選手会投票の結果
現地2024年10月28日、2024シーズンのPlayers Choice Awards(プレーヤーズ・チョイス・アウォーズ)が発表されました。
11月半ばになるとROY(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)を筆頭に、MOY(マネージャー・オブ・ザ・イヤー)、サイ・ヤング賞、そしてMVPが発表されますが、これらはいずれもBBWAA(全米野球記者協会)に所属する記者の投票によって決定されるアウォード。
一方、こちらは現役MLB選手会会員の投票によって決定。選手同士が互いをどう評価しているのかが分かる賞であり、多数の票を得た選手はある意味、記者からの投票よりも栄誉に感じるかもしれません。投票の適正さを担保するため、監査会社も入っています(2018年はKPMGで、それ以降も会計系のコンサルが入っていると思われます)。
このアウォードは1992年から実施されています。
Awardの概要
今季からPhilanthropist of the Year (フィランソロピスト:慈善家)が新設されました。よって、計8部門となります。
- MLB Players Choice Player of the Year (1人)
- MVP中のMVP。しかも選手が選んだというところが価値のあるところ。
- MLB Players Choice Outstanding Player(AL/NL)
- BBWAAの投票のMVPに相当。選手が選んだ各リーグのMVP。
- MLB Players Choice Outstanding Pitcher (AL/NL)
- BBWAAのサイ・ヤング賞に相当。現場が選んだサイ・ヤング賞。
- MLB Players Choice Outstanding Rookie (AL/NL)
- BBWAAのROY(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)に相当。選手が選んだルーキーNO.1。
- MLB Players Choice Comeback Player (AL/NL)
- 怪我などから復帰し、素晴らしい成績を残した選手に贈られます。
- MARVIN MILLER MAN OF THE YEAR AWARD (1人)
- フィールド上の優れたパフォーマンスとフィールド外の地域社会への貢献が認められた選手に贈られる賞で、リーダーシップをもって他の選手に良い影響を与えた選手も対象です。マービン・ミラーは、選手会に尽力した人物。詳細は下記の記事をご参照ください。
- MLB Players Curt Flood(カート・フラッド) Award (1人)
- この賞は1970 年代に選手の自由な移籍を阻んでいたリザーブ・クローズ(留保条項)と戦い、フリーエージェントへの道を大きく切り開いたカート・フラッドを記念して設けられた賞。「選手会と選手の権利向上のために無私の献身を長年にわたって示した元選手(存命、故人を問わない)」に贈られます。
- Philanthropist of the Year(1人)
- 文字通り、慈善活動を行い社会貢献した選手に贈与される賞。
では2024シーズンの受賞者をご紹介します。
MLB Players Choice Player of the Year
- アーロン・ジャッジ(NYY) OF
選手が選ぶMVP中のMVPは58HRを放ったアーロン・ジャッジが受賞。アーロン・ジャッジはオールスターまでに34HRをマーク。シーズン終盤にドジャースの大谷選手の追い上げもありましたが、MLB NO.1のHR数となりました。打率.322、OBP .458、SLG.701、OPS 1.159をマーク。これらはいずれもこれまでのキャリアハイを超えました。さらに二塁打(36)、RBI (144)、BB (133)、TB(Total Bases: 392)も揃ってキャリアハイ。夏には6度目のオールスター出場を果たし、マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、ベーブ・ルースとともに、複数シーズンで58HR以上を放ったメジャー史上4人目の選手となりました。大谷選手を抑えてNO.1です。
ジャッジは2022年に次ぎ2度目の受賞。
Finalist
ファイナリストはアーロン・ジャッジ(NYY)、大谷選手(LAD)、ボビー・ウィット・Jr. (KC)の3名でした。
MLB Players Choice Outstanding Player
- 【AL】アーロン・ジャッジ(NYY) OF
- 【NL】大谷翔平(LAD) DH
AL アーロン・ジャッジ
ジャッジの詳細は上述のPlayer of the Yearに。こちらもジャッジにとっては2022年に次ぐ2度目の受賞。
Finalist
ファイナリストはアーロン・ジャッジ(NYY)、ホセ・ラミレス(CLE)、ボビー・ウィット・Jr.(KC)の3名。
NL 大谷翔平
ドジャースのDH、大谷選手は2024年、史上初の50-50を達成。NLの打撃部門ではRun(134)、HR(54)、RBI(130)、SLG(.646)、OPS(1.036)、TB(411)でトップ。4月には日本人選手として通算176本目のHRを放ち、これまでの松井秀喜選手の記録を抜いてMLBでの日本人選手最多HR記録を更新。6月のタイガース戦ではMLBキャリア200HRの大台を突破しました。
大谷選手はエンゼルス時代の2021年にPLAYER OF THE YEAR を受賞しましたが、同時に AL OUTSTANDING PLAYERも受賞。さらに2023年にもエンゼルスでAL OUTSTANDING PLAYERを受賞していますから、今回で計3度目の受賞となります(AL2、NL1)。
Finalist
NLのファイナリストは大谷選手(LAD)、フランシスコ・リンドーア(NYM)、マーセル・オズーナ(ATL)の3名でした。
MLB Players Choice Outstanding Pitcher
- 【AL】タリク・スクーバル(DET) LHP
- 【NL】クリス・セール(ATL) LHP
AL タリク・スクーバル
タリク・スクーバルは、2023年シーズン終盤の好調を維持して2024年に突入。今季はAL最高の投手として大ブレークしました。勝利数(18)、ERA(2.39)、SO(228)でALの投手トリプル・クラウンを達成。rWAR (=bWAR:Baseball Reference算出のWin Above Rreplacement)はシーズン開始時の5.0から11.4へ一気に上昇。気持ちの良いくらいの急激な変化となりました。
特に素晴らしい点は31先発のうち25先発で6イニング以上を投げた点。勝つために起用され、それに応えていた投手であると言えるでしょう。タイガースはオールスター後に39勝26敗と猛ラッシュをかけましたが、その原動力はタリク・スクーバルの無双ぶりにあったことは間違いないところです。このプッシュもあり、タイガースは2014年以来となるポストシーズン進出を果たしました。
Finalist
ALのファイナリストはタリク・スクーバル(DET)、エマニュエル・クラセ(CLE)、ローガン・ギルバート(SEA)の面々。クローザーが入りましたね。
NL クリス・セール
クリス・セールは、2021年から2023年までレッドソックスで計31試合の登板にとどまりましたが、2024シーズンに移籍したブレーブスで完全復活を遂げ、圧倒的な存在感を取り戻しました。今季は14年のキャリアで8度目の200奪三振を達成。これは左腕としては歴代2位タイの記録で、フィリーズの名投手スティーブ・カールトンと並びました。ちなみに1位はランディー・ジョンソンで300奪三振以上を6度やっていますから、200奪三振以上はいわずもがなです(14度やってます!)。
クリス・セールはキャリアハイの18勝を挙げ、ERA 2.38、奪三振数 225をマークし、2011年のクレイトン・カーショウ以来となるNL投手トリプルクラウンを達成!また、18試合連続自責点2以下というメジャー記録を樹立しました。
Finalist
NLのファイナリストはクリス・セール(ATL)、ポール・スキーンズ(PIT)、ザック・ウィーラー(PHI)。
MLB Players Choice Outstanding Rookie
- 【AL】コルトン・カウザー(BAL) OF
- 【NL】ジャクソン・メリル(SDP) OF
AL コルトン・カウザー
コルトン・カウザーは、4月に打率.303、OBP .372、SLG.632、HR 6、RBI 18を記録し、ROM(月間最優秀新人)に輝きました。7月19日から8月4日までの17試合連続安打は、オリオールの新人最長タイ記録。この間、.391/.452/.625、HR 4、RBI 15をマーク。
シーズン成績は.242/ .321/ .447、OPS .768。 HR 24はALルーキー史上トップの本数(大谷の1年目は22HR)。オリオールズからは前年のガナー・ヘンダーソンに次いで2年連続の受賞。また2021年のライアン・マウントキャッスルも含めると過去4シーズンで3度がオリオールズのルーキーです。
Finalist
ファイナリストはコルトン・カウザー(BAL)、ボビー・アブレイユ(BOS)、オースティン・ウェルズ(NYY)。
NL ジャクソン・メリル
2021年のドラフトでパドレスから1巡目指名を受けたジャクソン・メリルは、メジャー・デビューとなった2024シーズンに打撃、守備、走塁で強烈なインパクトを残しました。ジャクソン・メリルはRBI(90)、打率(.292)、HR(24)、OPS(.826)、fWAR(5.3)をマーク。これはMLBの全新人の中でトップ。また、8回以降に6本の同点HRを放つなど、勝負強さも発揮。7月にはオールスターにも出場。これはパドレスのルーキーとして初。しかもパドレスの選手としては史上最年少での選出となりました(21才)。
Finalist
ジャクソン・メリル(SDP)、ジャクソン・チューリオ(MIL)、ポール・スキーンズ(PIT)。
MLB Players Choice Comeback Player
- 【AL】タイラー・オニール(BOS) LF
- 【NL】クリス・セール(ATL) LHP
AL タイラー・オニール
タイラー・オニールは2022年と2023年の2シーズンは怪我に悩まされ、合計168試合の出場にとどまりました。今季、レッドソックスへのトレード後、2021年のNL MVP投票で8位に入った実力を発揮。オープニング・デーにHRを放ち、5年連続開幕HRのMLB新記録を樹立。彼はシーズンを通してレッドソックスの打線の中心として存在感を示しました。HR 31本はキャリア2度目の30本塁打以上の達成です(2021年は34本)。
Finalist
タイラー・オニール(BOS)、ギャレット・クロシェ(CWS)、チャド・グリーン(TOR)。
NL クリス・セール
クリス・セールはNL Outstanding Pitcherの欄をご参照。
Finalist
クリス・セール(ATL)、リース・ホスキンス(MIL)、ジュリクソン・プロファー(SDP)。
MLB Players Choice Man of the Year
- リース・ホスキンス(MIL) 1B
詳細は後述のPhilanthropist of the Year をご覧ください。
リース・ホスキンスはこの部門では卓越したリーダーシップの発揮により受賞。ブルワーズでの移籍初年度にもかかわらず、選手会のブルワーズ代表に就任。
Finalist
マックス・フリード(ATL)、スティーブン・クワン(CLE)、パブロ・ロペス(MIN)がファイナリストとして名を連ねました。
MLB Players Curt Flood Award
- デーブ・ウィンフィールド(Dave Winfield)
デーブ・ウィンフィールドはMLBキャリア22シーズン(1973-1995)のレジェンドであり、HOF(野球殿堂)入りの元選手。クラブハウスのリーダーでもあり、選手時代は複数の団体交渉を行い、6度の労働停止(ストライキやロックアウト)に関わるなどMLB選手会を揺るぎないレベルでサポートしてきたことが評価されて受賞。2013年以来、選手会の事務のトップであるトニー・クラークをシニア・アドバイザーとして支えています。
Finalist
ファイナリストはデーブ・ウィンフィールドとスコット・アンダーソン。
Philanthropist of the Year
- リース・ホスキンス(MIL) 1B
ブルワーズでの最初のシーズンで26HRを放ったリース・ホスキンス。移籍1年目からさすがの長打力を発揮しましたが、彼の社会貢献のインパクトはこれ以上。ホスキンスはフィリーズ時代、妻のジェイミーとともに筋ジストロフィー協会(MDA)のために100万ドル以上の寄付金を集め、さらに今年はブルワーズのゲームに同病やALSと戦っている100人の人たちを招待し、もてなしました。また、MDAのサマーキャンプにも積極的に参加し、公共サービス広告やソーシャル・メディア・キャンペーンその他のイベントを通じて、同病に対する認識を広めるなど彼と彼の妻の社会貢献はHR以上のヒュージ・インパクトを残しました。
Finalist
ファイナリストはリース・ホスキンス(MIL)、ブレント・スーター(CIN)、ホセ・トリビーニョ(NYY)。
以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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