新CBA(2022-26)
2021-22のオフの間に新CBAの交渉をめぐり99日間にわたってロックアウトが発生したのはご承知の通りです。
リーグ側はインターナショナル・ドラフトを導入したいという立場で、組合側はクオリファイング・オファー(以下QO)を廃止させたい立場ゆえ、この2つの問題は連動していました。
2022-26 団体交渉協定の条項に基づき、MLB と MLB 選手会は 2022 年 7 月 25 日までにインターナショナル ドラフトを実施することに合意する機会を得ました。しかし、同日に両者は合意せず、インターナショナル・ドラフトは棚上げされたがゆえに、現在のCBAが終了するまでQOシステムはそのまま維持されることになったのです。よって、ドラフト補償やペナルティーも旧制度のままです。
2022-23年FA選手の実例で
2022年オフに初FAとなったに選手に提示されたクオリファイング・オファーは14選手に提示され、うち2選手は受諾。
そして2022年内に12選手すべての移籍先が決まりました。
ここでQO拒否で出て行かれる側のクラブのドラフト補償と拒否選手を獲得した受け入れ側のクラブのドラフト・ペナルティーについて改めて整理しておきたいと思います。
QO提示リストとその結果
今オフのQOの結果と新契約の一覧はこちらです。
- アーロン・ジャッジ(Aaron Judge) / ヤンキース/OF
- 拒否→FAへ→12/7、NYYと9年/$360M (2023-31)で再契約
- アンソニー・リッゾ(Anthony Rizzo )/ヤンキース/1B
- 拒否→FAへ→11/15、NYYと2年/$40M (2023-24) + 2025 $17MクラブOpt($6Mバイアウト)で再契約
- トレイ・ターナー(Trea Turner)/ ドジャース/SS
- 拒否→FAへ→12/8、PHIと11年/$300Mでサイン
- タイラー・アンダーソン(Tyler Anderson )/ドジャース/LHP
- QO拒否→11/16、LAAと3年/$39Mでサイン
- タイラー・アンダーソンの場合、LADからのQOを一旦は受諾しましたが、後日にLAAと上記の契約を結んだたため、形としてはQO拒否ということになります。
- ザンダー・ボガーツ(Xander Bogaerts)/ レッドソックス/SS
- 拒否→FAへ→12/8、SDPと11年/$280M (2023-33)でサイン
- ネイサン・イオバルディ(Nathan Eovaldi)/レッドソックス/ RHP
- 拒否→FAへ→12/27、TEXと2年/$34M (2023-2024) + 2025 $20M べスティング・オプション
- ジェイコブ・デグロム(Jacob deGrom)/メッツ/RHP
- 拒否→FAへ→12/2、TEXと5年/$185M (2023-27)+ 2028 コンディショナルOptでサイン
- クリス・バシット(Chris Bassitt )/メッツ/RHP
- 拒否→FAへ→12/13、TORと3年/$63M (2023-25)でサイン
- ブランドン・ニモ(Brandon Nimmo )/ メッツ/OF
- 拒否→FAへ→12/8、NYMと8年/$162M (2023-30)で再契約
- ダンスビー・スワンソン(Dansby Swanson )/ブレーブス/SS
- 拒否→FAへ→12/17、CHCと7年/$177M(2023-2029)でサイン
- ウィルソン・コントレラス(Willson Contreras )/カブス/C
- 拒否→FAへ→12/9、STLと5年/$87.5Mでサイン
- マーティン・ペレス(Martín Pérez)/レンジャーズ/LHP
- 受諾!
- ジョク・ピダーソン(Joc Pederson)/ジャイアンツ/OF
- 受諾! 追記
- カルロス・ロドン(Carlos Rodón )/ ジャイアンツ/LHP
- 拒否→FAへ→12/15、NYYと6 年/$162M (2023-28)でサイン
3つの大きなカテゴリ分け
まず、レベニューシェアリングを受けているかによって大きなカテゴリ分けがありますが、わかりやすくするために先に2022シーズンに贅沢税の閾値の$230Mを超えたかどうかを出した方が良さそうです。
超えたのは以下の6クラブです。
贅沢税$230M超え(6クラブ) |
メッツ、ドジャース、パドレス、 フィリーズ、ヤンキース、レッドソックス、 |
そして上記の贅沢税の基準値超えのクラブを除いた以下がレベニューシェアリングを受けているかどうかの区分け。
レベニューシェアリング受領 (14クラブ) | レベニューシェアリング受領せず (10クラブ) |
レイズ、オリオールズ、 ガーディアンズ、ロイヤルズ、 タイガース、ツインズ アスレチックス、マリナーズ、 マーリンズ、 ブルワーズ、 パイレーツ、 レッズ、 D バックス、 ロッキーズ | ブルージェイズ、 ホワイトソックス、 アストロズ、 エンゼルス、 レンジャーズ、 ブレーブス、ナショナルズ カブス、 カージナルス ジャイアンツ |
さらに、再契約は補償などはありませんので、再契約を除いた他クラブへの移籍の契約で$50Mを超えたかどうか?の違いで以下の区分けがあります。また、QO受諾の二人も関係ありません。
$50M以上の契約 | $50M未満の契約 |
-トレイ・ターナー(LAD-PHI) -ザンダー・ボガーツ(BOS-SDP) -ジェイコブ・デグロム(NYM-TEX) -クリス・バシット(NYM-TOR) -ダンスビー・スワンソン(ATL-CHC) -ウィルソン・コントラレス(CHC-STL) -カルロス・ロドン(SFG-NYY) | -タイラー・アンダーソン(LAD-LAA) -ネイサン・イオバルディ(BOS-TEX) |
QO を拒否したプレーヤーを失うことに対する補償
- チームが選手にQOを与え、その選手が別のクラブと契約した場合、その選手を失ったクラブはドラフト ピック報酬の対象となります。
そして、どのラウンドでのピックになるのか?は、レベニューシェアリングを受領しているかどうか?または贅沢税の基準額を超えているかどうかで決まってきます。
レベニュー・シェアリングの受領
レベニューシェアリング受領 (14クラブ) |
レイズ、オリオールズ、 ガーディアンズ、ロイヤルズ、 タイガース、ツインズ アスレチックス、マリナーズ、 マーリンズ、 ブルワーズ、パイレーツ、 レッズ、 D バックス、 ロッキーズ |
50Mドル以上の契約
- FAを失ったチームが、その収益と市場規模に基づいてレベニュー・シェアリングの受領者である場合、出て行ったプレーヤーが$50M以上でサインした場合にのみ、 2022年MLBドラフト1巡目、コンペティティブ・バランス(以下CB)ラウンドAで補償を受けることができます。
→今オフはこれに該当するクラブなし。
50Mドル未満の契約
- プレーヤーが $50M万ドル未満で契約した場合、元の所属チームの補償ピックは、Round2に続くCBラウンドB の後に行われます。
→今オフはこれに該当するクラブなし。
レベニュー・シェアリングを受領せず、贅沢税も超えていないクラブ
- 選手を失ったチームがレベニュー シェアリングを受け取らず、前シーズンに贅沢税の給与基準を超えていない場合、その補償的なピックは、競争バランス ラウンド B の後に行われます。この場合、$50Mの契約如何は問われず。
レベニューシェアリング受領せず 贅沢税も超えていない (10クラブ) |
ブルージェイズ、 ホワイトソックス、 アストロズ、 エンゼルス、 レンジャーズ、 ブレーブス、ナショナルズ カブス、 カージナルス ジャイアンツ |
- ダンスビー・スワンソン(ATL-CHC)
- ウィルソン・コントラレス(CHC-STL)
- カルロス・ロドン(SFG-NYY)
贅沢税の基準額230Mドルを超えたクラブ
贅沢税$230M超え(6クラブ) |
メッツ、ドジャース、パドレス、 フィリーズ、ヤンキース、レッドソックス、 |
- プレーヤーを失ったクラブが贅沢税のしきい値を超えた場合、補償ピックは4巡目が完了した後に与えられます。ここでも$50Mの契約如何は問われず。
- 【LAD】トレイ・ターナー
- 【LAD】タイラー・アンダーソン
- 【BOS】ザンダー・ボガーツ
- 【BOS】ネイサン・イオバルディ
- 【NYM】ジェイコブ・デグロム
- 【NYM】クリス・バシット
- ドラフト ピックと同様に、補償ピックの順番は、前シーズンの順位に依り、レギュラーシーズンでワーストの記録を持つクラブと .500 の記録を持つクラブの両方が、$50M以上の契約を結んだFA選手を失った場合、悪い成績のクラブが先にピックできる権利を有する。
QOを拒否した選手と契約した場合のペナルティー
QOを拒否した選手と契約したクラブは、1 つまたは複数のドラフト ピックを失う可能性があります。
ただ、QOを拒否され、翌年のルール 4 ドラフトの開始後にサインしていないプレーヤーは、ドラフト ピック補償に結び付けられなくなり、新しいクラブがドラフト・ピックを失うことなくサインすることができます。マイケル・コンフォートがこれに該当。
新CBAにより、クラブの最高順位の1巡目戦指名権の没収は免除されます。これは、2017-21 CBAとの大きな違いです。
贅沢税基準値を超えたクラブ
ドラフト指名権の没収には、サインしたクラブの財務状況に基づいて、3 つの段階があり、QOを拒否したプレーヤーとサインした場合のペナルティとして機能します。
前シーズンに贅沢税の基準値を超えたクラブは、次の年のドラフトで 2 番目と 5 番目に高いピック権を失うだけでなく、次のインターナショナル・ボーナス・プールの$1M分の枠を失います。
細かいですが、各ラウンドに1人ずつ指名権を持つクラブは、2巡目と5巡目の指名権を失い、1巡目指名権を2つ持ち、その後の各ラウンドで1つずつ指名権を持つクラブは、2番目に高い1巡目の指名権と4巡目の指名権を失うことになります。
また、贅沢税の基準額を超え、複数のQO拒否FA選手と契約した場合、残りの3番目と6番目に高いピック権も失います。
贅沢税$230M超え(6クラブ) |
メッツ、ドジャース、パドレス、 フィリーズ、ヤンキース、レッドソックス、 |
下記の3クラブはいずれもドラフトで 2 番目と 5 番目に高いピック権と次のインターナショナル・ボーナス・プールの$1M分の枠を失います。
- 【PHI】トレイ・ターナー
- 【SDP】ザンダー・ボガーツ
- 【NYY】カルロス・ロドン:
レベニューシェアリングを受領
レベニューシェアリングを受け取ったクラブは、翌年のドラフトで3番目に高い指名権を失います。このような選手と2人契約した場合は、残り4番目に高い指名権も失うことになります。
レベニューシェアリング受領 (14クラブ) |
レイズ、オリオールズ、 ガーディアンズ、ロイヤルズ、 タイガース、ツインズ アスレチックス、マリナーズ、 マーリンズ、 ブルワーズ、パイレーツ、 レッズ、 D バックス、 ロッキーズ |
→今オフはこれに該当するクラブなし。
レベニューシェアリングを受領せず
レベニューシェアリングを受領せず、贅沢税の基準額も超えていないクラブがQO拒否選手とサインした場合、2番目に高い指名権を失うとともに、次の契約期間のインターナショナル・ボーナス・プールから$0.5Mの枠を失います。これらのクラブのうち2人のQO拒否選手とサインした場合は、残り3番目の指名権とさらに50万ドル枠を没収されます。
- 【LAA】タイラー・アンダーソン:2番目に高い指名権とインターナショナル・ボーナス・プールの$0.5Mの枠を失う
- 【TOR】クリス・バシット:2番目に高い指名権とインターナショナル・ボーナス・プールの$0.5Mの枠を失う
- 【TEX】ネイサン・イオバルディ/ジェイコブ・デグロム: 2番目と3番目に高い指名権とともにインターナショナル・ボーナス・プールの計$1M枠を失う
- 【CHC】ダンスビー・スワンソン: 2番目に高い指名権とインターナショナル・ボーナス・プールの$0.5Mの枠を失う
- 【STL】ウィルソン・コントラレス :2番目に高い指名権とインターナショナル・ボーナス・プールの$0.5Mの枠を失う
以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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