/分(以下rpm)だったのに対し、6月には2,258rpmに減少。たった10日の運用だけでも平均にこれだけのインパクトがありました。
フルに1ヶ月を計測した7月はどうだったかというと、平均で2,239rpm。ということはかなり多くの投手が使っていたことが判明したということでもあります。
ところが、チェックが慣れてきたシーズン後半の9月は上昇しています。わずかではありますが、平均で2,263rpm にアップ。
【取締実施前後のRPMの推移】
- 2021 MAY : Avrg. 2,323 rpm
- 2021 JUN: Avrg. 2,258rpm (↓) 6/21 取締スタート
- 2021 JUL: Avrg. 2,239rpm (↓)
- 2021 SEP : Avrg. 2,263 rpm (↑)
つまり、シーズン後半には取り締まりの効果が薄れたので、MLBは2020年はさらにランダムチェックを増やすよう審判に要請していると。
コントロールの低下も見られた
外部物質を使ったスピンレート上昇により、ボールの動きが著しく動くこと、これが投手にとってのメリットであり、打者のデメリットでもあります。この傾向から、2021年はコントロールの低下を招いているとの指摘もありました。
2021年の打率は低下
なお、2021シーズンのMLBの打率は.244。短縮シーズンだった2020年は.245で、直近のフルシーズンである2019年は.252。ちなみに2019年はジュースド・ボール(改造ボール)により、HRが著しく増加したシーズンでもありました。投手のフォーリン・サブスタンス(外部物質)の使用はこのシーズンの後にさらに派手なったという経緯があります。
直近で偏りがなさそうなのには2018年で、このシーズンの打率は.248。
2021年の.244は、投手の年と言われた1968年の.237に次いで悪い数字でした。
2021年のサスペンション
なお、2021シーズンの取締の実績ですが、6月27日にマリナーズのヘクター・サンティアーゴが指摘を受け退場。Dバックスのケイレブ・スミスも8月18日に指摘を受け退場となりました。ともに10試合のサスペンション(出場停止処分)を受けています。
2022シーズンの実施要領
2021年の結果から、MLBはチェックのタイミングと範囲をより警戒し、予測不可能にするよう審判に指示したとのことです。
下記は2021シーズンの実施についてです。原則、これに変化はありません。
ただし、2022年は頻度に関してはほぼ前年通りですが、タイミングに関してはかなりランダムに行われるとのこと。先発投手は場合によっては3度も実施される可能性もあるということですね。
- 出場する双方全ての投手に対して行われる。
- 先発投手にはゲームごとに複数の必須チェックがある。
- リリーバーは以下のいずれか、早いタイミングでチェックを実施。
- イニングの最後
- ゲームに入るとき
- ゲームから出る時(交代時)
- これらのチェックは、イニング間、あるいは投手交代時など、進行中のタイミングで行われる。
- キャップ、グラブ、指先をチェックされる。
- アンパイアは疑わしいと判断した際は、いつでもチェックできる
さらに細かいチェック項目
ヒル氏によれば、「ユニフォームやベルトに注目するのではなく、投手の手や指に規則違反の異物が含まれているかどうかを判断できるように審判員には追加の指導を行いました」とあり、審判は2021年の実績に基づいたチェック項目ができたと見ていいようです。
その他
細かいことですが、以下も2022年の実施要領に含まれています。
- 試合中の怪我に対する治療は認められる。ただし、マメ、切り傷(血マメなど)、爪の割れなどの治療で、投手が外部物質を使う場合は、各シリーズごとに事前に書類の提出が要求される。
- 捕手やポジションプレーヤーも、状況に応じて検査の対象となることがある。
たとえば、NPBの捕手がやっているようなサインをわかりやすくするための蛍光のマニキュアなども、検査の対象になるかもしれませんね。
- 相手チームが指摘するのもあり。ただし、チェックは打席中ではなく、打者が入れ替わるタイミング。
【余談】rpm の r について
回転を意味する”r”ですが、revolutionsだけでなく、rotationというのも使うこともあります。
このrevolutionsとrotationの使い分けは結構微妙です。
ちなみに、”revolution”は”revolve”の名詞です。拳銃関係の言葉で、「レボルバー」など聞かれたことがあると思うのですが、その派生語です。
Revolve と Rotateの違いは英語の辞書などでは、下記のように説明しています。
- rotate: 軸を中心として回転する
- revolve: 軸やそれ以外の何かを中心に回転する
よく使われる例文としては「地球は自転する」という場合は、The earth rotates on its axis. (地球は地軸を回る=自転する)でrotateが使われ、「地球は公転する」という場合は、The earth revolves around the sun . (地球は太陽の周りを公転している)というふうにrevolveが使われます。
どっちも軸が絡んできますが、どうやら違いは一箇所に留まって回っているかことを指すかどうか?という感じがします。
では、投球されたボールはどちらか?と考えた場合に、動いているので、やはりrevolveの名詞形のrevolutionsを使うというふうに考えればいいのでは?とも思います。物理をやっておられる方、このような解釈でよろしいでしょうかね?
以上です。何か追加情報があれば、アップデートします。
お読みいただき、ありがとうございました。
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