2月26日からのゲームスタートは遅延
現地2022年2月18日、MLBは公式にスプリング・トレーニングのゲーム開始は最速で3月5日からのスタートとなることを発表しました。
We regret that, without a collective bargaining agreement in place, we must postpone the start of Spring Training games until no earlier than Saturday, March 5th. All 30 Clubs are unified in their strong desire to bring players back to the field and fans back to the stands. The Clubs have adopted a uniform policy that provides an option for full refunds for fans who have purchased tickets from the Clubs to any Spring Training games that are not taking place.We are committed to reaching an agreement that is fair to each side. On Monday, members of the owners’ bargaining committee will join an in-person meeting with the Players Association and remain every day next week to negotiate and work hard towards starting the season on time.
「団体交渉が成立しないまま、スプリングトレーニングの試合開始を3月5日(土)より前に延期せざるを得ないのは遺憾です。全30クラブは、選手をグラウンドに、ファンをスタンドに戻したいという強い思いで一致しています。各クラブは、開催されないスプリングトレーニングの試合のチケットを各クラブから購入したファンに対して、全額払い戻しのオプションを提供する統一方針を採用しました。我々は、各側にとって公平な合意に達するよう努力しています。オーナーの団体交渉委員会のメンバー達は、月曜日に選手会との直接のミーティングに参加し、来週も毎日交渉に臨み、予定通りのシーズン開幕に向けて努力する予定です。」
チケットのリファンドは購入者に対しては当然ですが、クラブ側も数試合とは言え、収入が減ってしまいますから、経営に打撃ですね。スプリングトレーニングの収益配分の構造まで把握していないのですが、フロリダ、アリゾナのローカルの収入は間違いなく減るでしょうね。
ロックアウト解除のデッドラインは2/28
現地2022年2月17日、たった15分で終了した団体交渉の後にMLB側は2022年3月31日のレギュラーシーズン開幕に向け、団体交渉の合意のデッドラインは2月28日と定めましたが、今の状況からすれば、3月にもずれ込み、スプリングトレーニングの準備期間もそれに伴ってずれて行き、引いてはレギュラーシーズンの開幕日がずれてしまうということにもなりかねません。開幕日が後ろにずれた場合、ポストシーズンのスケジュールを再調整して162試合にするか、あるいは試合数をカットするという最悪の事態も見えてきました。
15分で終了した17日の交渉の中身
さて、現地2022年2月17日(木)に行われた団体交渉の中身について見ていきます。報道されている通り、交渉時間は15分という短さでしたが、ダン・ヘイムMLB副コミッショナーと選手会チーフネゴシエーターのブルース・メイヤーは、その後も約20分間サイドミーティングで話し続けたとも言われています。これを入れても短いですが、こういう根回し的な動きがあったのは良いことだと思います。
選手会が新提案
このセッションでは、選手会は新たに2つの提案を行ったと見られています。
【1】スーパー2を「トップ22%だけでなく80%まで適用」
2021年12月1日執行となった旧CBAの調停資格基準はMLS3年以上+スーパー2適用者に限られていますが、これに対して選手会はロックアウト後の交渉ではMLS2年の選手全ても対象となるように動いてきました。
それが実現するなら、スーパー2は不要だねということで、現地2022年1月25日の交渉ではスーパー2はもう不要という論調で進んでいたのです。同日にはボーナス・プールを設けること自体にも同意。ただ、ボーナス・プールの金額はこの時点でも選手会側が $105 Mの設定を望んだのに対して、 MLB側はたったの$10Mということで、この時は、選手会側もそれ以降は見直すだろうという見方をしていと思われ、それゆえにスーパー2は不要ということにしていたのですが、双方の溝は深刻なほど埋まらず。この点は後述します。
そして、現地2022年2月17日の交渉では選手会はMLS2年の全ての選手を調停資格の対象とするという当初の設定を取り下げ、代わりにスーパー2を復活。その資格を得ることができる選手の数を大幅に増やすことにシフトしました。スーパー2を設けるしかありませんからね。
旧CBAではMLS2年以上3年未満の選手で、MLSが上位22%の選手がスーパー2資格者となり、4度のサラリー調停を受けることができましたが、この日の選手会の提案では、MLSの上位22%ではなくMLSの上位80%の選手がスーパー2の適格となるよう要求したのです。
MLSが80%とはなにか?というと、要は勤続年数のことで、限りなくMLS3.000に近い2点台の選手をこれまでの22%から80%に拡大させようということ。
80%が対象のスーパー2拡大案なら+79名
トレード・ルーモアさんの情報ではMLBPAが提案したスーパー2拡大案がこのオフに実施されていたなら、さらに約79人の選手が調停のファースト・イヤーを迎えられただろうと見ています。
【2】選手会:ボーナス・プールをアップ!
そしてもう1つの新提案は調停前選手に充てたいボーナスプールの金額を$115Mに上げたのでした。
選手会は当初$105Mと提示していたものをその後の交渉で一旦$100Mに引き下げましたが、今回はその要求額を$115Mに引き上げたのです。
引き上げの理由は?
また交渉が長引く要素を提示して、選手会は何を考えているのだと思いたいところですが、これにはどうやら理由があって、$115Mは対象とする選手の数を増やしたことを反映していてこうなったようです。
そして選手会は評価基準としてまたしても1月25日にやめようと合意した基準を提示。fWAR(FangraphのWAR)とbWAR(Baseball ReferenceのWAR、rWARと同じ)で平均した上位150人の選手を対象することを希望したのです。選手の数が増えているので、プールの金額も上がっていると。
なお、オーナー側の前回のオファーでは、上位30人が$15Mのボーナスプールの対象となります。
MLBPAによるこれらの変更がMLBの方向性を大きく変えるものであるかどうかは、もちろん、見る人の目に委ねられているのでしょう。
選手会からすれば2年以上の全ての選手が対象だったのが、80%になるだけでも、譲歩しているとも言えます。
オーナー側はスーパー2の対象者を80%にすることはサラリーアップに繋がることから恐らく真っ向から否定してきます。そうなると、今後の交渉で22%から80%のラインをどこに引くかという妥協点の模索が始まると思われます。
選手会:若い選手のサラリーを上げたい
選手会の新CBAの目標としてはキャリアの早い段階にあって活躍している選手に多くのサラリーが支払われる仕組みを作りたいというのがあります。
ボーナスプールの増額要請はその一環で、 30人ほどで$100Mではなく、150人ほどで$115Mとなるため、より多くの調停前選手がサラリーアップを実現することに。単価も下げているという譲歩もあるということです。
また、同日、選手会は贅沢税についても言及していたようで、最初に掲げた$245Mの閾値は崩していないとのこと。さらに最低年俸も$0.775Mというこれまでの要求を変えなかったということでした。
来週は交渉のペースが上がるそうです。積極的な見方をすれば、選手会は少し妥協しているのでオーナー側がそろばんをどう弾いて対案を持ってくるかですね。
選手会の要求とオーナーのそろばんに関してはまた別に記事にしたためます。
お読みいただき、ありがとうございました。
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