現地2022年2月26日(土)の交渉
現地2022年2月26日(土)、レギュラーシーズンを162試合実施するためにMLB側が設定した28日の合意の期限まであと2日に迫り、交渉は敵対関係に入りました。
筆者は記事にしませんでしたが、25日(金)は、それなりに楽観視できる流れになり、シーズン短縮の危機は一旦は和らいだように見えました。しかし、26日(土)の交渉では両者の関係はもはや敵対関係にまで硬化。レギュラーシーズン短縮が現実味を帯びてきました。
選手会が大幅譲歩
25日(金)の交渉が楽観視出来たのは、選手会側がいくつかの核となるコア・エコのミスのトピックに関し、「包括的」な提案を行う用意が見えたからでした。つまりは、選手会がこれまでにオファーしてきた内容を「大幅に後退」させる用意が見えたからでした。贅沢税の閾値の要求の変更、スーパー2資格の拡大の対象人数の変更、レベニュー・シェアリングの分配金の額の削減です。
選手会:スーパー2を上位75%から35%に
そのうちの1つがMLS3年に満たない2年の選手に調停資格を与えるスーパー2資格の対象の割合です。この日、選手会はこれまでの割合から大幅に削減した内容を提示。
- スーパー2対象選手:上位35% (26日に選手会が提示)
- これまでの選手会の提示:上位75%
- 旧CBAの対象選手:上位22%
しかしMLB(オーナー側)は、スーパー2の問題は今回のCBA交渉では、従来の上位22%より増やすことに関して一貫して「NO」を示しており、この日の選手会のアプローチも正当な譲歩とは解釈しておらず、不服な態度を表明したと伝えられています。
選手会:レベニュー・シェアリング資金も譲歩
また選手会は当初、レベニューシェアリングの資金に関して$100Mの削減を要求。その後は$30Mへとラインを下げました。そしてこの日はこの数字をさらに変更。レベニューシェアリングを受けるクラブは一切のお金を失うことなく、MLBのセントラル・ファンドからの追加資金が提供されることで、ローカルでの収入を増やす原資とするというもの。
レベニュー・シェアリングの原資
またレベニュー・シェアリングについては記事を書こうと思いますが、この日の選手会の提案内容で、「レベニューシェアリングを受けるクラブはお金を失うことなく」というのが気になった方もいらっしゃると思いますので、簡単に原資について触れておきます。
【レベニューシェアリングの原資】
- テレビ放映権の分配
- マーチャンダイジング収入のプール(MLBとついた商標権のグッズの収入)
- mlb.comを介したインターネットからの収入
- 贅沢税の税額の徴収及びその再分配
- ローカルテレビ収入の一部を共通のプールに納める
など、典型的なものでこのようなものがあります。よって、レベニューシェアリングを受けるクラブも、「ローカルテレビ収入の一部」を一旦は共通のプールを入れているのです。
今回の選手会の提案は、そういった一時的なマイナスもなくすようにしましょうよという提案です。
しかし、オーナーたちはこのテーマについて、何ら譲歩する気はない模様です。
実は、このレベニューシェアリングに関しては、結構タブー視されている面があって、前からオーナー側は、アンタッチャブルな聖域として手を突っ込まれるのを嫌がっています。選手会もちょっと揺さぶりをかける意味もあり、攻めたというところもあるでしょう。
おそらく、ここは選手会が圧をかけるだけで終止すると思われます。オーナー側とすれば、おいしい資金源でしょうし、おそらく内部でも儲かっているクラブとそうでないクラブとの争いがあり、統一されないのだと筆者は推測します。
さて、選手会は他にも譲歩しました。
選手会:贅沢税の設定も譲歩
以前、選手会側が設定していた新CBAでの贅沢税の閾値は、次の5年間に$245M-$260Mの範囲で設定するというものでした。そして26日に選手会が提示したのは下記の一番左の列になります。
26日の選手会 の提示 | 12日のオーナー側 の提示 | 26日のオーナー側 の提示 | |
2022 | $245M | $214M | $214M |
2023 | $250M | 同上 | $215M |
2024 | $257M | $216M | $216M |
2025 | $264M | $218M | $218M |
2026 | $273M | $222M | $222M |
オーナー側は26日の提示では、2年めに$1Mを増やしただけ。後は、12日に提示した閾値と同じです。
税率の設定
またオーナー側がこの日提示した税率は下記のような数字。
- $214M-$234Mの間で使われた金額の超過分に対して42%の税率
- $234M-$254Mの超過分に対して62%の税率
- →突破したクラブはドラフト指名権キャンセルも
- $254Mを超えた分の超過分に対して95%の税率
- →突破したクラブはドラフト指名権キャンセルも
12日に提示されていた税率
$214M-$234Mの間で使われた金額の超過分に対して50%の税率
$234MM-$254MMの超過分に対して75%の税率→ドラフト指名権はそのまま
$254MMを超えた分の超過分に対して100%の税率→ドラフト指名権はそのまま
これらは旧CBAの超過課税率(20%、32%、62.5%)よりも明らかに大きく跳ね上がっていることは言うまでもありません。
なぜ、オーナー側が贅沢税の税率を高くしたいのか?
ここで疑問に思うと思います。どうしてオーナー側が自縄自縛となるように、税率やペナルティーを重くする提案を出すのか?という点です。ドジャースなどは税率が低いはずが言い訳ですし、ドラフトピックも失わない方がいいに決まっています。しかし、税率もペナルティーも重くしている理由。
それは贅沢税を超えたら金額的にも、新人獲得的にも大きなペナルティーがありますよという規定を作ることで、それを超えないように経営しないといけないので、サラリーの支払総額は下げますね!という法的根拠を得ることを意味しているからです。
つまりは贅沢税の制度を実質、サラリー・キャップ制として運用したいのです。
だから閾値も低い方がオーナー側はありがたいという構造です。
26日の合意事項
ROY1-2位でMLS +1年
なお、オーナーと選手会は、ROYの投票で1位か2位になった選手にはMLSを1年追加することで合意しています。
1シーズンのマイナー・オプションは5回
また、これまでオプショナル・イヤーであれば、何度でもマイナーとメジャーを往復できた回数を1シーズンに最大5回までに変更という点でも合意しました。
ドラフト・ロッタリーと拡大PS
なお、この日はドラフトくじの進展はなかったようです。 25日の交渉では合意間近と言われていましたが、まだ未決です。
また、この件は拡大ポストシーズンとの駆け引きにも使われており、オーナー側は14球団の拡大ポストシーズンを受け入れるなら、ドラフト・ロッタリーの対象を選手会の望む数に増やそうと持ちかけています。
選手会側の拡大ポストシーズンは12クラブ(現状は10)です。
選手会はこの日のオーナー側の不服態度には激怒。徹底抗戦するとの意思も見せてはいますが、一応、27日(日)もテーブルにはつく予定ではおります。
まだ所属先が決まっていないFA選手は何百人とおります。
奇跡的に28日に合意ということも確率的には0%ではないでしょうが、ほぼ0%に近いというのが現状でもあります。
スプリング・トレーニングのキャンセルはまだ続くでしょうね。そしてシーズンの短縮もどんどん近づいています。
お読みいただき、ありがとうございました。
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