ABSとはAutomated Ball/Strike System
現地2022年1月21日、マイナー・リーグでの新しい試みが発表されました。2022年、マイナー・リーグのトリプルAレベルで、ロボアンパイアが導入されることになりました。
このロボアンパイアは、2022年になってABSという呼び方をされるようになりました。ABSとはAutomated Ball/Strike System(オートメイティッド・ボール/ストライク システム)の略です。
アトランティック・リーグで検証済み
このロボ・アンパイアことABSは、2019年初めにアトランティックリーグで導入されました。MLBとアトランティック・リーグは2019シーズン前に提携。ABS(ロボアンパイア)を皮切りに様々な試行を実施しました。将来のルール変更に見越しての実験ですね。
2019年のアトランティック・リーグは通信速度のチェックがメイン
実地では通常通り、アンパイアはホームプレートの後ろに立っていて、システムがボール・ストライクを判定し、バックヤードにいるスタッフと通信してアンパイアが無線で結果を受け、コールするというものでした。
ロボアンパイアの実地テストは、精度としてはよくありませんでした。詳細は下記に書かせていただいていますが、とにかく高低がいわゆるアホで、チェックスイングがだめという評価でしたね。
初めての試みゆえに、データ取得が主な目的ではありましたが、とんでもない高いボール球をストライク判定された選手のやってられない感は見逃すことはできませんね。
ただ、導入側の評価としては上々だったという正反対の評価に。では何を見ていたのかというと、どうやらシステムの十分な一貫性、信頼性、応答性をもって動作できることが確認されたというのです。言ってみれば、アンパイアへの通信がうまく行ったという評価でしょう。
信頼性というのも精度の意味ではなくて、システムが稼働したどうか、システムが止まって試合の進行に影響を与えることはなかったという評価かと。筆者もIT関連に携わっているので、切り分けて良いところはうまく行ったと評価するところはよくわかるのですが、まだ試合に参加出来るレベルではないとは思うんです子どね。
ABS(ロボアンパイア)実施の意味
アンパイアの仕事はなかなか大変です。アンパイアの立場からすると、うまく出来た判定は全く評価されず、たった1度のミスであらゆる角度から叩かれるという辛いものです。
特に打者のストライク・ゾーン判定は試合中、相当な頻度でクレームを受けます。もっとも、シーズン終盤に大谷選手がとんでもないボール球をストライク判定されたことを筆頭に、おかしいと思うことも正直ありますね。ただ、人間の判定ですから、あって当然とも言えると思うのです。
そこを考えると、審判という職が消えるリスクがあるものの、精神衛生的に厳しい職業ではあると思いますから、ABSが導入されるのは歓迎される面もあります。
特に昨今のMLBの中継は、かなりのリアルタイムでフレームのどこに投げられたか表示されます。それと比較される審判はかなり厳しい仕事ではあると思うのです。
Umpire Rob Drake makes compelling case for umpire Robo Drake: https://t.co/z7XSc2eQtb pic.twitter.com/ISMz4hN79N
— Deadspin (@Deadspin) August 27, 2019
TV中継、サイトのグラフィック
TVやドットコムのゲーム中継中のストライク/ボール判定がどこまで精度が高いのかは筆者は正直不明です。フェンウェイのように真後ろからカメラが撮っている球場もありますし、甲子園の阪神戦のようにややレフトから撮影しているケースもありますから。視聴者にはその精度の信頼性は正直わからないところでもあります。
放送のストライク/ボール判定の仕組みは今後のABSにも活かされるかもしれません。というのも審判のコールよりも早くフレームの通過位置を表示することが多いからです。
ABSは、ピッチド・アークというボールがピッチャーからキャッチャーに届く軌道が、ストライクゾーンに入るかどうかをトラックマンのレーダーによって見ているというのが仕様の大枠です。ボールの中心がストライクゾーンに交差するかどうかをチェックしているのですが、フレームの上下は身長によって変わりますから、一人ひとりでフレームを設定していたのでしょう。
Until we get a Robo-umpire this is the Art of Receiving. #ArtofCatching pic.twitter.com/DIVLz0Qf7n
— Robbie Robinson (@RobRobinson23) February 3, 2021
そしてピッチド・アークの精度が何より重要ですね。高低で大きなミスをした2019年からどう改良するのかが見ものです。
ちなみに、2020年はマイナー・リーグがキャンセルとなったため実施されず。2021年はクラスAのサウスイーストリーグで実施されました。
2022年実施のクラブ
さて、トリプルAでABSが導入されるのは以下のクラブです。
- アルバカーキ・アイソトープス(Albuquerque Isotopes/ ロッキーズ)
- シャーロッテ・ナイツ(Charlotte Knights/ホワイトソックス)
- エルパソ・チワワズ(El Paso Chihuahuas/ パドレス)
- ラスベガス・アビエイターズ(Las Vegas Aviators/ アスレチックス)
- オクラホマシティ・ドジャース(Oklahoma City Dodgers/ドジャース)
- レノ・エイセズ(Reno Aces/D-backs)
- ラウンドロック・エクスプレス(Round Rock Express/レンジャーズ)
- サクラメント・リバー・キャッツ(Sacramento River Cats/ジャイアンツ)
- ソルトレイク・ビーズ(Salt Lake Bees/エンゼルス)
- シュガーランド・スペース・カウボーイズ(Sugar Land Space Cowboys /アストロズ)
- タコマ・レイニアーズ(Tacoma Rainiers /マリナーズ)
設備の導入の都合もあるのでしょう。西地区ばかりですね。
トリプルAで調整している選手の調子が狂わないことを祈るばかりです。
なお、アトランティック・リーグは2022年はロボアンパイアを使いません。さて、どうなるでしょうか??
お読みいただき、ありがとうございました。
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